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晩餐にて ギルフォードside
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神子様との初めての晩餐だ。
とても楽しみだ。普通晩餐くらいではエスコートなんてしないが、待ちきれずに神子様を部屋の前まで迎えに行ってしまった。
滞りなく晩餐は進む。だが無言だった。昼餐では屋敷のさまざまなことについて説明しなくてはいけなかったから事務的な会話ばかりになってしまった。だから今回は神子様に話しかけ色々お聞きしたいが、何から話そうかそんなことを考えていたらいつのまにか無言になっていた。しかし、気がつくと神子様が何か言いたそうにこちらを見ている気がする。そうしてしばらくすると可憐な声が聞こえて来た。
「あの、すみません。わたしはあなたのことをなんとお呼びしたらいいでしょうか?」
えっ?まさかだった。俺は神子様であり、最愛の番に自身の名も伝えてなかったのか?!
「えっ?あっあぁ、そうですね。私としたことが。まだきちんと名乗っていなかったですね。番の神子様に出会えたことで思った以上に浮かれていたようです。そんな大切なことがすっかり抜け落ちるなんて……では改めましてこの国の王の弟であり、狼の獣人でメレヴィス公爵ギルフォード・イアン・フレイザー・アーヴィンと言います」
食事の途中だったが、失礼と断りを入れて徐に立ち上がり、ボウ・アンド・スクレープをしながら名乗った。
そうして神子様からギルフォード殿下と呼ばれた喜びといったら。何と幸せなんだ。
そして神子様のお名前もお教えいただけた。タカナシミオというのだと言う。あまり聞いたことのない響きであり、名字が先とは珍しい。だが何と可愛らしいお名前か。
「ミオ様、改めてよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。あのそれで本当にわたしが番なんですか?出会ったらわかるものなんですか?」
ん?どうしてミオ様はこんな当たり前のことをお聞きになるんだ?
「はい。ミオ様はわたしの番で間違いありません。出会うというか、まず近くに番がいると匂いでわかります」
「匂い?どんなですか?」
「うーーん、説明が難しいのですが簡単に言うといい匂いです」
ミオ様も感じておられるはずだが?
「いい匂い……?」
「はい。昨夜も扉を開ける前からいえ、謁見の間に続く廊下を歩いている時からとてもいい匂いがしてとても不思議でした。ですがその疑問はすぐに解決いたしました。なぜなら扉の開けるとミオ様がおられ、一目見て私の番だとわかりましたから」
いい匂いも一目見てピンと来たという俺の言葉になぜか難しい顔をしていらっしゃる。一体どうして?あっもしかして?
「もうずっと見つからなかった私の番が急にいらっしゃって、つい気が急いてあの様な場で儀式を行ってしまい申し訳ありませんでした」
あぁ、きっとこのことをミオ様は怒ってらっしゃったのだ。だからあんな難しい顔をされていたのだ。
どうしてもっとちゃんとやれなかったのか。一生に一度のことなのに。ミオ様も番との出会いや婚姻の儀に夢みていらっしゃったろうに。
しかし、なぜミオ様はこんな当たり前のことをわざわざお聞きになったのだろうか?謁見の間でも常識を知らないかのようだった。我々のことを試しているのだろうか?
「でも、どうしてわざわざ確認をされたのですか?ミオ様にも私の番の匂いがお分かりになりますよね?」
たしか、宰相や神官が言うにはこの国遣わされた際のお疲れが出てきっと記憶が混乱してしまったのだろうとのことだったな。まだお疲れが取れていないのだろうか?
「いえ、わたしにはギルフォード殿下が番かどうかわかりません。匂いも……」
「っ!!……番がわからない?ミオ様、それは一体どう言う……」
「えっ?そのままの意味です……けど……そもそもわたしたちの世界、国に番なんてものはないですし」
「そんな……番がいない?……ミオ様が番がわからないなんて……」
一体どういうことだ?番が見つからないということはあるだろうが、いないと断言出来ることではないはず。万が一出会う前に亡くなってしまったということはあるがしれないが……
それに番がわからないなんて。一体どう言うことだ?出会えば必ずわかるはずだ。ミオ様から何の獣人かなんてわざわざお教えいただいていないが耳を見るに猿の獣人だろう。今まで他の猿の獣人で番がわからなかったなんて聞いたこともないが……
帰りたいとおっしゃっていた国の名前も何だったか。聞いたこともないような名前だったな。その国はこの国からはよほど遠く辺鄙なところにあるのだろう。もしかしたら街の名前の可能性も……
きっと小さな国でしかし、周辺に他の国も近くにはない。だから、番という存在に出会えない確率が高く、そんな辛さを抱えるよりも最初から教えないのかもしれないな。
これではそもそも初夜についても知らないかも知れないな。
何ということだ。
俺は気を取り直して咳払いをした。
「コホン、神子様という存在は何か我々と違いお体も特別なのかも知れませんね。ですが私は番だとわかっているので安心して下さい」
とりあえずこう言うしかなかった。
とても楽しみだ。普通晩餐くらいではエスコートなんてしないが、待ちきれずに神子様を部屋の前まで迎えに行ってしまった。
滞りなく晩餐は進む。だが無言だった。昼餐では屋敷のさまざまなことについて説明しなくてはいけなかったから事務的な会話ばかりになってしまった。だから今回は神子様に話しかけ色々お聞きしたいが、何から話そうかそんなことを考えていたらいつのまにか無言になっていた。しかし、気がつくと神子様が何か言いたそうにこちらを見ている気がする。そうしてしばらくすると可憐な声が聞こえて来た。
「あの、すみません。わたしはあなたのことをなんとお呼びしたらいいでしょうか?」
えっ?まさかだった。俺は神子様であり、最愛の番に自身の名も伝えてなかったのか?!
「えっ?あっあぁ、そうですね。私としたことが。まだきちんと名乗っていなかったですね。番の神子様に出会えたことで思った以上に浮かれていたようです。そんな大切なことがすっかり抜け落ちるなんて……では改めましてこの国の王の弟であり、狼の獣人でメレヴィス公爵ギルフォード・イアン・フレイザー・アーヴィンと言います」
食事の途中だったが、失礼と断りを入れて徐に立ち上がり、ボウ・アンド・スクレープをしながら名乗った。
そうして神子様からギルフォード殿下と呼ばれた喜びといったら。何と幸せなんだ。
そして神子様のお名前もお教えいただけた。タカナシミオというのだと言う。あまり聞いたことのない響きであり、名字が先とは珍しい。だが何と可愛らしいお名前か。
「ミオ様、改めてよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。あのそれで本当にわたしが番なんですか?出会ったらわかるものなんですか?」
ん?どうしてミオ様はこんな当たり前のことをお聞きになるんだ?
「はい。ミオ様はわたしの番で間違いありません。出会うというか、まず近くに番がいると匂いでわかります」
「匂い?どんなですか?」
「うーーん、説明が難しいのですが簡単に言うといい匂いです」
ミオ様も感じておられるはずだが?
「いい匂い……?」
「はい。昨夜も扉を開ける前からいえ、謁見の間に続く廊下を歩いている時からとてもいい匂いがしてとても不思議でした。ですがその疑問はすぐに解決いたしました。なぜなら扉の開けるとミオ様がおられ、一目見て私の番だとわかりましたから」
いい匂いも一目見てピンと来たという俺の言葉になぜか難しい顔をしていらっしゃる。一体どうして?あっもしかして?
「もうずっと見つからなかった私の番が急にいらっしゃって、つい気が急いてあの様な場で儀式を行ってしまい申し訳ありませんでした」
あぁ、きっとこのことをミオ様は怒ってらっしゃったのだ。だからあんな難しい顔をされていたのだ。
どうしてもっとちゃんとやれなかったのか。一生に一度のことなのに。ミオ様も番との出会いや婚姻の儀に夢みていらっしゃったろうに。
しかし、なぜミオ様はこんな当たり前のことをわざわざお聞きになったのだろうか?謁見の間でも常識を知らないかのようだった。我々のことを試しているのだろうか?
「でも、どうしてわざわざ確認をされたのですか?ミオ様にも私の番の匂いがお分かりになりますよね?」
たしか、宰相や神官が言うにはこの国遣わされた際のお疲れが出てきっと記憶が混乱してしまったのだろうとのことだったな。まだお疲れが取れていないのだろうか?
「いえ、わたしにはギルフォード殿下が番かどうかわかりません。匂いも……」
「っ!!……番がわからない?ミオ様、それは一体どう言う……」
「えっ?そのままの意味です……けど……そもそもわたしたちの世界、国に番なんてものはないですし」
「そんな……番がいない?……ミオ様が番がわからないなんて……」
一体どういうことだ?番が見つからないということはあるだろうが、いないと断言出来ることではないはず。万が一出会う前に亡くなってしまったということはあるがしれないが……
それに番がわからないなんて。一体どう言うことだ?出会えば必ずわかるはずだ。ミオ様から何の獣人かなんてわざわざお教えいただいていないが耳を見るに猿の獣人だろう。今まで他の猿の獣人で番がわからなかったなんて聞いたこともないが……
帰りたいとおっしゃっていた国の名前も何だったか。聞いたこともないような名前だったな。その国はこの国からはよほど遠く辺鄙なところにあるのだろう。もしかしたら街の名前の可能性も……
きっと小さな国でしかし、周辺に他の国も近くにはない。だから、番という存在に出会えない確率が高く、そんな辛さを抱えるよりも最初から教えないのかもしれないな。
これではそもそも初夜についても知らないかも知れないな。
何ということだ。
俺は気を取り直して咳払いをした。
「コホン、神子様という存在は何か我々と違いお体も特別なのかも知れませんね。ですが私は番だとわかっているので安心して下さい」
とりあえずこう言うしかなかった。
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