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一人の夜
しおりを挟むそのままギルフォード殿下に抱き抱えられ、先ほどの部屋のベッドに運ばれた。わたしをベッドに下ろした後、ギルフォード殿下はわたしの手を取りながら
「申し訳ありません。すぐにでも我が屋敷に連れて行きたいのですが、急なことゆえ、神子様のお部屋がご用意出来ておりません。お寂しいかと存じますが、今晩はこちらへとお泊りください。明日またお迎えにあがります」
そう言った。そうして私の額にキスをして名残惜しそうに手で撫でて去って行った。
わたしはその様子を呆然と見ていた。すると待っていましたとばかりに控えていた使用人たちが現れてまたもや無理やり着替えさえられた。
着替えが終わると使用人たちは何かありましたらそちらのベルを鳴らして下さい言い部屋を出て行った。
ようやく一人になれた。
もう眠らなければいけない時間なのにさまざまな出来事があったせいで脳が興奮して疲れているはずなのにちっとも眠れなかった。
横になっても枕や布団からいつもの匂いがしないことも要因の一つだろう。
いきなり、こんなとこに来ちゃったけど、あの後どうなったんだろう……どうしてわたしはここにいるんだろう?向こうでわたし、どうなっちゃったのかな?
お父さん、お母さん、お兄ちゃん、会いたいよ……
ついさっきまでただの高校生だったのに。まだ、結婚できる年齢でもないのに……
視界がだんだん滲んで涙がほろほろと溢れた。
うとうとし始めてようやく眠れたと思ったら無情にもノックの音が響いた。
眠い目を擦り働かない頭のまま、またもやされるがままに仕度をさせられて朝食を食べるため食堂へと案内された。
料理はいわゆるコース料理だった。テーブルマナーは詳しく知らないが、記念日に家族で高級レストランに行った時のことを思い出しながらどうにか食べ進めた。
けれど結局、食欲がなくほとんど食べられなかった。
そしてまた部屋へと戻るとまた着替えさせられた。昨夜、王様に会った時のような豪華なドレスだった。
着替え終わったタイミングを見計らったかのようにノック音が響き、使用人が迎えに来た。そのドレスを着て向かった先は案の定、昨夜の王様のいた部屋だった。
同じ顔ぶれが並ぶ中、今日はギルフォード殿下もすでにいた。
「神子様、昨夜はよく眠れましたかな?」
「……」
「神子様には本来ならば城で過ごしていただく慣習だったのですが神子様はギルフォードの番であったため、ギルフォードの屋敷にて過ごしてもらおうと思っております。手続きは全てこちらで済ませておりますのでご安心ください」
「……」
「また、お披露目や結婚式についても追ってご連絡いたします。それ以外に神子様を煩わせるようなことはございませんゆえ、どうぞギルフォードの屋敷でご自由にお過ごしください」
「……」
「では、ギルフォード、後のことはまかせたぞ。今日はもう下がって良い」
「はい。かしこまりました」
わたしが口を挟む暇もなく話は進み、そんなやりとりをした後、わたしはギルフォード殿下と退出することになった。その際、また彼に抱き抱えられた。
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