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第19話「残念な水の中級精霊」
しおりを挟むしかし目論見は見事に失敗した。
チャームの効果であれば、あの壁になっているスライムは、慌てふためいて奥に退散していくものとばかり思っていた。
しかし微動だにせずとは……
探知を使って少しでも動いてないか確認するも、ピクリとも動いていない。
チャームには、中級種までの魔物を退ける効力がある筈なので、あのスライムはそれ以上の魔物という事になる。
僕にとって、命の危険がある魔物が目の前に居る事になる。
それ処か村の人も知らずにここまで来ているのだ……今まで良く無事だったものだ。
しかし退か無い可能性は別にもある、チャームの性能が低いという可能性だ。
それはそれで、放って置くと自分の命だけで無く仲間の命さえ危うくなる。
そう思い考え込んでいると。
『多分その壁にいるスライムは、階層主への門代わりだよぉ』
思い描いた結果に行かなかった僕に、モンブランがそう話しかける……
しかし考え込んでいた僕には、モンブランの大切な言葉が入ってこなかった。
僕はただ持っているチャームを凝視して、どうすれば通れるか考える。
マッコリーニに渡した物と今のチャームにまさかの差異があった?
……と思い念のため鑑定する。
チャーム性能に、それぞれ差があるのか調べる為だ。
しかし鑑定の内容は、マッコリーニがした時とはだいぶ変わっていた。
マッコリーニは半ば強引に鑑定スクロールを使用しただけに、理由など聞くわけにもいかない。
スクロールと僕の鑑定に、どうして結果に違いが出るのか等僕一人では理由が判らない。
そして相談できる人も今ここには居ない…
思いを巡らせるが鑑定LV位しか思い当たる節がない。
『出来上がった物に差が出るのか?』と……思い念の為作っていた何個かを確認する。
因みに所持中のチャームは、中身に使用した花材は同じ種類に纏めてある。
マッコリーニに売った物は色違いのカスミソウを使用したのだが、その色の違いを見て『効果の違いを心配し』全ての鑑定していたのだ。
しかしその時の結果は、寸分違わずだった。
そして現状でも、僕の作ったものは一つ残らず同じ結果が出た。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「魔物除けのチャーム☆☆」
(異世界産名 カスミソウのハーバリウム)
錬金・マジックアイテム 中級
効力
・中級種までの魔物を遠ざける効果。
レジスト成功時以降は対象への効果一時無効。
階層主およびそれに類する魔物に効果無し。
・植物系魔物には効果が1ランクダウンし、敵意を
持たない精霊種、聖獣・神獣には効果無し。
特例範囲
・収納袋(箱)・アイテム袋(箱)の中からは効果無し
・障害物(特殊)
(ダンジョン内部に限り区画による効果制限あり)
効果範囲「50歩」
継続効果 器が破損するまで
錬金製作可能
素材
華各種、錬金水、容器、密閉蓋
花材に用いる素材で効力・等級に変動あり。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
なんと、マッコリーニの予感は的中した。
花材で効力などが変わるらしい、腐っても商人とエクシアさんが言った通りだ。
色も関係してくるかは、時間をかけて詳しく調べないとならなそうだ。
今回使用したカスミソウは全部同じ色だが、鑑定結果に変わりは無かった。
それにしても鑑定結果が、鑑定スクロールと自前の鑑定で内容がだいぶ異なるので、エクシアさんには知らせた方が良い様な気がする。
そもそもマッコリーニに渡した物と別物の可能性さえ有る。
エクシアさんに相談すれば、その時に鑑定の詳細の違いのアドバイスも聞ける。
そして自分の為にもなる。
効力と特例範囲は特に重要になるだろうし……と思って、リュックにしまう。
しかし先程のモンブランの言葉と、鑑定内容が合致して納得がいった。
「確かにモンブランの言った通り、あのモンスターはどうにも出来ないね。今鑑定して理解したよ。あのモンスターは階層主に類するモンスターなんだね…」
『そうだよ?この奥にこの階の階層主が居るんだけど、大抵その前には何かしらの障害があるんだよ?門だったり、階層主に次ぐ魔物だったり……まぁ色々よね』
魔の森にいたモンブランだったが、ダンジョンに詳しい為に僕はその事を尋ねてみる……
「ところで、モンブランは何でそんなにダンジョンに詳しいんだ?」
『伊達に長生きして無いよ!と言うのは嘘で……大抵冒険者が教えてくれるんだよね……『聖樹の葉を欲しければ!私の知らない面白い話をしなさい!』って言うと大体ね!』
僕は前に姿が見えない話を覚えていた……
それなのに何故姿が見えるなどと、今更言うのだろうとおもいあげ足を取る。
「普通モンブランの姿って見えないんじゃなかった?」
『聖樹の葉を欲しがる位なんだから、大概その冒険者は何かしら方法見つけてくるわよ……考えればわかるんじゃない?』
モンブランの言ったことは最もだ。
「まぁ……私もあの森で暇だから……折角来て土産話してくれるなら姿見せてもいいかな?とか思ってたりする訳よ!」
結局見える理由は、モンブランに左右されるにかもしれない……
しかし精霊についての詳しい情報を、まだ教える気は無い様だ。
そもそもモンブランの話では、この先は階層主だ。
だとすれば『危険に違いない!諦めよう……』と、思った矢先リュックの水鉄砲に目がいった。
モンブランは、楽しそうに水の精霊と戯れている。
精霊同士の話が終わるまで暇つぶしでもしようと思い、先程手に入れた2つの水鉄砲を持ち、泉に沈めて水を入れる。
そしてハンドルで暫く空気を圧縮してトリガーを引くと、勢い良く水が飛び出て泉に飛沫があがる。
水鉄砲で遊んでいると、周辺の精霊達が水鉄砲から出る水に混ざり遊び始めた。
銃口から勢い良く出てくる水に混ざり遠くまで運ばれて泉に落ちると、飛沫と一緒に小さな光も飛び跳ねる。
小さい光の粒の水精霊にしてみれば、ウォータースライダーの様なものになるのだろう。
意外と面白いので暫くリュック内部で一人ぼっちだったモンブランの気が済むまで、水の精霊と話をさせようと思い、一人水鉄砲で遊び童心に還る。
「最近の水鉄砲は威力が違うな!前はこんなに勢い良く飛ばなかったのに。」
と言いながら、何度か水を充填しながら同じ事を繰り返す……
水鉄砲の周辺は水精霊だらけになっている、水鉄砲発射待ちの待機列だ。
また泉に手を沈めると……急に何かが手に纏わり付いたので、びっくりして水鉄砲を思わず水中に落としてしまった。
『今これ泉に捨てたよね!なーら!今からこれはあたしのよ!』
姿は無く声は耳に聞こえ無いのに、不思議と声が直接頭に語りかけて来る………モンブランと同じ『念話』だと気がつくのに時間がかかった。
気がつくと、女の子を象った水が目の前の湖面に浮いていた。
『この泉に居る水の眷属の人気を随分と取ってくれちゃって!……あんたと同じ物があれば……中級精霊の私だって!』
そこに居たのは水の精霊でも、人の形を取れる中級精霊だった。
『うぬぬぬぬ………でねぃ!水が!でねぃ!!ナニコレ!壊れてんじゃ無いの!!だから捨てたのか!泉にゴミ捨て反対!!』
中級精霊の説明では、どうやら僕は下級精霊の人気を独り占めしていた様だ。
彼女はそれが気に食わないらしく、僕が泉に手を突っ込むのを待っていた様だ。
ずっと『うぬぬぬ』と言っている。
水が入ってないのだ……水が出るわけもない。
それが判らない『非常に残念』な水の精霊の様だ。
なので僕は、水の入れ方に空気を圧縮するハンドルの使い方そしてトリガーの引き方など、順に説明する。
『お……思ったよりも……優しいじゃない!ニンゲンのくせに!』
水の中級精霊は下級精霊の憧れの的らしいが、水鉄砲まで手に入れた今超絶的人気を誇っていた。
身の回りが凄い状態だが……鬱陶しくはないのだろうか……
『さっき、あの壁どうにかしようとしてたけど……通れる様にしてあげようか?私はコレが一個あればこの子達は満足だと思うけど……そっちの一個あればもっと沢山の子が満足できると思うの!』
水の精霊は壁をどうにかする方法を知っているらしく、その為の方法を餌にまさかの取引を持ち出して来た。
水鉄砲はこのダンジョンで手に入れた物なので、差し出しても問題はない。
寧ろ異世界の産物と分かってしまい、大騒ぎされるより遥かにマシだ。
僕は『水精霊が管理するなら、そうそう人の手には渡らないだろうし……』と思い返事を返す。
「コレで良ければ全然良いよ。寧ろ貰ってくれるなら助かるし。」
『え?ホントに!くれるの!ニンゲンってワガママで、独占欲が強いからダメだと思ってた!』
『折角気持ちよくあげたのに……』そう思える程、目の前の中級精霊はとても失礼な精霊だった……
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