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Episode2.温もりだった。
ノートである。
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私はかなり長い時間ここにいたことを謝って猪瀬家を出た。
お風呂はどうか、ケーキを持って帰るかと聞かれたが、もう十分すぎるほど良くしていただいたので断った。
「また遠慮なく来てね!」
そのお母さんと楓の言葉が嬉しかった。
ああ私にもいて良い場所があるんだって思えて。
次の日、再び私はいつもの姿に戻った。
隣の梓は相変わらず気を遣ってたくさん話しかけてくれたが、私ははい、やそうですね、しか言わなかった。
ちょっと感じ悪いかもしれないなと思ったけれど、別に気に入られようとも思わないのでまあ構わない、はず。
私はこの日から学校の休み時間ごとにハイレベルワークを机に広げ、まじめに勉強することに決めた。
さらにイメージは悪くなり、いじめは悪化……かと思いきや、そうではなかった。
なぜか、それは私をいじめたらこの県1番のヤンキーが乗り込んできてボコボコにされるという噂が流れたからであった。
梓が同情してやってくれたあのことが、風に乗って運ばれて行くにつれてずいぶん違う肉をつけられてしまったらしい。
本人はそのことに気付いていないらしいので何も言ってこない。
逆に近付く人も減り、ちょっと困っていたりする……。
だが今集中すべきは学業であり、馴れ合いではない。
そう思いつつもなぜ私はこんなにも心がすさんでしまったのだろうと思う。
今日の数学でどうしてここはこの答えになるのかを隣の席の人同士で話し合うことになった。
ちょうどこの範囲は昨日梓に教えてもらった範囲なので、
「x=5で、y=7だから……」
と自分の答えを話すと、
「そうそう、俺も同じ。
俺が昨日教えたことめちゃくちゃ効率良く吸収してんじゃん。
そういう葵ちゃんみたいな子は教え甲斐ある」
にかっとその白い歯をこちらに向けて笑った。
褒めてもらえたというのは私にとってよほど嬉しいことだった。
その後2人で1枚の画用紙を使って発表。
みんな答えを導き出せていないようで眉が下がっているが私たちは例外。
すらすらと習字選手に選ばれている私が梓の言葉と身振り手振りに助けられながら文字と表を書き上げる。
「せんせーい、終わりましたー」
「そこずりぃぞ、学年1、2位が揃ってるなんて!」
「がんばれよー諸君!」
クラスメートの些細な嫌味にも明るく返しクラスに笑いをもたらす。
そういうところが彼にはあって私にはないことの1つ。
今日の放課後は学校の図書室で参考書を借りて苦手な範囲をノートにまとめようとした。
『学力上位大学を目指す人にオススメ!』そう図書委員の女子らしい可愛い字で書かれたポップのあるコーナーへと足を運ぶ。
カラーのものか、イラストが多いものか、文字で埋め尽くされたものか……私は決めかねてしまいその場で立ち尽くしていた。
ずっと迷っていたがふと近くに気配を感じて振り返る。
そこにはやっと気付いた! と満足気な梓がいた。
「どの参考書にするか迷ってるの?」
「まあ、はい。ところでなぜあなたはここに……」
私が疑問を投げかける前に新たな言葉を発され、
「これ、使いなよ!」
差し出されたのはハートと星が散りばめられた可愛いノート。
その題名の欄には『葵ちゃん専用数学対策ノート』と男子とは思えない綺麗な梓の字が並んでいる。
受け取って中をめくると、カラフルかつイラスト、表、グラフのあるわかりやすい参考書のようだった。
「それ、昨日見てて葵ちゃんが苦手そうだったところを集中的にピックアップして作った葵ちゃん専用参考書。
俺が夜更かしアンド休み時間を潰して書いた努力の結晶だから利用してもらえると嬉しいんだけど」
私、専用?
この一冊のノートは私の宝物になりそうな予感がしてしまった。
お風呂はどうか、ケーキを持って帰るかと聞かれたが、もう十分すぎるほど良くしていただいたので断った。
「また遠慮なく来てね!」
そのお母さんと楓の言葉が嬉しかった。
ああ私にもいて良い場所があるんだって思えて。
次の日、再び私はいつもの姿に戻った。
隣の梓は相変わらず気を遣ってたくさん話しかけてくれたが、私ははい、やそうですね、しか言わなかった。
ちょっと感じ悪いかもしれないなと思ったけれど、別に気に入られようとも思わないのでまあ構わない、はず。
私はこの日から学校の休み時間ごとにハイレベルワークを机に広げ、まじめに勉強することに決めた。
さらにイメージは悪くなり、いじめは悪化……かと思いきや、そうではなかった。
なぜか、それは私をいじめたらこの県1番のヤンキーが乗り込んできてボコボコにされるという噂が流れたからであった。
梓が同情してやってくれたあのことが、風に乗って運ばれて行くにつれてずいぶん違う肉をつけられてしまったらしい。
本人はそのことに気付いていないらしいので何も言ってこない。
逆に近付く人も減り、ちょっと困っていたりする……。
だが今集中すべきは学業であり、馴れ合いではない。
そう思いつつもなぜ私はこんなにも心がすさんでしまったのだろうと思う。
今日の数学でどうしてここはこの答えになるのかを隣の席の人同士で話し合うことになった。
ちょうどこの範囲は昨日梓に教えてもらった範囲なので、
「x=5で、y=7だから……」
と自分の答えを話すと、
「そうそう、俺も同じ。
俺が昨日教えたことめちゃくちゃ効率良く吸収してんじゃん。
そういう葵ちゃんみたいな子は教え甲斐ある」
にかっとその白い歯をこちらに向けて笑った。
褒めてもらえたというのは私にとってよほど嬉しいことだった。
その後2人で1枚の画用紙を使って発表。
みんな答えを導き出せていないようで眉が下がっているが私たちは例外。
すらすらと習字選手に選ばれている私が梓の言葉と身振り手振りに助けられながら文字と表を書き上げる。
「せんせーい、終わりましたー」
「そこずりぃぞ、学年1、2位が揃ってるなんて!」
「がんばれよー諸君!」
クラスメートの些細な嫌味にも明るく返しクラスに笑いをもたらす。
そういうところが彼にはあって私にはないことの1つ。
今日の放課後は学校の図書室で参考書を借りて苦手な範囲をノートにまとめようとした。
『学力上位大学を目指す人にオススメ!』そう図書委員の女子らしい可愛い字で書かれたポップのあるコーナーへと足を運ぶ。
カラーのものか、イラストが多いものか、文字で埋め尽くされたものか……私は決めかねてしまいその場で立ち尽くしていた。
ずっと迷っていたがふと近くに気配を感じて振り返る。
そこにはやっと気付いた! と満足気な梓がいた。
「どの参考書にするか迷ってるの?」
「まあ、はい。ところでなぜあなたはここに……」
私が疑問を投げかける前に新たな言葉を発され、
「これ、使いなよ!」
差し出されたのはハートと星が散りばめられた可愛いノート。
その題名の欄には『葵ちゃん専用数学対策ノート』と男子とは思えない綺麗な梓の字が並んでいる。
受け取って中をめくると、カラフルかつイラスト、表、グラフのあるわかりやすい参考書のようだった。
「それ、昨日見てて葵ちゃんが苦手そうだったところを集中的にピックアップして作った葵ちゃん専用参考書。
俺が夜更かしアンド休み時間を潰して書いた努力の結晶だから利用してもらえると嬉しいんだけど」
私、専用?
この一冊のノートは私の宝物になりそうな予感がしてしまった。
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