地味な雑草は眼鏡を外すと美しき薔薇だった。

梅屋さくら

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Episode3.距離だった。

結果発表である。

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男性部門も終了し、オーディションは審査に入った。
梓と一緒にいたくないことと、姉弟の中に入るのは居心地が悪いということで私はお手洗いから帰った後2人と違う場所で立って結果発表を待った。

意外にも審査終了の合図は早く出された。
出場者は部門ごとに番号順で並ぶ。
手を胸の前で合わせて祈る人もいたが、私は普通に見ていた。
別に楓に頼まれただけで決勝進出したいというわけではなかったから。

司会を務めるスーツ姿の男性がスポットライトを浴びて登場。
では、審査結果を発表いたします。
そう言った男性の読み方は不慣れ感があったので、きっとこの会社の従業員なんだろうという感じが伝わって来た。

ドゥルルルルルルル……ジャンッ!

結果発表らしさ漂うお馴染みのドラムとシンバルの音で女性部門、男性部門と名前が呼ばれる。

「女性部門は……エントリーナンバー30番、RIHOさん!
男性部門は……エントリーナンバー26番、浅海さん!
おめでとうございます、あなたが関東ブロック代表、決勝進出者です!」

悔しそうに顔を歪ませる人も見られたが、会場が拍手と歓声で包まれる。
びっくりして声を出すよりも梓と顔を見合わせ、次に嬉しそうに飛び上がって喜ぶ楓を見た。
スポットライトが私たちに向けられ、注目される。

「わ、私たち……!?」

決勝進出者はこの後すぐに本部に来るようにと言われ、解散となった。

本部イコールステージ裏に行こうとすると、梓が私を待っていた。
信じられないと言った顔をしていたが、きっと私も同じようなものだっただろう。
本部にはこのオーディションの主催者のおじさまたちがいた。
手に持たれたカラフルな何かを見た瞬間、それがなにか認識する時間もなくそれがパンと音を鳴らして紙が飛び出してきた。

「おめでとう! 君たちのパホーマンス、素晴らしかったよ」
「あ、ありがとうございます……」

クラッカーを持ったおじさまは優しそうな笑みを浮かべた。
パフォーマンスと言えず、パホーマンスと言っているのは気にしないでおく。
こんなに良くしてもらえるとは思わず、さすがに嬉しかった。

「これ本選の日程とか要項です、お受け取りください」

横から出て来た女性に封筒を渡される。
それは分厚く、重みがあった。

「君たちは観客の心に残るようなパホーマンスを工夫していたね。
さらに早着替えや歌、星に見立てたものを落とす演出。
あれはなかなか思いつくものじゃないよ。
君たちのルックス、演出、パホーマンス力……飛び抜けていたよ。
ぜひ本選でも面白い演出と活躍、期待していますよ」
「ありがとうございます……!」

褒めちぎられた私たちはにやにやしたまま頭を下げる。
そしてずっとぺこぺこしたまま本部から出た。

そこには楓がいた。

「2人ともおめでとう! まさかそんないけるとは思ってなかったわ……」
「俺ら楓の演出の点が大きくて代表になったみたい。感謝する」
「んじゃあ張り切って本選に挑もうね!
私ももう本選用の演出とか衣装とか考えなきゃ……!」

慌ただしく自分のスマホを取り出した楓について行き、私たちは帰った。

「じゃあお疲れ! またケアしておいてね、今日はありがと」
「いえ、こちらこそ。またよろしくお願いいたします……」

じゃあね~、そう言って手を振る楓に、私は礼をした。
思えば今日は1日中心の底からオーディションを楽しんでいたかもしれない。
人に見られながらというのは緊張するが、私がしたことでみんなが喜んでくれる……それがなにより嬉しかった。
あのとき無意識のうちにパフォーマンスしていた私がいた。
それ程嬉しかったんだ。

つい嬉しくて梓とハイタッチしてしまって、悔しい。
……が、今日は仕方ないと割り切った。
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