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Episode2.温もりだった。
SPである。
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「あっ梓くん……ど、どうして、ここ、に……?」
「あ?」
先ほどとはうって変わって精一杯笑顔で可愛い声を出すアイコ。
だがそんな声には騙されず、不機嫌そうな顔で睨みつける梓。
そしてそれをはたから見てあたふたする私。
この三人の周りには変な雰囲気が漂っていた。
梓はちらっと私を見てパチンとウインクしてから再びアイコの方に向き直った。
「あんたが俺の葵を傷付けようとしたからだよ。
もうすんな、わかったな。あんた、はっきり言って迷惑だから」
はっきり言われてショックを受けた様子のアイコは、潤んだ目で私たちを睨んだ後、
「もう梓くんなんて好きじゃないんだから!」
と叫びながら踵を返してどこかへ走って行った。
その言葉を聞いた梓は、
「別に俺が好きとも言ってないし好かれたくもないし」
そうつぶやいたのは顔を見ただけでもわかった。
「俺のせいでごめん、葵ちゃんにとって俺が好きって言うのは迷惑だったと思う。
なんとなくうちの前で物音と葵ちゃんの声が聞こえた気がして気が付いたんだ」
「いいえ、迷惑ではありませんよ。
そして……助けてくれて、ありがとうございました」
「ほ、ほんとに迷惑じゃない? 好きって言い続けて良い?
またこういうこともあるかもしれないんだよ?」
「良いです。その代わり、また梓さんが助けてくださいね」
「喜んで葵ちゃんのSPしますっありがとっ」
嬉しそうに手をばたばたさせて跳び上がる梓はかっこ良い見た目のわりには子供っぽく、どこか可愛げがあった。
「あと、さっきの『俺の葵……』って言うの素敵でしたよ」
「へ? ごめん、聞き逃した、もっかい、もっかい!」
「いえなんでもありません」
「今なんか隠したでしょ。まあ話したくなったら言って」
さりげなく私の口から素直な褒め言葉が飛び出したことに自ら驚きつつ、何も言っていない風を装ってしまった。
素敵なんて言ってしまったら、また彼は喜んでしまうだろうから。
以前よりも好き好きアピールが嫌だとは感じなくなったものの、絶対に梓のことを好きになることはないと思うので彼を今だけ喜ばせてしまうのは悪い。
あまり……喜ばせないようにしなければいけないな、と決めた。
じゃあ帰ろうと吹っ飛ばされたバッグを持ち直してうちの方向に足を向けると、
「うちにまた寄ってかない?」
梓に再び誘われてしまった。
また行って大丈夫だろうかと悩んだら、
「楓がオーディションのことで色々試したいことがあるから来て欲しいんだって。
ちょっと来て帰るって言うのでも良いし、うちでご飯食べても良いから」
慌てながらそう言うものだから、楓さんに迷惑をかけるわけにはいかない、そう思ってではお邪魔しますという選択肢を選んだ。
もっとこの猪瀬家に出入りする生活をしてしまったら、家族や人の温もりに甘えてしまって一人で過ごす自宅の生活には戻れないのではないかと不安だ。
だが、つい行きたいと思ってしまうのは私がすでに温もり依存症になっているからなのであろうか。
「あ?」
先ほどとはうって変わって精一杯笑顔で可愛い声を出すアイコ。
だがそんな声には騙されず、不機嫌そうな顔で睨みつける梓。
そしてそれをはたから見てあたふたする私。
この三人の周りには変な雰囲気が漂っていた。
梓はちらっと私を見てパチンとウインクしてから再びアイコの方に向き直った。
「あんたが俺の葵を傷付けようとしたからだよ。
もうすんな、わかったな。あんた、はっきり言って迷惑だから」
はっきり言われてショックを受けた様子のアイコは、潤んだ目で私たちを睨んだ後、
「もう梓くんなんて好きじゃないんだから!」
と叫びながら踵を返してどこかへ走って行った。
その言葉を聞いた梓は、
「別に俺が好きとも言ってないし好かれたくもないし」
そうつぶやいたのは顔を見ただけでもわかった。
「俺のせいでごめん、葵ちゃんにとって俺が好きって言うのは迷惑だったと思う。
なんとなくうちの前で物音と葵ちゃんの声が聞こえた気がして気が付いたんだ」
「いいえ、迷惑ではありませんよ。
そして……助けてくれて、ありがとうございました」
「ほ、ほんとに迷惑じゃない? 好きって言い続けて良い?
またこういうこともあるかもしれないんだよ?」
「良いです。その代わり、また梓さんが助けてくださいね」
「喜んで葵ちゃんのSPしますっありがとっ」
嬉しそうに手をばたばたさせて跳び上がる梓はかっこ良い見た目のわりには子供っぽく、どこか可愛げがあった。
「あと、さっきの『俺の葵……』って言うの素敵でしたよ」
「へ? ごめん、聞き逃した、もっかい、もっかい!」
「いえなんでもありません」
「今なんか隠したでしょ。まあ話したくなったら言って」
さりげなく私の口から素直な褒め言葉が飛び出したことに自ら驚きつつ、何も言っていない風を装ってしまった。
素敵なんて言ってしまったら、また彼は喜んでしまうだろうから。
以前よりも好き好きアピールが嫌だとは感じなくなったものの、絶対に梓のことを好きになることはないと思うので彼を今だけ喜ばせてしまうのは悪い。
あまり……喜ばせないようにしなければいけないな、と決めた。
じゃあ帰ろうと吹っ飛ばされたバッグを持ち直してうちの方向に足を向けると、
「うちにまた寄ってかない?」
梓に再び誘われてしまった。
また行って大丈夫だろうかと悩んだら、
「楓がオーディションのことで色々試したいことがあるから来て欲しいんだって。
ちょっと来て帰るって言うのでも良いし、うちでご飯食べても良いから」
慌てながらそう言うものだから、楓さんに迷惑をかけるわけにはいかない、そう思ってではお邪魔しますという選択肢を選んだ。
もっとこの猪瀬家に出入りする生活をしてしまったら、家族や人の温もりに甘えてしまって一人で過ごす自宅の生活には戻れないのではないかと不安だ。
だが、つい行きたいと思ってしまうのは私がすでに温もり依存症になっているからなのであろうか。
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