ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

文字の大きさ
102 / 189

全知全能と石

しおりを挟む
 そうして、取り敢えずゴーレムの方に挨拶でもしに行こうかと歩き出した僕。既に見えてるくらいの距離だし、全然遠くはない。

「あれ……?」

 だが、スイが急に足を止めて表情を変えた。僕も足を止めて振り返ると、スイはこちらに気付いたようで視線を向けてきた。

「ごめん、神樹様からのお言葉が……先に行ってて貰える?」

「あ、うん」

 僕が頷くと、スイは目を閉じてその場に留まった。分かんないけど、きっと大事な話なんだろう。僕は一人で斧を持って威風堂々と立っているゴーレムの方に向かった。

「やぁ、久し振り」

 ゴーレムが僅かに身動ぎして、僕の方を見た。

「おはよう」

 ゴーレムはじっと僕の方を見ているが、何も語ることは無い。当然だ。何かを語る機能も無ければ、語ろうとする心も無いのだから。

「……」

 そして、スッとゴーレムは僕に手を伸ばした。

「え? あ、う、うん……」

 僕は戸惑いながらもそのひょろ長い腕の先の手を掴み、上下に振った。すると、ゴーレムは何事もなかったかのように元の堂々とした姿勢に戻り、視線の先も真っ直ぐに戻した。

「あの……暇、だったりする?」

 僕が聞くと、ゴーレムは僕に視線を向けて黄金の斧を構えた。違う、そうじゃない。

「別に、模擬戦の誘いって訳じゃなくて……なんか、暇だったらここで過ごす間はソラを……神樹を守って欲しいんだ。良いかな?」

 ゴーレムはこくりと頷いた。これで、きっと何かあっても安心だろう。ゴーレム君が守ってくれるなら、僕が目を離した隙にソラや木人達が倒されるなんてことは無い。

「それと、この星が滅びるようなことがあれば、それからも守って欲しいんだ。出来るかな?」

 ゴーレムは再びこくりと頷いた。軽く了承してくれたように見えるが、ゴーレム君が約束を反故にすることは無いだろう。

「……そういえば、ずっとゴーレムなんて呼ぶのも良くないよね」

 ソラと並んで……いや、ソラとも比べ物にならない程の時間をゴーレム君は過ごしてきた。時たま、僕と遊ぶ為だけにだ。別に彼には心も魂も無いから、それで摩耗したりなんてことはしないけれど、名前すら付けないままって言うのは可哀想っていうか、失礼な気がする。

「名前……どんなのが良いかな」

 誰かの名前を付けるなんて行為、今までは一切してこなかったから困っちゃうよね。ソラに続いて、今日で二つ目だ。どうしようかな。ゴーレムかぁ……うーん。

「ゴーレム……岩……石」

 連想できる言葉をぽつぽつ呟いて行く僕だったが、その途中でゴーレムが僕にじっと視線を向けた。

「え、石?」

 こくりと頷くゴーレム。全く理解できないが、石が気に入ったらしい。

「じゃあ、君はイシだ。それで……良いのかな?」

 ゴーレムは頷き、元の堂々とした姿勢に戻った。まぁ、別に良いけどさ。僕は。

「それじゃあ、イシ。よろしくね、この星を」

 ゴーレムはちらりとこちらを一瞥すると、またこくりと頷いた。良し、これで安心だろう。後はまぁ、労いを込めて体でも綺麗にしておいてあげようか。僕は指をパチリと鳴らし、ゴーレムの体についていた僅かな汚れを清め、風を吹かせて体に乗っていた葉っぱを散らせた。

「良し、こんなもん……ん?」

 僕は眉を顰め、周囲をぐるりと見回した。気付けば、僕は木人達に囲まれていた。最初とは違って槍は構えていないみたいだけど。それどころか、寧ろ全員が片膝を突いてこちらを見ている。

「あ、あの……どうしたの?」

 僕が問いかけると、賢者のスイが前に出て真剣な表情で僕を見た。

「誠に、ありがとうございます。神樹様とお話をして、その無聊を慰めて頂き。また、我らのことも話して頂き……心よりの感謝をお伝えします」

「や、やめてよ……別に、僕がソラと……神樹と話したのは、僕が話したかったからってだけだから。それに、ソラに寂しい思いをさせたのは僕でもある訳だしさ」

 僕が弁明するように返しても、スイは真剣な眼差しでこちらを見ることを辞めなかった。

「そして……無礼の数々をここに謝罪させて頂きます。攻撃的な言葉を発し、あまつさえ槍を向けてしまい、誠に申し訳ございませんでした」

「いや、良いってば……」

 下げた頭を上げると、スイは僕に手を差し出した。

「それでも許して下さると言うのであれば、どうかこの手を取って下さいませんか?」

 そうか。そういうことか。僕は差し出された手を迷いなく取り、それから言うべきことを言うことにした。

「勿論、許すよ。それと、僕からも……ごめん。何も知らない人間のフリなんてして、僕がズルかった。そのせいで、皆が混乱して警戒するようなことにもなったと思う……どうか、許して欲しい」

「勿論、許します」

 にやりと笑ったスイに、僕もふっと笑う。

「これからよろしくね、治。遊びに来たければ、人としてでも神としてでも、いつでも来て良いのよ」

「うん、また来るよ。ソラとも、そう約束したから」

「良かった。楽しみにしてるわ」

 掴んだ手に引き寄せられて、スイは僕に抱擁した。僕はちょっとドキドキしながらも、ただのスキンシップだと言い聞かせて、平静を装いながら表情を変えないように努力していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活

双葉 鳴
ファンタジー
俺、“飯狗頼忠(めしく よりただ)”は世間一般で【大ハズレ】と呼ばれるスキル【+1】を持つ男だ。 幸運こそ100と高いが、代わりに全てのステータスが1と、何をするにもダメダメで、ダンジョンとの相性はすこぶる悪かった。 しかし世の中には天から二物も三物ももらう存在がいる。 それが幼馴染の“漆戸慎(うるしどしん)”だ。 成績優秀、スポーツ万能、そして“ダンジョンタレント”としてクラスカースト上位に君臨する俺にとって目の上のたんこぶ。 そんな幼馴染からの誘いで俺は“宝箱を開ける係”兼“荷物持ち”として誘われ、同調圧力に屈して渋々承認する事に。 他にも【ハズレ】スキルを持つ女子3人を引き連れ、俺たちは最寄りのランクEダンジョンに。 そこで目の当たりにしたのは慎による俺TUEEEEE無双。 寄生上等の養殖で女子達は一足早くレベルアップ。 しかし俺の筋力は1でカスダメも与えられず…… パーティは俺を置いてズンズンと前に進んでしまった。 そんな俺に訪れた更なる不運。 レベルが上がって得意になった女子が踏んだトラップによる幼馴染とのパーティ断絶だった。 一切悪びれずにレベル1で荷物持ちの俺に盾になれと言った女子と折り合いがつくはずもなく、俺たちは別行動をとる事に…… 一撃もらっただけで死ぬ場所で、ビクビクしながらの行軍は悪夢のようだった。そんな中響き渡る悲鳴、先程喧嘩別れした女子がモンスターに襲われていたのだ。 俺は彼女を囮に背後からモンスターに襲いかかる! 戦闘は泥沼だったがそれでも勝利を収めた。 手にしたのはレベルアップの余韻と新たなスキル。そしてアイアンボックスと呼ばれる鉄等級の宝箱を手に入れて、俺は内心興奮を抑えきれなかった。 宝箱。それはアイテムとの出会いの場所。モンスタードロップと違い装備やアイテムが低い確率で出てくるが、同時に入手アイテムのグレードが上がるたびに設置されるトラップが凶悪になる事で有名である。 極限まで追い詰められた俺は、ここで天才的な閃きを見せた。 もしかしてこのトラップ、モンスターにも向けられるんじゃね? やってみたら案の定効果を発揮し、そして嬉しい事に俺のスキルがさらに追加効果を発揮する。 女子を囮にしながらの快進撃。 ステータスが貧弱すぎるが故に自分一人じゃ何もできない俺は、宝箱から出したアイテムで女子を買収し、囮役を引き受けてもらった。 そして迎えたボス戦で、俺たちは再び苦戦を強いられる。 何度削っても回復する無尽蔵のライフ、しかし激戦を制したのは俺たちで、命からがら抜け出したダンジョンの先で待っていたのは……複数の記者のフラッシュだった。 クラスメイトとの別れ、そして耳を疑う顛末。 俺ができるのは宝箱を開けることくらい。 けどその中に、全てを解決できる『鍵』が隠されていた。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...