21 / 39
決めるのは
しおりを挟むこんな状況でお水どころではない。わたしは急いで自分の部屋に戻って頭から布団を被った。
イッタイナニサマノツモリ
ワガママ
ゴウマン
アノカタニツクシナサイ
ナニモシナイクセニ
あの時聞いた言葉がどんどん頭を占めていく。
あぁそうか。そうだ。わたしが悪いんだ。わたしが我儘なんだ。
住むところも服も食事も困らないのに。生かさせてもらっているのに。なんて贅沢なんだろう。悲劇のヒロインぶって。バカみたい。
この環境をありがたいと思わないと。生きてることに感謝しなきゃいけないのに。
番として神子としてだけ、ただそこあればいいだけ。
それ以外のわたしなんて必要とされていない。
みんなの言うことを聞いてみんなが望むように動けばいいだけ。
その日の夕食
「今日、ヴァーノン公爵令嬢が訪問されたそうですね。何か嫌な事は言われませんでしたか?」
「いいえ、彼女にはとても大切なことを教えていただいただけです」
「そうですか。彼女と仲良くなったんですね。良かった。彼女はかつて私の婚約者候補筆頭だったんです。彼女はとても優秀でいい人だったんですけれど、私が番を諦めきれなくて、結局婚約を結ばなかったんです。それでも彼女は恨み言一つ言わないで受け入れてくれたんです。彼女と仲良くなったくれてとても嬉しいです。何か困ったことがあったら彼女に頼るといいでしょう。きっと女性同士にしかわからない事もあるでしょうから。彼女はミオ様の力になってくださるでしょう」
「えぇ、わかりました」
「それと明日、観劇を観にいきましょう。今話題の人気の舞台のチケットが手に入ったので」
「えぇ、わかりました」
翌日、約束通り観劇を見に行った。馬車の中では相変わらず腰に手を当てられ密着させられたがなんとか我慢した。
話題の舞台というだけあって多くの人が来ていた。座席は特別仕様のボックス席のようだった。観劇中も肩に手を回されたりして内容はちっとも頭に入って来なかった。ただ観ていただけだった。けれど彼に「おもしろかったですね」と訊かれ「はい」と答えた。
観劇の帰り道、馬車の窓からふととあるカップルが目に入った。
あーあの人たちも番なのかな?すごく幸せそう。そう思って見ていたら急に男性の方が急に挙動不審になった。かと思えば今まで優しく肩を抱いていた女性を放置していきなり駆け出した。そして別の女性の前で跪き、キスをしていた。
きっとあれが彼の番でそして求婚したのだ。取り残された女性はその様を呆然と見ていた。彼女のお腹は大きい。とても悲しいものを見てしまった。
あの後、例の男性は求婚した女性とどこかに行ってしまった。取り残された彼女は近くにいた知り合いらしい女性に支えられながらその場を後にしていた。
なんなの、あんなのが番なの?
真実の愛なの?
あんなに傷付けて、お腹に子供までいるのに今までの愛情全部なくしてしまえるものなの?
怖い
10
あなたにおすすめの小説
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています
柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。
領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。
しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。
幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。
「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」
「お、畏れ多いので結構です!」
「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」
「もっと重い提案がきた?!」
果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。
さくっとお読みいただけますと嬉しいです。
気がつけば異世界
波間柏
恋愛
芹沢 ゆら(27)は、いつものように事務仕事を終え帰宅してみれば、母に小さい段ボールの箱を渡される。
それは、つい最近亡くなった骨董屋を営んでいた叔父からの品だった。
その段ボールから最後に取り出した小さなオルゴールの箱の中には指輪が1つ。やっと合う小指にはめてみたら、部屋にいたはずが円柱のてっぺんにいた。
これは現実なのだろうか?
私は、まだ事の重大さに気づいていなかった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる