ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

文字の大きさ
51 / 189

全知全能と冒険者

しおりを挟む
 僕はレティシアと共に入門の為の列に並ぶ中で、ちらちらと向けられる視線が気になりながらも話していた。

「そういえば、レティシアは何の為にあの森に来てたの?」

 僕の案内の為にここまで付いて来てくれたが、元々は何の目的で来ていたんだろうか。何となく暇だから、とかなら僕も気が楽だけど、そんな訳も無いだろう。

「普通に、魔物を狩りに来てたのよ。街に近い区域の魔物を狩ることは溢れて来る危険性を減らす為に大事だから。素材は売れるし、アンタも冒険者になったらそうしなさい。素材の売却はギルドで出来るからそうしなさい。一応、高く買い取ってもらいたかったら自分で取引相手を探すのも手ではあるけど、それをやってると等級が上がらないから、結局長期的には上の等級の依頼を受けられなくて儲けが少なくなるでしょうね」

「へぇ……じゃあ、僕の案内の為に狩りを切り上げさせちゃったかな? 申し訳ないね」

「別に良いわよ。受け入れたのは私なんだから、そういう時は謝るんじゃなくてありがとうで良いのよ」

「なら、ありがとう」

 僕が言うと、レティシアは鼻を鳴らして頷いた。感謝より謝罪が来てしまうのは日本人的な性分だろうけど、異世界には合わなそうだね。

「それに、将来有望な冒険者の卵を拾っておくのはこの街の為にもなるでしょ?」

「……君って、本当に凄い良い人なんだね」

 にやりと笑って言ったレティシアに、僕はそう返した。想像よりもずっと無私の人というか、自分以外の為に頑張れる人なんだね。

「別に、いつか肩を並べて戦うことになった時に……ちょっとは楽できるかも知れないじゃない?」

「……あはは、そうだね。その時が来れば頑張るよ」

 当たり前に、そんな機会が来ることを想像できる世界なんだ。魔王軍、か。現代を生きる僕からすれば冗談みたいな響きだが、この世界の人類からすれば大真面目に宿敵だ。世界全体が常に戦争状態の世界と考えれば、レティシアが幾度と言っていたこの世界の残酷さも伝わって来る。

「……そういえば、ギルドに依頼って一杯あるの?」

「まぁ、あると言えばあるわね。だけど、自分が受けられるレベルで受けたいと思えるようなものは殆ど無いと思った方が良いわよ。優秀な依頼は、結局優秀な奴がさっさと持って行くもんだし」

「ずっと、依頼が張り出されるところを見てれば良いんじゃないの?」

「そんなことしてる暇があったら、森で魔物でも狩ってた方が稼げるわよ」

 うん。まぁ、僕もそんな暇そうなことやるつもりは無いけどね。聞いただけだ。

「でも、それなら優秀な人ってのはどうやってさっさと良い依頼を持って行くの?」

「優秀な奴ってのは、腕の話じゃなくて冒険者として優秀な奴のことよ。耳が良かったり、頭が良かったりね。そろそろあの魔物の繁殖の時期だとか、何かの素材を求めて研究者が街に来てるだとか、金払いの良い商人が街を出ようとしてるとか、そういうのを察知して自分でいつ頃依頼が出されるか調べたり、自ら指名依頼をして貰うように売り込んだりとか、優秀な依頼が張り出される前に自分からかぶりつきに行くのよ」

「へぇ……僕には出来そうにないなぁ」

「ま、実際私もそこまで熱心にはやらないけどね。私くらい腕に自信があると、寧ろそこまでする必要も無いのよ」

 ドヤ顔でこちらを見てくるレティシアに、僕は迷った末に親指を立てておいた。レティシアは微妙そうな顔になった。そういえば、サムズアップってこっちだとどういう意味なんだろう、と思ったけどこっちでも同じような意味合いらしい。

「それじゃあ、僕は森で魔物を狩って卸してを続けてれば良いのかな」

「まぁ、そうね。だけど、常設依頼ってのを受けるのも良いわよ。誰かが受ける訳じゃなくて、貼ってある限りはずっと誰でも受けられるって類いの依頼ね。例えば、増えすぎた魔物なんかが居たらギルドから依頼が出るし、最近じゃポーションの素材を取って来いってのが依頼としてずっと出てるわよね」

「あれ、普段はポーションの素材は売れないの?」

「普段も薬草なんかは売れるわよ。だけど、依頼として出てると等級を上げる為の貢献値がただ素材を売るのに追加で貰えるわね。勿論、貢献値をどれだけ貰っても最終的には試験に受からないと等級は上がらないわ」

 おー、良いね。昇格戦って訳だ。そういうの、テンション上がるね。

「なるほどね、ありがとう。色々分かったよ」

「ふふん、何でも聞いて良いわよ」

 レティシアは得意げにそう言った。さては、先輩面をするのが好きだね。

「にしてもこの街、近付いて見ると思ったより大きいね。これだけの規模の街、丸ごと城壁で覆うなんて大変なんじゃないの?」

「さぁ? 大変かも知れないけど、魔術があれば出来るでしょ」

 確かに、そうか。地球だと城塞都市を作り上げるのは大変なイメージがあったけど、こっちなら石も魔術で出せば良いし、建築も魔術でやれば良い。採掘も、輸送も、建築も、全てノーコストで出来ちゃうんだ。とはいえ、この街を覆うこの城塞を作り上げるには魔力も相当使いそうだけど……まぁ、魔術士が沢山居ればどうにかなるか。

「ほら、治。私たちの番よ」

「あ、意外に早かったね」

 僕は平気を装ってそう言いながらも、鎧を身に纏った門番を前にちょっと緊張していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活

双葉 鳴
ファンタジー
俺、“飯狗頼忠(めしく よりただ)”は世間一般で【大ハズレ】と呼ばれるスキル【+1】を持つ男だ。 幸運こそ100と高いが、代わりに全てのステータスが1と、何をするにもダメダメで、ダンジョンとの相性はすこぶる悪かった。 しかし世の中には天から二物も三物ももらう存在がいる。 それが幼馴染の“漆戸慎(うるしどしん)”だ。 成績優秀、スポーツ万能、そして“ダンジョンタレント”としてクラスカースト上位に君臨する俺にとって目の上のたんこぶ。 そんな幼馴染からの誘いで俺は“宝箱を開ける係”兼“荷物持ち”として誘われ、同調圧力に屈して渋々承認する事に。 他にも【ハズレ】スキルを持つ女子3人を引き連れ、俺たちは最寄りのランクEダンジョンに。 そこで目の当たりにしたのは慎による俺TUEEEEE無双。 寄生上等の養殖で女子達は一足早くレベルアップ。 しかし俺の筋力は1でカスダメも与えられず…… パーティは俺を置いてズンズンと前に進んでしまった。 そんな俺に訪れた更なる不運。 レベルが上がって得意になった女子が踏んだトラップによる幼馴染とのパーティ断絶だった。 一切悪びれずにレベル1で荷物持ちの俺に盾になれと言った女子と折り合いがつくはずもなく、俺たちは別行動をとる事に…… 一撃もらっただけで死ぬ場所で、ビクビクしながらの行軍は悪夢のようだった。そんな中響き渡る悲鳴、先程喧嘩別れした女子がモンスターに襲われていたのだ。 俺は彼女を囮に背後からモンスターに襲いかかる! 戦闘は泥沼だったがそれでも勝利を収めた。 手にしたのはレベルアップの余韻と新たなスキル。そしてアイアンボックスと呼ばれる鉄等級の宝箱を手に入れて、俺は内心興奮を抑えきれなかった。 宝箱。それはアイテムとの出会いの場所。モンスタードロップと違い装備やアイテムが低い確率で出てくるが、同時に入手アイテムのグレードが上がるたびに設置されるトラップが凶悪になる事で有名である。 極限まで追い詰められた俺は、ここで天才的な閃きを見せた。 もしかしてこのトラップ、モンスターにも向けられるんじゃね? やってみたら案の定効果を発揮し、そして嬉しい事に俺のスキルがさらに追加効果を発揮する。 女子を囮にしながらの快進撃。 ステータスが貧弱すぎるが故に自分一人じゃ何もできない俺は、宝箱から出したアイテムで女子を買収し、囮役を引き受けてもらった。 そして迎えたボス戦で、俺たちは再び苦戦を強いられる。 何度削っても回復する無尽蔵のライフ、しかし激戦を制したのは俺たちで、命からがら抜け出したダンジョンの先で待っていたのは……複数の記者のフラッシュだった。 クラスメイトとの別れ、そして耳を疑う顛末。 俺ができるのは宝箱を開けることくらい。 けどその中に、全てを解決できる『鍵』が隠されていた。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...