ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と空の扉

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 話は、殆ど終わった。取り留めも無いことをぽつぽつと話していた僕らは、遂に話題が尽きて少しの静寂がやって来た。

「……そろそろ、今日のところは行こうかな」

「…………また、ここに来るその時を……楽しみに、待っている」

 僕は頷き、ここからの去り方を聞こうとして……その前に、一つの疑問を思い出したのだった。

「そうだ。そういえば、何だけど……君や木人達が持ってる地球の知識って、どこから手に入れたの?」

 別に、ソラに地球の知識なんかを渡した覚えは無い。勿論、知識を書き込んだ石碑なんかをばら撒いたりもしていない。だとしたら、どうやって手に入れたのだろうか。

「石の人」

 短い答えに、僕は眉を顰めた。

「石の人……?」

「そう、石の人。彼らが呼ぶには、石の神、戦斧の神、智慧の神」

 これ、ゴーレムのことか……!? そうか、そう言えばスイも言っていた。私達に智慧を齎した存在みたいな、あの時はよく分からないからってスルーしてたけど……。

「治が石の中に流し込んだ知識を私は読み取った。長い長い時間をかけて、少しずつ……まるで、本を読むように」

 ……知識を書き込んだ石碑だった。そうだ、ゴーレム君には僕の言ってる意図を理解できるように色々と知識を詰め込んでたんだった。

「因みに、どうやって?」

「……物には記憶がある。全ての物体は過去を経て今に至るものであるからこそ、その過程もまたその身に刻まれている。それを読み取れば、物体の記憶というものを取得することも可能なのだ」

 脳波を読み取るとかそんな感じなんだろうか。良く分からないけど、多分そんな感じだと思う。ゴーレムに脳波があるかはかなり怪しいけど……取り敢えず、戻ったらゴーレム君にも挨拶をしないとね。

「ソラはそんなことも出来るんだね」

「愛おしい貴方の力で、出来るようになった」

 流し込んだ不思議パワーのことだろうか。何とかなれと雑な願いを込めながら流し込んだそれは、この有り得ない巨木が自分を維持できるように、また大量の魔力と栄養に耐えきれるようにという思いからのものだった。それが今はどういう形になっているのか分からないが、察するにそのまま全知全能の力を使えるという訳でも無いのだろう。必要に応じて形を変える万能エネルギー的な物にでもなったのだろうか。

「……また、会いに来て欲しい……と、私は切に願う」

 考察している間の僅かな沈黙に耐え兼ねたのか、ソラはそう口を開いた。

「うん、勿論来るよ。また、話をしよう。好きなだけね」

 僕はにこりと笑いかけて、踵を返し……それから、困り果ててソラに振り返った。

「それで、ここからはどうやって出れば良いんだっけ……?」

「ふふ」

 ソラは楽しそうに笑い、そして手をスッと伸ばした。

「そこから」

 そこには、白く光る扉が開いていた。ただ光だけがあるようなその開いた扉に近付くと、僕はソラに手を振ってその白い世界を去った。



 くらりと頭が揺れるような感覚と共に、僕は現世に帰還した。未だに手は神樹に触れていたので、僕はそっと神樹から手を離した。

「帰って来たみたいね」

「うん、ただいま。どのくらい待った?」

「別に、数秒よ」

「す、数秒かぁ……」

 そうなんだ、逆浦島太郎な状況に僕は驚きつつも、その方が良いかと頷いた。

「ねぇ、どうだった?」

「ん、どうって?」

「神樹様と話して来たんでしょうが。どんな話をしたとか、聞かせなさいよ。きっと皆、今も不安がってるわ」

「あ、そっか……」

 そういえば、そうだったね。既に解決したものだと思ってしまっていた。まだ、ソラと木人達のコミュニケーションは出来ていないのだ。とは言え、そこら辺は僕から色々口出しすることでも無いだろう。

「うん、きっと大丈夫だよ。ソラとは、君達の存在についてよく話してきたから」

「それは、良かったけど……その、ソラっていうのは……」

「あ、神樹のことだよ。名前が無いって言うからさ、僕が付けたんだ。ほら、空が似合うから」

 僕はそう言って、神樹を見上げさせるように片手を上げた。

「……良かったわ」

「ん?」

「本当はね、神樹様の心の方が心配だったのよ」

 空を見上げながら、スイは木漏れ日の中で穏やかに微笑んだ。

「神樹様は、ずっと一人だったから。だけど、樹として存在しているからなのか……人間的な価値観が薄くて、私達じゃただの枝や葉の一部としてしか見ては貰えなかったのよ」

「そう、だね。僕も話している内にその価値観を知ったよ」

「だけど、貴方は……貴方だけは特別だったから。造物主様」

「やめてよ、その呼び名」

 愛おしい貴方なんて呼ばれ方をするのも恥ずかしいけど、造物主は別軸で恥ずかしい。

「あら、神様になることを受け入れるんじゃなかったの?」

「神様だって事実を受け入れただけで、君達の神として崇め奉られようなんては思ってないからね」

「ふふ、どうかしらねぇ? 誰を信じるかなんて、個人の自由でしょう?」

「いや、そうだけどさ……」

 僕の精神性は別に一般男子高校生のままだからね。中身はパンピーで凡人である。付属してる特典が凄すぎるだけだ。

「それに、神様だって認めたならもっと度量広く居なさいな。祈られたり拝まれたりするくらい、堂々と胸張って受け止めなさい。どうせ、何も減りやしないんだから」

「減るよ、人間性が」

「そんなことで減らないわよ。大事なのはここでしょ?」

 スイはぽんぽんと自分の胸を叩いた。

「……分かったよ。でも、自ら神としてアピールなんてするつもりは無いからね」

「良いわよ、別に。ただ、私は崇めようかしらね?」

「や、やめてよっ!」

 にやりと笑うスイだったが、その表情からは冗談だか本気だか分からないような雰囲気が漂っていた。
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