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全知全能と指輪
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三人で歩いている間の話はちょっと気まずかったけど、ユモンが割と明るく話してくれていたので助かった。
「あ、ここで待ってて貰って良い? ユモ……イカダチも」
「あいよ」
「承知致しました」
僕は家にサッと入り、二階の自室へと向かった。
「あら、もう帰って来たんね」
「んや、ちょっと忘れ物したから取りに来ただけ」
「はいはい。遅くならんようにね」
「あーい」
途中で擦れ違ったお母さんに僕は適当に手を上げて返事を返し、自室に入るとふっと息を吐いた。
「……どうしよっかな」
ぼすっとベッドに腰かけて、僕は天井を眺めながら考え始めた。代わりの指輪があると安堂さんには言ったけれど、勿論そんなものは持っていない。初めから全知全能で創るつもりで言っただけだ。
だけど、どういう風に創ろうかな。僕は学習机の引き出しを次々に開けて、色んなものをガチャガチャと探した。そうして見つけたのは、紫色の結晶が散りばめられた銀色の指輪だった。と言っても、立派なものじゃない。
ちゃちなおもちゃの指輪だ。いつから持っているのかも忘れたけど、幼い頃にきっとプレゼントされたんだと思う。だけど、何となく見た目が気に入っていた僕はそれを捨てることも無くずっと持っていた。
「デザインは、これで良いかな」
僕はその指輪を手に取って、部屋の電気に透かして見せた。そこに宝石の輝きは無く、メッキの光沢があるだけ。おもちゃの指輪だった。そのデザインだけを模倣して、新たな指輪を創ろうと思ったけど……やっぱり、この指輪を使うことにした。このまま引き出しの奥で眠っているよりも、誰かに付けて貰った方が指輪としては本望だろう。
「ありがとね、今まで」
ぱちりと、指が鳴る。すると、その指輪のメッキの銀色は本物の銀に変わり、プラスチックの宝石はアメジストのような美しい結晶に変わった。さっきまではちゃちで子供の玩具にしか見えなかったそれも、素材が本物に入れ替わってみれば大人が着けていたって違和感が無いような高級感のある指輪に見えた。
さて、後は仕上げだけである。この美しい紫色の結晶は魔力を底なしに貯め込む力と闇属性への親和性を持っているので、あとは耐久性だとか利便性だとか、そこら辺の問題を解決すれば完璧だ。
先ずは、壊れないようにして……そうだ、相手は子供だから指輪のサイズも伸縮自在にしておこう。それと、もし盗られても、登録した持ち主の下にいつでも呼び戻せるようにもしておけば良いかな。
「うん、完璧だ」
特に、魔術を増幅したりとかそういう能力は無いので悪用される心配もそんなに無いだろう。僕は最後の記念にと指輪を自身の指に嵌めて、部屋の電気に透かして見せた。神秘的な紫色の輝きがそこに浮かんでいた。
♢
少し待たせてしまったので駆け足で戻ると、二人は並んで話しながら待っていた。
「お、来たか」
「お待ちしておりました」
待ち兼ねていたように反応する二人に僕は手を上げて駆け寄ると、ポケットからその指輪を取り出してにやりと笑った。
「じゃーん」
手の平に乗せられたその指輪は、やはり美しい紫色の輝きを放っていた。
「……おい、何だこれ」
「例のブツ」
僕がちょっとふざけて答えるも、ユモンは全く笑っていなかった。
「構造自体はあの空間収納魔術に近いのか……? いや、違うな。こいつはそんな次元じゃねぇ。もっと別の、根源的にヤベェ感じがする……」
「別に、魔術を増幅したりとか補助したりとかそういう機能は無いし、大きな問題は無いと思ってたけど……?」
「お前が良いなら良いけどよ……こいつは、マジでヤバいぞ」
そう言われた僕は、困り顔で安堂さんの方を見た。
「……これは、底が見えませんな」
紫色の結晶を覗き込むように見ながら言う安堂さんに、僕は沈黙した。どうしよう、ヤバいのを渡さない為にヤバいの作っちゃったかも。
「しかし、容量は兎も角耐久性というべきか、安定性に問題は御座いませんでしょうか。お嬢様の魔力の出力に耐えられなければ、どれだけの容量があろうとも結局は無意味で御座いますので」
「あ、大丈夫だよ。壊れないから」
「ッ!?」
安堂さんが凄い顔をしてこっちを見てきた。そっか、それもヤバいか。
「壊れないというのは、どの程度……」
「何しても壊れないよ。だけど、防具にはならないし大丈夫だと思う」
ちょっと焦りながら答えた僕だけど、二人はもう凄い形相で僕を見ていた。
「こ、こんな物をどこで……?」
「えっと、何か……アレです、秘密です」
「お前なァ……どうなっても知らねぇからな、オレ様は」
呆れたようにというか、諦めたように言ったユモンに、僕は急いで何か起死回生の言葉を付け加えることにした。
「でも、あの……悪用厳禁なんで。ヤバいことしてたら、僕とイカダチで回収します」
「おい、巻き込むなよ」
「何とも雑な決まり事ですな……」
僕はふっと息を吐いて冷や汗を拭い、さっさと指輪を安堂さんに押し付けた。
「あ、ここで待ってて貰って良い? ユモ……イカダチも」
「あいよ」
「承知致しました」
僕は家にサッと入り、二階の自室へと向かった。
「あら、もう帰って来たんね」
「んや、ちょっと忘れ物したから取りに来ただけ」
「はいはい。遅くならんようにね」
「あーい」
途中で擦れ違ったお母さんに僕は適当に手を上げて返事を返し、自室に入るとふっと息を吐いた。
「……どうしよっかな」
ぼすっとベッドに腰かけて、僕は天井を眺めながら考え始めた。代わりの指輪があると安堂さんには言ったけれど、勿論そんなものは持っていない。初めから全知全能で創るつもりで言っただけだ。
だけど、どういう風に創ろうかな。僕は学習机の引き出しを次々に開けて、色んなものをガチャガチャと探した。そうして見つけたのは、紫色の結晶が散りばめられた銀色の指輪だった。と言っても、立派なものじゃない。
ちゃちなおもちゃの指輪だ。いつから持っているのかも忘れたけど、幼い頃にきっとプレゼントされたんだと思う。だけど、何となく見た目が気に入っていた僕はそれを捨てることも無くずっと持っていた。
「デザインは、これで良いかな」
僕はその指輪を手に取って、部屋の電気に透かして見せた。そこに宝石の輝きは無く、メッキの光沢があるだけ。おもちゃの指輪だった。そのデザインだけを模倣して、新たな指輪を創ろうと思ったけど……やっぱり、この指輪を使うことにした。このまま引き出しの奥で眠っているよりも、誰かに付けて貰った方が指輪としては本望だろう。
「ありがとね、今まで」
ぱちりと、指が鳴る。すると、その指輪のメッキの銀色は本物の銀に変わり、プラスチックの宝石はアメジストのような美しい結晶に変わった。さっきまではちゃちで子供の玩具にしか見えなかったそれも、素材が本物に入れ替わってみれば大人が着けていたって違和感が無いような高級感のある指輪に見えた。
さて、後は仕上げだけである。この美しい紫色の結晶は魔力を底なしに貯め込む力と闇属性への親和性を持っているので、あとは耐久性だとか利便性だとか、そこら辺の問題を解決すれば完璧だ。
先ずは、壊れないようにして……そうだ、相手は子供だから指輪のサイズも伸縮自在にしておこう。それと、もし盗られても、登録した持ち主の下にいつでも呼び戻せるようにもしておけば良いかな。
「うん、完璧だ」
特に、魔術を増幅したりとかそういう能力は無いので悪用される心配もそんなに無いだろう。僕は最後の記念にと指輪を自身の指に嵌めて、部屋の電気に透かして見せた。神秘的な紫色の輝きがそこに浮かんでいた。
♢
少し待たせてしまったので駆け足で戻ると、二人は並んで話しながら待っていた。
「お、来たか」
「お待ちしておりました」
待ち兼ねていたように反応する二人に僕は手を上げて駆け寄ると、ポケットからその指輪を取り出してにやりと笑った。
「じゃーん」
手の平に乗せられたその指輪は、やはり美しい紫色の輝きを放っていた。
「……おい、何だこれ」
「例のブツ」
僕がちょっとふざけて答えるも、ユモンは全く笑っていなかった。
「構造自体はあの空間収納魔術に近いのか……? いや、違うな。こいつはそんな次元じゃねぇ。もっと別の、根源的にヤベェ感じがする……」
「別に、魔術を増幅したりとか補助したりとかそういう機能は無いし、大きな問題は無いと思ってたけど……?」
「お前が良いなら良いけどよ……こいつは、マジでヤバいぞ」
そう言われた僕は、困り顔で安堂さんの方を見た。
「……これは、底が見えませんな」
紫色の結晶を覗き込むように見ながら言う安堂さんに、僕は沈黙した。どうしよう、ヤバいのを渡さない為にヤバいの作っちゃったかも。
「しかし、容量は兎も角耐久性というべきか、安定性に問題は御座いませんでしょうか。お嬢様の魔力の出力に耐えられなければ、どれだけの容量があろうとも結局は無意味で御座いますので」
「あ、大丈夫だよ。壊れないから」
「ッ!?」
安堂さんが凄い顔をしてこっちを見てきた。そっか、それもヤバいか。
「壊れないというのは、どの程度……」
「何しても壊れないよ。だけど、防具にはならないし大丈夫だと思う」
ちょっと焦りながら答えた僕だけど、二人はもう凄い形相で僕を見ていた。
「こ、こんな物をどこで……?」
「えっと、何か……アレです、秘密です」
「お前なァ……どうなっても知らねぇからな、オレ様は」
呆れたようにというか、諦めたように言ったユモンに、僕は急いで何か起死回生の言葉を付け加えることにした。
「でも、あの……悪用厳禁なんで。ヤバいことしてたら、僕とイカダチで回収します」
「おい、巻き込むなよ」
「何とも雑な決まり事ですな……」
僕はふっと息を吐いて冷や汗を拭い、さっさと指輪を安堂さんに押し付けた。
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