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全知全能と気晴らし
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僕はあれからもずっと星を見ていた。早巻きにしたり、世界のあちこちを見て回ったり、大地に緑が生えだしてからは特に面白かった。最初は虫だか粘液の塊だかみたいな生き物ばっかりだったけど、少しずつ動物と呼べるような生き物も生まれ始めた。地球の原始とは僅かに異なっているらしいが、それはそれで面白いだろう。僕はその様を世界に入ることも無く、授業の合間や、退屈が過ぎて授業中にも見ていたりした。
「宇尾根、起きて!」
「ん~?」
僕は聞こえて来た可愛らしい声に目を開け……いや、目は元から開けていたから顔を上げた。いつも、こうして机に突っ伏したフリをして見ているからだ。
「どうしたの?」
「いや、いっつも寝てるから起こしてみよーと思って」
そんな理由で起こされたのか僕は。まぁ、別に良いけどさ。
「別に寝てる訳じゃないよ。ボーっとしてるだけ」
「えぇ? じゃあ、友達と話せば良いじゃん」
うぐ、僕の心に重い一撃が……!
「話す話題も無いしね」
「話題とか、話してから考えれば良くない?」
コミュ力強い勢の考え方やめろ! 僕はコミュニケーションが苦手なんだよ。
「僕はコミュニケーションが下手だからさ」
「えー? でも、今普通に話してるじゃん」
「よく考えてよ。ここまでの会話は、全部黒崎さんが話題を出して、僕はそれに答えてるだけでしょ?」
「……確かに?」
納得されるのもそれはそれで傷付くけど、分かってくれたなら良かろう。
「うーん、宇尾根ってマイペースだし……自分の話をしたら良いんじゃない? それなら、話題が無くても話せるでしょ!」
「それ、典型的な嫌われるパターンじゃないかな……」
自分語りしかしなくて、他の話だと碌にコミュニケーション取れないって結構良くない気がするけど。少なくとも、僕はそんな相手とは友達になりたくはない。
「自分の話でも、面白かったら私は好きだけどなぁ……あ、そうだ! 試しに話して見てよ、それで面白いか私が試してあげる!」
地獄の提案が来た……! 僕のことをマイペースだなんて言うけど、君も大概マイペースだと思うよ、黒崎さん。
「……じゃあ、これは寧ろ相談なんだけどさ」
「ほう、良いでしょう」
偉そうに頷き、神妙な面持ちでこちらを見る黒崎さん。これに話すべきことなのか、今から後悔が沸き上がって来たが、もう話す他無いだろう。
「例えば、何だけど……自分のせいで、人を傷付けてしまったらどうしたら良いと思う?」
「んー、ちょっともう少し詳しく聞かないと答えれないかも?」
「例えば、容易に守れる筈だった人をみすみす危険に晒したりね」
僕が言うと、黒崎さんは難しそうに目を細めた。
「守れる筈の人……前から自転車が来てるのに言わなかったとか?」
「うん。まぁ、うん。そんな感じ」
そんな話じゃないんだけど、本当のことを話す訳にも行かないので頷いておいた。
「あーね。そういう話かぁ……ごめんで終わりじゃないの?」
「んー、終わりじゃないね」
というか、謝ること自体難しい。謝るということは、柚乃に真実を話すということと殆ど同義だからだ。
「だったら……気晴らしするしかないね!」
「気晴らしって、例えば?」
僕は僕の世界に浸り込むことで傷を癒しているが、気晴らしって感じでは無い。どっちかというと、現実逃避って方が似合うだろう。
「人を傷付けて嫌な気持ちになったなら、人を助けたら逆の気持ちになるんじゃない? 困ってる人が助かったらみんな嬉しいし、一石二鳥!」
「……なるほどね」
人を助けて気晴らしか、文字にすると最低な偽善者にしか見えないけど、僕には似合ってるかも知れない。全知全能になっても、世界に怯えて体を小さくしている僕には、偽善者くらいがピッタリだろう。
「良いアイデアを貰ったよ。ありがとう」
「ホント? だったら良いけど……良し、じゃあ手始めに私の宿題を代わりにやろう!」
「いや、自分でやりなよ」
「えーっ!」
そんなの偽善にすらならないでしょ。別にそのくらいやったって良いけどさ。
「しょうがないなぁ……あ、次の授業始まるね。じゃ!」
「うん、ありがと」
足早に去っていった黒崎さんは嵐のようだった。でも、確かに彼女は雷鳴の如く僕に天啓を残していった。
「人助け、か」
僕は最後列の席で、誰にも聞こえぬように呟いた。教室の前の扉から現代文の先生が入って来て、授業の開始を宣言する。
「起立、気を付け、礼」
日直が合図をかけると、皆が立ち上がり、声を上げて頭を下げた。当然、僕もそれに倣って席を立って頭を下げる。
「良し」
決めた。一日一善だ。僕は手始めに最近腰をやってしまったらしい現代文の古矢先生の体を治しておいた。
「宇尾根、起きて!」
「ん~?」
僕は聞こえて来た可愛らしい声に目を開け……いや、目は元から開けていたから顔を上げた。いつも、こうして机に突っ伏したフリをして見ているからだ。
「どうしたの?」
「いや、いっつも寝てるから起こしてみよーと思って」
そんな理由で起こされたのか僕は。まぁ、別に良いけどさ。
「別に寝てる訳じゃないよ。ボーっとしてるだけ」
「えぇ? じゃあ、友達と話せば良いじゃん」
うぐ、僕の心に重い一撃が……!
「話す話題も無いしね」
「話題とか、話してから考えれば良くない?」
コミュ力強い勢の考え方やめろ! 僕はコミュニケーションが苦手なんだよ。
「僕はコミュニケーションが下手だからさ」
「えー? でも、今普通に話してるじゃん」
「よく考えてよ。ここまでの会話は、全部黒崎さんが話題を出して、僕はそれに答えてるだけでしょ?」
「……確かに?」
納得されるのもそれはそれで傷付くけど、分かってくれたなら良かろう。
「うーん、宇尾根ってマイペースだし……自分の話をしたら良いんじゃない? それなら、話題が無くても話せるでしょ!」
「それ、典型的な嫌われるパターンじゃないかな……」
自分語りしかしなくて、他の話だと碌にコミュニケーション取れないって結構良くない気がするけど。少なくとも、僕はそんな相手とは友達になりたくはない。
「自分の話でも、面白かったら私は好きだけどなぁ……あ、そうだ! 試しに話して見てよ、それで面白いか私が試してあげる!」
地獄の提案が来た……! 僕のことをマイペースだなんて言うけど、君も大概マイペースだと思うよ、黒崎さん。
「……じゃあ、これは寧ろ相談なんだけどさ」
「ほう、良いでしょう」
偉そうに頷き、神妙な面持ちでこちらを見る黒崎さん。これに話すべきことなのか、今から後悔が沸き上がって来たが、もう話す他無いだろう。
「例えば、何だけど……自分のせいで、人を傷付けてしまったらどうしたら良いと思う?」
「んー、ちょっともう少し詳しく聞かないと答えれないかも?」
「例えば、容易に守れる筈だった人をみすみす危険に晒したりね」
僕が言うと、黒崎さんは難しそうに目を細めた。
「守れる筈の人……前から自転車が来てるのに言わなかったとか?」
「うん。まぁ、うん。そんな感じ」
そんな話じゃないんだけど、本当のことを話す訳にも行かないので頷いておいた。
「あーね。そういう話かぁ……ごめんで終わりじゃないの?」
「んー、終わりじゃないね」
というか、謝ること自体難しい。謝るということは、柚乃に真実を話すということと殆ど同義だからだ。
「だったら……気晴らしするしかないね!」
「気晴らしって、例えば?」
僕は僕の世界に浸り込むことで傷を癒しているが、気晴らしって感じでは無い。どっちかというと、現実逃避って方が似合うだろう。
「人を傷付けて嫌な気持ちになったなら、人を助けたら逆の気持ちになるんじゃない? 困ってる人が助かったらみんな嬉しいし、一石二鳥!」
「……なるほどね」
人を助けて気晴らしか、文字にすると最低な偽善者にしか見えないけど、僕には似合ってるかも知れない。全知全能になっても、世界に怯えて体を小さくしている僕には、偽善者くらいがピッタリだろう。
「良いアイデアを貰ったよ。ありがとう」
「ホント? だったら良いけど……良し、じゃあ手始めに私の宿題を代わりにやろう!」
「いや、自分でやりなよ」
「えーっ!」
そんなの偽善にすらならないでしょ。別にそのくらいやったって良いけどさ。
「しょうがないなぁ……あ、次の授業始まるね。じゃ!」
「うん、ありがと」
足早に去っていった黒崎さんは嵐のようだった。でも、確かに彼女は雷鳴の如く僕に天啓を残していった。
「人助け、か」
僕は最後列の席で、誰にも聞こえぬように呟いた。教室の前の扉から現代文の先生が入って来て、授業の開始を宣言する。
「起立、気を付け、礼」
日直が合図をかけると、皆が立ち上がり、声を上げて頭を下げた。当然、僕もそれに倣って席を立って頭を下げる。
「良し」
決めた。一日一善だ。僕は手始めに最近腰をやってしまったらしい現代文の古矢先生の体を治しておいた。
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