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全知全能と詮索
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ドリンクバーへと向かって行った二人のお陰で、安堂さんと二人になった僕はちょっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「安堂さんって、やっぱ強いんですか?」
「突然でございますな。しかし、今の私はただの執事に過ぎませんので。荒事は専門ではございません」
「今の私は?」
「……えぇ、元々私は執事として夜咲家に雇われた訳ではございません。執事のような立ち振る舞いを身に着けたのはお嬢様のご要望でございますから。勿論、今は本当に執事として仕えておりますが」
安堂さんはにやりと笑い、指を一本立てた。
「ですので……実は、執事としての教育などを受けた訳ではございません。全て独学でございますので、粗があってもお目こぼし頂ければ」
「あ、そうなんですね……全然、僕も敬語とか分からないんで大丈夫ですけど」
しかし、元々は執事としてでは無い名目で雇われてたんだね。でも、夜咲家の中で紫苑ちゃんとそれなりに関わることがある立場だったのか。となると、紫苑ちゃんに訓練を課していた側……いや、だったらここまで懐かれてるって言うのも変だよね。紫苑ちゃんからすると嫌な相手だから、信頼は無い筈だし。
「……用心棒?」
「ほう」
口から小さく零れた考察に、安堂さんは目を細めた。
「あ、すみません。その、別に詮索してどうこうしようって訳じゃないんですけど……」
「いえ、問題ございませんよ。別段、隠しているという訳でもありませんから。確かに、夜咲家に雇われた際にはそのような名目でございましたから。最も、その際にも雑務のようなことを任されてはおりましたが。用心棒というのは、何とも暇でございますので」
「あはは、そうなんですね……でも、用心棒ってカッコいいですね。執事もカッコいいですけど」
「ふふ、そうですね。男冥利に尽きる仕事であることは間違いありません。しかし、私は……」
安堂さんが何かを言いかけたところで、さっきとは別の店員さんがユモンのチーズ入りハンバーグを運んできた。それを見つけたユモン達が慌てて席に戻って来る。
「おいおい、飯が来てんじゃねえかよ!」
「ごゆっくりどうぞー」
男の店員は食事をテーブルに並べ終えると、適当に挨拶をして直ぐに去って行った。
「むぅ……美味しそうね。一口渡しなさい!」
「はァ!? 嫌に決まってんだろ! 自分で頼みやがれ!」
「イカダチ。自分はさっき僕に一口ねだった癖によく言うよね」
「それはそれ、これはこれって奴だろォ?」
どこでそんな言葉聞いて来たんだろう……。
「お嬢様、味見をしたければ私が頼みましょうか?」
「んー、別に良いや。そこまでじゃないもの」
紫苑ちゃんは断ったものの、僕は安堂さんの提案に少し呆れていた。
「安堂さん、甘やかし過ぎは良くないですよ」
「このくらいで丁度良いのです。今までは、この世の全てが彼女に厳しかったのですから」
「別に、安堂は前から優しかったわよ? んっ」
「アーッ!? テメェッ!!?」
サラッとユモンのハンバーグを一口頂いた紫苑ちゃんに、ユモンが悲鳴と怒声を上げた。
「紫苑ちゃん、お行儀悪いよ」
「でも、美味しいわよ」
だから何だよ。関係無いだろ。
「宣戦布告と取って良いんだな、テメェ……!」
「イカダチ、契約のこと忘れてないよね?」
そして、ユモンはキレ過ぎだよ。目が怖い、顔が怖い。声が怖い。三拍子揃ってるから勘弁して欲しい。
「そ、そんなに嫌だったの……?」
「オレ様は殴られようが蹴られようが、大抵のことはやり返すだけで許してやる」
それ、許して無いよね。しっかり償わせてるよね。
「だが、食の恨みだけは決して許さねェ……テメェの魂、必ず頂くぜェ?」
「ぅ……ごめんなさい。そんなにハンバーグが好きだなんて知らなかったの。お詫びに、今度うちで最高級のハンバーグを食べさせてあげるから……」
紫苑ちゃんの言葉に、ユモンの表情がぴくりと固まった。ていうか、悪魔丸出しのセリフ吐くの止めてね、本当に。
「……仕方ねェな。そこまで言うなら許してやるよ。ていうか、何か困ってたら言えよなァ?」
「おい」
ふざけんな。ちょろ過ぎだろこいつ。手の平クルクルだけど。え、裏切られないよね僕。美味しいご飯とかに釣られて一瞬で捨てられたりしないよね?
「純粋な方のようですね。故にこそ、恐ろしくもありますが」
「あはは、それは紫苑ちゃんも同じじゃないですかね」
子供と同レベルの純粋さって、何歳なんだよ君は。悪魔だし、凄い長生きしてる筈だよね? ちょっと、単純過ぎやしないかな?
「因みに、先ほどは私について聞かれておりましたが……」
そう前置きをして、安堂さんは僕の方を見た。ユモンと紫苑ちゃんは、二人で仲良くわいきゃいと食べ物の話をしているようだ。
「そちらの方は、一体何者なのか……聞いてもよろしいでしょうか?」
ユモンから僕へと視線を移した安堂さんの目は鋭く細められ、僕は蛇に睨まれた蛙のような気分だった。
「安堂さんって、やっぱ強いんですか?」
「突然でございますな。しかし、今の私はただの執事に過ぎませんので。荒事は専門ではございません」
「今の私は?」
「……えぇ、元々私は執事として夜咲家に雇われた訳ではございません。執事のような立ち振る舞いを身に着けたのはお嬢様のご要望でございますから。勿論、今は本当に執事として仕えておりますが」
安堂さんはにやりと笑い、指を一本立てた。
「ですので……実は、執事としての教育などを受けた訳ではございません。全て独学でございますので、粗があってもお目こぼし頂ければ」
「あ、そうなんですね……全然、僕も敬語とか分からないんで大丈夫ですけど」
しかし、元々は執事としてでは無い名目で雇われてたんだね。でも、夜咲家の中で紫苑ちゃんとそれなりに関わることがある立場だったのか。となると、紫苑ちゃんに訓練を課していた側……いや、だったらここまで懐かれてるって言うのも変だよね。紫苑ちゃんからすると嫌な相手だから、信頼は無い筈だし。
「……用心棒?」
「ほう」
口から小さく零れた考察に、安堂さんは目を細めた。
「あ、すみません。その、別に詮索してどうこうしようって訳じゃないんですけど……」
「いえ、問題ございませんよ。別段、隠しているという訳でもありませんから。確かに、夜咲家に雇われた際にはそのような名目でございましたから。最も、その際にも雑務のようなことを任されてはおりましたが。用心棒というのは、何とも暇でございますので」
「あはは、そうなんですね……でも、用心棒ってカッコいいですね。執事もカッコいいですけど」
「ふふ、そうですね。男冥利に尽きる仕事であることは間違いありません。しかし、私は……」
安堂さんが何かを言いかけたところで、さっきとは別の店員さんがユモンのチーズ入りハンバーグを運んできた。それを見つけたユモン達が慌てて席に戻って来る。
「おいおい、飯が来てんじゃねえかよ!」
「ごゆっくりどうぞー」
男の店員は食事をテーブルに並べ終えると、適当に挨拶をして直ぐに去って行った。
「むぅ……美味しそうね。一口渡しなさい!」
「はァ!? 嫌に決まってんだろ! 自分で頼みやがれ!」
「イカダチ。自分はさっき僕に一口ねだった癖によく言うよね」
「それはそれ、これはこれって奴だろォ?」
どこでそんな言葉聞いて来たんだろう……。
「お嬢様、味見をしたければ私が頼みましょうか?」
「んー、別に良いや。そこまでじゃないもの」
紫苑ちゃんは断ったものの、僕は安堂さんの提案に少し呆れていた。
「安堂さん、甘やかし過ぎは良くないですよ」
「このくらいで丁度良いのです。今までは、この世の全てが彼女に厳しかったのですから」
「別に、安堂は前から優しかったわよ? んっ」
「アーッ!? テメェッ!!?」
サラッとユモンのハンバーグを一口頂いた紫苑ちゃんに、ユモンが悲鳴と怒声を上げた。
「紫苑ちゃん、お行儀悪いよ」
「でも、美味しいわよ」
だから何だよ。関係無いだろ。
「宣戦布告と取って良いんだな、テメェ……!」
「イカダチ、契約のこと忘れてないよね?」
そして、ユモンはキレ過ぎだよ。目が怖い、顔が怖い。声が怖い。三拍子揃ってるから勘弁して欲しい。
「そ、そんなに嫌だったの……?」
「オレ様は殴られようが蹴られようが、大抵のことはやり返すだけで許してやる」
それ、許して無いよね。しっかり償わせてるよね。
「だが、食の恨みだけは決して許さねェ……テメェの魂、必ず頂くぜェ?」
「ぅ……ごめんなさい。そんなにハンバーグが好きだなんて知らなかったの。お詫びに、今度うちで最高級のハンバーグを食べさせてあげるから……」
紫苑ちゃんの言葉に、ユモンの表情がぴくりと固まった。ていうか、悪魔丸出しのセリフ吐くの止めてね、本当に。
「……仕方ねェな。そこまで言うなら許してやるよ。ていうか、何か困ってたら言えよなァ?」
「おい」
ふざけんな。ちょろ過ぎだろこいつ。手の平クルクルだけど。え、裏切られないよね僕。美味しいご飯とかに釣られて一瞬で捨てられたりしないよね?
「純粋な方のようですね。故にこそ、恐ろしくもありますが」
「あはは、それは紫苑ちゃんも同じじゃないですかね」
子供と同レベルの純粋さって、何歳なんだよ君は。悪魔だし、凄い長生きしてる筈だよね? ちょっと、単純過ぎやしないかな?
「因みに、先ほどは私について聞かれておりましたが……」
そう前置きをして、安堂さんは僕の方を見た。ユモンと紫苑ちゃんは、二人で仲良くわいきゃいと食べ物の話をしているようだ。
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