つがいなんて冗談じゃない

ちか

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お屋敷へ

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 お城の部屋に戻ることなく、このままギルフォード殿下と共に彼の屋敷にことになった。言われるがまま馬車に乗った。

 馬車はギルフォード殿下と一緒だった。てっきり向かい合わせに座るのかと思ったらわたしの隣に彼は座った。

「あの、どうして隣なんですか?」

「ん?今まで会えなかった分の時間を少しでも取り戻したので、少しでもおそばにいたいのです」

 そういって彼はわたしの手を握り、髪に触りキスをした。

 触れられると何だが肌がザワザワして落ち着かなかった。

 嫌だったけど、でも気持ち悪い!触らないで!なんて言えなくて

「あっあの、あまり触れないでもらえないでしょうか、匂いも気になるしその恥ずかしいので」

「フフッ我がつがいの神子様はなんと奥ゆかしいのか。どうぞお気になさらず。とてもいい香りですよ。それに照れている姿もらなんと愛らしいことか」

 遠回し過ぎたのだろうか、やっぱりどこか話が噛み合わない……

 怖くてわたしはただされるがまま黙って窓の外を見ていた。

 その間も話しかけられ、声は聞こえるし単語の意味も一つ一つは理解しているのに、内容は何一つ入って来なかった。

 

 そうしているうちに馬車が止まった。馬車から降りる時、ギルフォード殿下に手を取られ支えられながら降りた。

 降りたら手を離すと思っていたら、そのまま屋敷の中へ案内された。振り解く事も出来ず、手を繋いだ状態のまま大人しくついていくとこちらが神子様の部屋です。隣が私の部屋です。と紹介され部屋の中に通された。

 部屋にはお城で見たような豪奢な家具が置かれていた。ベッドのそばの扉は何かと思ったら、ギルフォード殿下の部屋と繋がっている扉だと言う。何で部屋を繋ぐ必要があるのかわからなかった。
 そしてこの部屋で一番目を引くのが、大量のプレゼントであった。

 プレゼントの中身はたくさんのドレスと宝石のついたアクセサリーだという。

 正直私はドン引いた。確かに見ている分には綺麗だし素敵だと思う。けれど自分がこれを身につけることが想像できないし、それより何より多すぎる。

 しかも、今回用意したドレスは既製品だからまた改めてサイズを測ってドレスを作るという。

 部屋も急いで準備したので気に入らなければ家具も全て買い替えて構わないし、壁紙も好きに変えて構わないと言われた。

 人のお金で人のお屋敷なのにそんな恐ろしくお金がかかること出来るわけない。しかも、洋服を買い換えるくらいの気やすさで。

 もう十分ですと言っても遠慮なさらずにと言われるだけで本気にして貰えなかった。

 の案内の後は屋敷の中の案内へと移った。さすが王様の弟のお屋敷だ。かなり広かった。必要なところだけの案内でもかなり時間がかかった。

 ひとまず案内が終わり、食堂にて昼食となり、そのあとわたしに直接関わる使用人たちを紹介された。

 ロマンスグレーの痩せたアライグマの獣人の男性が執事のイーサン、私の身の回りのことをしてくれる二名の侍女がダナとキーラというらしい。赤みがかった茶髪でウサギの獣人がダナでブロンドヘアでキツネの獣人なのがキーラだ。

 名字も教えてもらったし、他の多くの使用人も紹介されたがあまりにも多かったため、常に接するだろうこの人達の名前を覚えるだけで精一杯だった。

 午後からは仕立て屋が呼ばれており、体の採寸が行われ、どのようなドレスがいいのか話し合いになった。わたしはあまり派手ではない、動きやすいものをと言ったがわたしの意見は全く採用されなかった。イーサンをはじめ、ダナとキーラにも神子様でありメレヴィス公爵殿下の番様ともあろう方がそのようなお召し物ではいけませんと言われた。

 困ったようにギルフォード殿下を見れば遠慮しないで下さいと言うだけだった。

 結局ほとんどギルフォード殿下に頼まれたダナとキーラが仕立て屋と話し合い、わたしが着る服が決まった。それが終わると今度は先ほどお昼を食べたばかりだと思っていたのにもう夕食だと言う。

 確かに窓の外を見れば日が傾いていた。
そして今度は夕食のために着替えなければならないと言われ、部屋戻り支度に取り掛かった。
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