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全知全能と利息
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魔族の悪意とそれに対する人間の嫌悪。それは当然の帰結であり、種全体で敵視するのも仕方の無い話だ。だけど、だからって簡単にみんなやっつけてしまうなんてのは……やりたくない。
そうして考え込んでいた僕だが、街を滅ぼす為の工場なんて言うとんでもない真実が発覚したことよりも、目先のことを考えなければならなかった。
「それで、あの……僕、どうやって言い訳したら良いかな」
「へ? 何がよ」
僕と同じように難しい顔をしていたレティシアは、首を傾げてそう返した。
「その、僕ってさっきみたいな不思議な力とか、どこから来たなんて話は秘密にしてるからさ……ここに僕が来たってことは秘密にして欲しいんだ」
「……まぁ、良いわよ。けど、ボロが出てバレたって仕方ないと思いなさい」
「うん、それは勿論」
僕が答えると、レティシアは頷いた。
「それじゃ、出るわよ」
「あ、うん。だけど……その前に、これを」
僕は言いながら、銀貨の入った巾着袋をレティシアに差し出した。
「なにこれ? あ、そういうこと」
「そう。お金、返そうと思ってさ」
レティシアは頷き、にやりと笑って巾着袋を受け取った。
「確かに、受け取ったわ」
「ありがとう。だけど、まだ利息は払い終えてないよね?」
レティシアは僕の言葉に眉を顰め、首を振った。
「利息はここで助けて貰ったことで良いわよ。ていうか、アンタもそんなこと言ってたじゃない」
「折角用意したから、受け取って貰えた方が嬉しいな」
僕がそう言うと、レティシアは少しの後に息を吐いて頷いた。
「……分かったわよ。貰えるものなら貰っておかないとね」
「そうそう。これ、なんだけどさ」
僕はそう言って、銀色の矢を三本取り出してレティシアに渡した。銀色であるということ以外は、何の変哲もなく見える矢だ。
「……どこから取り出したのよ、それ」
言いながら、銀色の矢の束を受け取るレティシア。僕は質問に答えず、にこりと微笑んでおいた。
「ふぅん。まぁ、綺麗ね……少し重いわね。特に先端に重量が偏り過ぎてる気もするけど、鏃は鋭いし……ていうか、何よこれ? 銀かと思ったら、銀でも無いわよね……」
「うん。まぁ、便利な矢だよ。ちょっと投げてみて?」
僕が言うと、レティシアは怪訝そうに眉を顰めた。
「ここで投げて何かに当たったら大変じゃない」
「いや、そんなに強く投げなくても良いよ。何なら、地面に落とすだけでも良い」
「……分かったわよ」
ぼとりと、地面に落とされた三本の矢。特に異常も無く、地面に転がったそれらを見て、レティシアは更に怪訝そうな目を僕に向けた。
「……つまり、何が言いたいのよ」
「こう、手を開いて……矢を引き寄せるイメージをして」
言われるがままに手を上向きに開いて目を閉じるレティシア。次の瞬間、地面に落ちていた筈の矢はレティシアの手の中に収められていた。
「その矢はもう、君の物だ。誰からも奪われず、君が望めば直ぐに帰って来るよ」
「ッ、そういうこと……!」
レティシアは矢を何も無い場所に軽く投げた後、手を伸ばすと、その手に矢が握られた。飛んでくる訳でも無く、一瞬にしてその手に舞い戻る。
「いつでも、どこからでも……その矢は、君の願いに応じるよ」
「へぇ……確かに、便利ね」
レティシアは戻って来た矢をしげしげと眺めながら、そう呟いた。
「例えば、撃った直後に戻そうとしたらどうなるのよ」
「えっと、運動エネルギーは保持しないね」
全知全能に聞くと返って来た答えに、レティシアは頷いた。
「それなら安心ね。まぁ、保持するならするで悪用出来そうな気もしなくは無いけれど」
にやりと笑い、銀色の矢をその手で弄ぶレティシア。確かに、エネルギーが残るなら撃った後に戻して別方向に飛ばすみたいなことも出来たりするかも知れない。
「ただ、残念ね……三本だから、大事に使わないと壊れたらショックだわ。見たところ、結構丈夫そうな感じはあるけど」
「あ、壊れないよ」
僕がレティシアの不安にそう答えると、レティシアは首を傾げた。
「ん、何がかしら?」
「だから、それ壊れないよ」
「この矢のこと?」
「その矢のこと」
レティシアはこつこつと矢を叩き、僕の方を見た。
「凄く丈夫ってことね」
「ていうか、どうやっても壊れないね」
「ん……?」
「便利だよ」
レティシアは理解が追い付いていないように固まった。確かに、便利ではあるけどそんなに驚く程かな? 別に、壊れないからと言って威力が段違いに上がるとかそんなことは無いと思うんだけど。
「……治。どこから持って来たのよ、これ」
「えっと、地球……僕の世界から」
どこからと言えば、そこだろう。家の中というか、部屋の中で創った奴だしね、これ。
「アンタ……マジでヤバいわよ。マジでヤバいからね、これ」
レティシアは三本の矢から少し顔を離して、でもやっぱりしげしげと観察を続けている。
「え、そんなにヤバい?」
「少なくとも、利子どころか私が金貨を何百枚も用意しなきゃいけない代物よ、こんなのは」
それはヤバいなぁ……僕は銀色の矢から視線を逸らし、遠い目をして出口の方を見ていた。
そうして考え込んでいた僕だが、街を滅ぼす為の工場なんて言うとんでもない真実が発覚したことよりも、目先のことを考えなければならなかった。
「それで、あの……僕、どうやって言い訳したら良いかな」
「へ? 何がよ」
僕と同じように難しい顔をしていたレティシアは、首を傾げてそう返した。
「その、僕ってさっきみたいな不思議な力とか、どこから来たなんて話は秘密にしてるからさ……ここに僕が来たってことは秘密にして欲しいんだ」
「……まぁ、良いわよ。けど、ボロが出てバレたって仕方ないと思いなさい」
「うん、それは勿論」
僕が答えると、レティシアは頷いた。
「それじゃ、出るわよ」
「あ、うん。だけど……その前に、これを」
僕は言いながら、銀貨の入った巾着袋をレティシアに差し出した。
「なにこれ? あ、そういうこと」
「そう。お金、返そうと思ってさ」
レティシアは頷き、にやりと笑って巾着袋を受け取った。
「確かに、受け取ったわ」
「ありがとう。だけど、まだ利息は払い終えてないよね?」
レティシアは僕の言葉に眉を顰め、首を振った。
「利息はここで助けて貰ったことで良いわよ。ていうか、アンタもそんなこと言ってたじゃない」
「折角用意したから、受け取って貰えた方が嬉しいな」
僕がそう言うと、レティシアは少しの後に息を吐いて頷いた。
「……分かったわよ。貰えるものなら貰っておかないとね」
「そうそう。これ、なんだけどさ」
僕はそう言って、銀色の矢を三本取り出してレティシアに渡した。銀色であるということ以外は、何の変哲もなく見える矢だ。
「……どこから取り出したのよ、それ」
言いながら、銀色の矢の束を受け取るレティシア。僕は質問に答えず、にこりと微笑んでおいた。
「ふぅん。まぁ、綺麗ね……少し重いわね。特に先端に重量が偏り過ぎてる気もするけど、鏃は鋭いし……ていうか、何よこれ? 銀かと思ったら、銀でも無いわよね……」
「うん。まぁ、便利な矢だよ。ちょっと投げてみて?」
僕が言うと、レティシアは怪訝そうに眉を顰めた。
「ここで投げて何かに当たったら大変じゃない」
「いや、そんなに強く投げなくても良いよ。何なら、地面に落とすだけでも良い」
「……分かったわよ」
ぼとりと、地面に落とされた三本の矢。特に異常も無く、地面に転がったそれらを見て、レティシアは更に怪訝そうな目を僕に向けた。
「……つまり、何が言いたいのよ」
「こう、手を開いて……矢を引き寄せるイメージをして」
言われるがままに手を上向きに開いて目を閉じるレティシア。次の瞬間、地面に落ちていた筈の矢はレティシアの手の中に収められていた。
「その矢はもう、君の物だ。誰からも奪われず、君が望めば直ぐに帰って来るよ」
「ッ、そういうこと……!」
レティシアは矢を何も無い場所に軽く投げた後、手を伸ばすと、その手に矢が握られた。飛んでくる訳でも無く、一瞬にしてその手に舞い戻る。
「いつでも、どこからでも……その矢は、君の願いに応じるよ」
「へぇ……確かに、便利ね」
レティシアは戻って来た矢をしげしげと眺めながら、そう呟いた。
「例えば、撃った直後に戻そうとしたらどうなるのよ」
「えっと、運動エネルギーは保持しないね」
全知全能に聞くと返って来た答えに、レティシアは頷いた。
「それなら安心ね。まぁ、保持するならするで悪用出来そうな気もしなくは無いけれど」
にやりと笑い、銀色の矢をその手で弄ぶレティシア。確かに、エネルギーが残るなら撃った後に戻して別方向に飛ばすみたいなことも出来たりするかも知れない。
「ただ、残念ね……三本だから、大事に使わないと壊れたらショックだわ。見たところ、結構丈夫そうな感じはあるけど」
「あ、壊れないよ」
僕がレティシアの不安にそう答えると、レティシアは首を傾げた。
「ん、何がかしら?」
「だから、それ壊れないよ」
「この矢のこと?」
「その矢のこと」
レティシアはこつこつと矢を叩き、僕の方を見た。
「凄く丈夫ってことね」
「ていうか、どうやっても壊れないね」
「ん……?」
「便利だよ」
レティシアは理解が追い付いていないように固まった。確かに、便利ではあるけどそんなに驚く程かな? 別に、壊れないからと言って威力が段違いに上がるとかそんなことは無いと思うんだけど。
「……治。どこから持って来たのよ、これ」
「えっと、地球……僕の世界から」
どこからと言えば、そこだろう。家の中というか、部屋の中で創った奴だしね、これ。
「アンタ……マジでヤバいわよ。マジでヤバいからね、これ」
レティシアは三本の矢から少し顔を離して、でもやっぱりしげしげと観察を続けている。
「え、そんなにヤバい?」
「少なくとも、利子どころか私が金貨を何百枚も用意しなきゃいけない代物よ、こんなのは」
それはヤバいなぁ……僕は銀色の矢から視線を逸らし、遠い目をして出口の方を見ていた。
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