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大木は空を目指して
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木人の習性や特性について、人間の感情や人格について、僕らは話をした。僕が話す度に、神樹は良く言葉を吸収し、人間についての……いや、木人についての理解を深めていった。
「……理解できた。木人のことも、人間のことも。それと……」
神樹は視線をじっと僕に向けた。
「貴方のことも」
僕はにこりと笑って、頷いた。
「それなら良かったよ。僕も君のことが、少しずつ分かって来たところだ」
「本当? それならば、私も嬉しい」
「うん。だけど……君のことを知る上で、一つだけ足りてない重要な情報があるんだ」
「重要な情報?」
僕は頷き、指を一本立てた。
「名前だ。みんな、人間は名前があるでしょう? 木人にもあるんだ。賢者の子は、スィアーナーだったね」
「……名前」
立てた指をそのまま動かして、僕は自分の顔を指す。
「宇尾根、治」
次に、僕は指の先を神樹に向けた。
「君の名前は?」
「……分からない。いや、私には無い。名前など、神樹という記号以外には」
その答えが返ってくることも予想していた僕は、すかさずこう声かけた。
「良し。だったら、僕が君に名前を付けて上げよう……嫌かな?」
「ッ! 嫌、ではない。全然、嫌などとは、思わない。寧ろ、喜ばしい」
「そっか、良かった」
僕はにこりと笑い、話している間に考えていた名前を教えることにした。
「……ソラ」
漢字にするなら、空か、天か、はたまた宙か。森の中に一際大きく聳え立っている神樹は、他の樹とは違って空の中にあるように見えたからだ。彼女はきっと地上にあると同時に、半分は空にある。陽光を一身に浴びて、空と共に森を、大地を、そこで生きる者を見守っている、
「どうかな……君には、空がよく似合うと思って」
「ッ、わたし、は……私は、これ程までの歓喜を浴びたことは、無かった。愛おしい、貴方に……治に、名前を付けて貰えるなんて、もう……私の命は、ここで尽きるかも知れない」
「な、なんでッ!?」
「溢れ出る歓喜に、心が耐えきれないから……貴方は、治は……」
神樹は……ソラは、震える目で僕を見ていた。
「いつまで、ここに……居るの、だろうか」
不安げな声で投げられたその問いに、僕は言葉を詰まらせた。
「……僕には僕の世界があるから、長くは居ない。だけど……」
僕はにこりと安心させるように笑いかけ、しっかりとソラと目を合わせた。
「必ず、また遊びに来るよ。何度でも」
「……分か、った。待っている。私は、どれだけの時でも……必ず、待っている」
覚悟の滲んだソラの表情に、僕は違和感を覚えた。
「えっと……」
「また、星が幾度巡り、果てなき歳月が過ぎようと……例え、この星が凍て付き、煮え滾り、砕けそうになろうとも……私は必ず、この星と我が使徒達と共に……待ち続ける」
そ、そうか……そうだった。この再会の時までに、ソラは既に悠久の時を過ごして居るんだ。だから、次の再会も同じくらい時間がかかると思ったのか……罪悪感が凄い。
「いや、その……何ていうか、今度は直ぐに会いに来るよ? 全然、明日にでも会いに来るから」
「……………………本当に?」
長い沈黙を経て、ソラは僕に確認の言葉を送った。
「うん、本当に」
「……どのように?」
「普通に、その……来る、だけだね」
「ここに来るには、悠久の時を必要とするのでは無いのか……?」
そう、か。そうかぁ。そう、思うよね……心が痛い。
「いや、来ようと思えば……普通に来れるんです……」
「……そう、なのか」
気まずい沈黙がこの場を支配する。
「あの……元々、この世界を、星を創った意味が……僕の生まれ過ごしている星を模倣する為だったんだ。だけど、星が生まれてから僕らの世代に追いつくまでには長い時間がかかる。だから、僕は自分の世界とこの世界の間にある時の流れを速めて、いたんだ」
「……でも、私に会いに来るならば……それは、達成出来ないのでは無いのだろうか」
僕は首を振り、僅かに笑みを浮かべた。
「いや、良いんだよ。今は、その実験なんかよりも……ずっと、君やこの星の今の方が大事だから。時の流れを速める必要は、もう無いね」
スイからのお説教で、僕は自分の生み出した世界のことを、星のことを、みんなのことをもっと大事に考えるべきだって思い直した。だから、もう早送りなんて使う必要は無い。等倍速で、この世界を見守って行こうと思う。
「これから、よろしくね……ソラ」
「ッ! 嬉しい……私は嬉しい。歓喜に耐えられない、あぁ、心がはち切れて、死んでしまいそうだ。でも、私はもう死ねないぞ……失わない、絶対に……この今を、幸せを、手放すことは出来ない……!」
僕は苦笑し、頷いた。
「良かった。喜んでくれたなら、本当に。長い間、君を一人にしてごめん。これからは、ちゃんと会いに来るからね」
「あぁ……何度でも会おう。凍えるような悠久の時も、貴方と共に居れば……きっと、暖かくて、ずっと続いて欲しいと願えるかも知れない」
幸せを噛み締めているような神樹の表情に、僕は人間の寿命の話までは言い出せなかった。
「……理解できた。木人のことも、人間のことも。それと……」
神樹は視線をじっと僕に向けた。
「貴方のことも」
僕はにこりと笑って、頷いた。
「それなら良かったよ。僕も君のことが、少しずつ分かって来たところだ」
「本当? それならば、私も嬉しい」
「うん。だけど……君のことを知る上で、一つだけ足りてない重要な情報があるんだ」
「重要な情報?」
僕は頷き、指を一本立てた。
「名前だ。みんな、人間は名前があるでしょう? 木人にもあるんだ。賢者の子は、スィアーナーだったね」
「……名前」
立てた指をそのまま動かして、僕は自分の顔を指す。
「宇尾根、治」
次に、僕は指の先を神樹に向けた。
「君の名前は?」
「……分からない。いや、私には無い。名前など、神樹という記号以外には」
その答えが返ってくることも予想していた僕は、すかさずこう声かけた。
「良し。だったら、僕が君に名前を付けて上げよう……嫌かな?」
「ッ! 嫌、ではない。全然、嫌などとは、思わない。寧ろ、喜ばしい」
「そっか、良かった」
僕はにこりと笑い、話している間に考えていた名前を教えることにした。
「……ソラ」
漢字にするなら、空か、天か、はたまた宙か。森の中に一際大きく聳え立っている神樹は、他の樹とは違って空の中にあるように見えたからだ。彼女はきっと地上にあると同時に、半分は空にある。陽光を一身に浴びて、空と共に森を、大地を、そこで生きる者を見守っている、
「どうかな……君には、空がよく似合うと思って」
「ッ、わたし、は……私は、これ程までの歓喜を浴びたことは、無かった。愛おしい、貴方に……治に、名前を付けて貰えるなんて、もう……私の命は、ここで尽きるかも知れない」
「な、なんでッ!?」
「溢れ出る歓喜に、心が耐えきれないから……貴方は、治は……」
神樹は……ソラは、震える目で僕を見ていた。
「いつまで、ここに……居るの、だろうか」
不安げな声で投げられたその問いに、僕は言葉を詰まらせた。
「……僕には僕の世界があるから、長くは居ない。だけど……」
僕はにこりと安心させるように笑いかけ、しっかりとソラと目を合わせた。
「必ず、また遊びに来るよ。何度でも」
「……分か、った。待っている。私は、どれだけの時でも……必ず、待っている」
覚悟の滲んだソラの表情に、僕は違和感を覚えた。
「えっと……」
「また、星が幾度巡り、果てなき歳月が過ぎようと……例え、この星が凍て付き、煮え滾り、砕けそうになろうとも……私は必ず、この星と我が使徒達と共に……待ち続ける」
そ、そうか……そうだった。この再会の時までに、ソラは既に悠久の時を過ごして居るんだ。だから、次の再会も同じくらい時間がかかると思ったのか……罪悪感が凄い。
「いや、その……何ていうか、今度は直ぐに会いに来るよ? 全然、明日にでも会いに来るから」
「……………………本当に?」
長い沈黙を経て、ソラは僕に確認の言葉を送った。
「うん、本当に」
「……どのように?」
「普通に、その……来る、だけだね」
「ここに来るには、悠久の時を必要とするのでは無いのか……?」
そう、か。そうかぁ。そう、思うよね……心が痛い。
「いや、来ようと思えば……普通に来れるんです……」
「……そう、なのか」
気まずい沈黙がこの場を支配する。
「あの……元々、この世界を、星を創った意味が……僕の生まれ過ごしている星を模倣する為だったんだ。だけど、星が生まれてから僕らの世代に追いつくまでには長い時間がかかる。だから、僕は自分の世界とこの世界の間にある時の流れを速めて、いたんだ」
「……でも、私に会いに来るならば……それは、達成出来ないのでは無いのだろうか」
僕は首を振り、僅かに笑みを浮かべた。
「いや、良いんだよ。今は、その実験なんかよりも……ずっと、君やこの星の今の方が大事だから。時の流れを速める必要は、もう無いね」
スイからのお説教で、僕は自分の生み出した世界のことを、星のことを、みんなのことをもっと大事に考えるべきだって思い直した。だから、もう早送りなんて使う必要は無い。等倍速で、この世界を見守って行こうと思う。
「これから、よろしくね……ソラ」
「ッ! 嬉しい……私は嬉しい。歓喜に耐えられない、あぁ、心がはち切れて、死んでしまいそうだ。でも、私はもう死ねないぞ……失わない、絶対に……この今を、幸せを、手放すことは出来ない……!」
僕は苦笑し、頷いた。
「良かった。喜んでくれたなら、本当に。長い間、君を一人にしてごめん。これからは、ちゃんと会いに来るからね」
「あぁ……何度でも会おう。凍えるような悠久の時も、貴方と共に居れば……きっと、暖かくて、ずっと続いて欲しいと願えるかも知れない」
幸せを噛み締めているような神樹の表情に、僕は人間の寿命の話までは言い出せなかった。
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