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Episode5.家族だった。
恋の定義である。
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私たちは話していくにつれてどんどん距離が近くなっていった。
初めは隣に並んだベッドに、そして2人ともベッドとベッドの間に近付き、最終的には私も柚葉のベッドに入って話した。
同じ掛け布団をかけて、なぜか他に人がいるわけでもないのに小さな声で話していた。
腰まであるくらい長い髪をおろした柚葉は、頬をうっすら赤らめながら一生懸命話している。
お風呂上がりだから。
そう言っていたけれど本当は……?
「私が研修中のとき、担当が永澤先生で、そのときから出来が特別悪かった私にしっかり付いてくれて丁寧に説明して教えてくれたの。
そのときはまだ良い人だなくらいにしか思ってなかったけど、たまたま私が先生の部署に配属になって接することがかなり増えて……」
「それで好きになっていったのですね……?」
私がそういうと、ぽーっと目がハートになっている彼女がこちらをちらっと見てこくんとうなずいた。
そしてばたばたと恥ずかしそうに私から顔を背けて布団に潜った。
私は戸惑って固まったまま柚葉をじっと見てしまっていたのだが、2分程度経ってようやく彼女はこちらに向き直った。
その驚く目を見て、私が寝てしまったのか心配していたのだろうと思う。
「ごめんね、こういう恋愛みたいなこと関わったことなくて……。
今まで下駄箱に紙が入っててもどうせ、『裏庭に来て』とだけ書かれた呼び出し文とか『何年何組の誰々です、よろしくお願いします!』とかいう謎の自己紹介文とかそんなものばっかりで。
私この年でやっと初恋をしたんです……」
絶対その下駄箱の中の紙は告白の呼び出しと、柚葉が好きな男子のアピールシートだということは私ですらわかった。
だが初めて恋に関わったと喜んでいるので言わないでおこう。
私は知らぬ間にこういう気遣いのようなものが出来るようになっていたことに今さらふと気付いた。
「ところで葵ちゃんは恋とかどうなの……? うちの茜とかあの梓くんとか!」
また唯紅さんと同じことを……そう思ったが、柚葉はおちょくっているわけではないのでぜんぜん違う。
今度はぶっきらぼうに適当に返すわけにはいかない気がしてしまって、首を振った。
その行動の意味は当たり前だがわかってもらえず、結局は話した。
実はまだ柚葉と話すのはかなり緊張するのだ。
「『恋心』というものが具体的にどんなものなのかがわからないのです……。
辞書で引いてみても、テストみたいに答えは出ませんし……」
「やっぱり頭良さそうなこと言うねぇ……。
まあ確かに私もそうだったよ、初恋するまでは」
「恋心とは一体どんな感情のことなのですか?」
「たぶん誰でもはっきりした『定義』みたいなものはわからないと思う。
でも私の場合はね? あっこれが恋なんだ! って感覚的にわかったっていうか……」
「感、覚……?」
「そう、感覚。いつか葵ちゃんもその人を見たり話したりしているときに、なにかを感じるときが来ると思うわ。
一応姉として、うちの茜もよろしくね?」
私もいつかびびっとなにかを感じるのだろうか。
その相手が誰になるのか、今の私にはまったく見当もつかなかった。
最後に弟である茜のことを言うこの姉弟は私たちとは大違いだ、今はそんなことを考えてしまった。
私たちは夜中の12時くらいまで話し込んでいたが、一生懸命話している途中で柚葉がかくんと眠りにつき、その後すぐに私も夢の世界に入っていった。
カーテンを開ける音と、アラームのピピピピーという音で起こされる。
未だほわほわした綿の中に埋もれているような気分だったが、アラームを止めようと時計を見てそんな気分はどこかへ吹っ飛んだ。
この家を出る予定の時間まであと3分だった。
これから着替えて髪を整えたり顔を洗ったりして食べて歯磨きして……。
これからしなければならないことを考えると確実に間に合わない。
ばたばたと階段を降りたのは私だけではなかった。
3人で階段を降り、とりあえず着替えた。
顔を洗ったりするのは学校で良いとして、困るのは朝食である。
たまたま合った食パンを私と茜はくわえて家を出た。
私たちより45分くらい家を出るのが遅い柚葉が、
「いってらっしゃーい!」
と手を振って見送ってくれた。
昨夜あんなに話してくれたことやいろいろと良くしていただいたことへのお礼をすることが出来ず、後悔していると、
「また家に来てくださいね! お姉ちゃんも待っていると思います」
と言われた。
私はおろしたままだった髪を三つ編みにしながら言った。
「昨日はたくさんたくさん……ありがとうございました……!」
初めは隣に並んだベッドに、そして2人ともベッドとベッドの間に近付き、最終的には私も柚葉のベッドに入って話した。
同じ掛け布団をかけて、なぜか他に人がいるわけでもないのに小さな声で話していた。
腰まであるくらい長い髪をおろした柚葉は、頬をうっすら赤らめながら一生懸命話している。
お風呂上がりだから。
そう言っていたけれど本当は……?
「私が研修中のとき、担当が永澤先生で、そのときから出来が特別悪かった私にしっかり付いてくれて丁寧に説明して教えてくれたの。
そのときはまだ良い人だなくらいにしか思ってなかったけど、たまたま私が先生の部署に配属になって接することがかなり増えて……」
「それで好きになっていったのですね……?」
私がそういうと、ぽーっと目がハートになっている彼女がこちらをちらっと見てこくんとうなずいた。
そしてばたばたと恥ずかしそうに私から顔を背けて布団に潜った。
私は戸惑って固まったまま柚葉をじっと見てしまっていたのだが、2分程度経ってようやく彼女はこちらに向き直った。
その驚く目を見て、私が寝てしまったのか心配していたのだろうと思う。
「ごめんね、こういう恋愛みたいなこと関わったことなくて……。
今まで下駄箱に紙が入っててもどうせ、『裏庭に来て』とだけ書かれた呼び出し文とか『何年何組の誰々です、よろしくお願いします!』とかいう謎の自己紹介文とかそんなものばっかりで。
私この年でやっと初恋をしたんです……」
絶対その下駄箱の中の紙は告白の呼び出しと、柚葉が好きな男子のアピールシートだということは私ですらわかった。
だが初めて恋に関わったと喜んでいるので言わないでおこう。
私は知らぬ間にこういう気遣いのようなものが出来るようになっていたことに今さらふと気付いた。
「ところで葵ちゃんは恋とかどうなの……? うちの茜とかあの梓くんとか!」
また唯紅さんと同じことを……そう思ったが、柚葉はおちょくっているわけではないのでぜんぜん違う。
今度はぶっきらぼうに適当に返すわけにはいかない気がしてしまって、首を振った。
その行動の意味は当たり前だがわかってもらえず、結局は話した。
実はまだ柚葉と話すのはかなり緊張するのだ。
「『恋心』というものが具体的にどんなものなのかがわからないのです……。
辞書で引いてみても、テストみたいに答えは出ませんし……」
「やっぱり頭良さそうなこと言うねぇ……。
まあ確かに私もそうだったよ、初恋するまでは」
「恋心とは一体どんな感情のことなのですか?」
「たぶん誰でもはっきりした『定義』みたいなものはわからないと思う。
でも私の場合はね? あっこれが恋なんだ! って感覚的にわかったっていうか……」
「感、覚……?」
「そう、感覚。いつか葵ちゃんもその人を見たり話したりしているときに、なにかを感じるときが来ると思うわ。
一応姉として、うちの茜もよろしくね?」
私もいつかびびっとなにかを感じるのだろうか。
その相手が誰になるのか、今の私にはまったく見当もつかなかった。
最後に弟である茜のことを言うこの姉弟は私たちとは大違いだ、今はそんなことを考えてしまった。
私たちは夜中の12時くらいまで話し込んでいたが、一生懸命話している途中で柚葉がかくんと眠りにつき、その後すぐに私も夢の世界に入っていった。
カーテンを開ける音と、アラームのピピピピーという音で起こされる。
未だほわほわした綿の中に埋もれているような気分だったが、アラームを止めようと時計を見てそんな気分はどこかへ吹っ飛んだ。
この家を出る予定の時間まであと3分だった。
これから着替えて髪を整えたり顔を洗ったりして食べて歯磨きして……。
これからしなければならないことを考えると確実に間に合わない。
ばたばたと階段を降りたのは私だけではなかった。
3人で階段を降り、とりあえず着替えた。
顔を洗ったりするのは学校で良いとして、困るのは朝食である。
たまたま合った食パンを私と茜はくわえて家を出た。
私たちより45分くらい家を出るのが遅い柚葉が、
「いってらっしゃーい!」
と手を振って見送ってくれた。
昨夜あんなに話してくれたことやいろいろと良くしていただいたことへのお礼をすることが出来ず、後悔していると、
「また家に来てくださいね! お姉ちゃんも待っていると思います」
と言われた。
私はおろしたままだった髪を三つ編みにしながら言った。
「昨日はたくさんたくさん……ありがとうございました……!」
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