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全知全能と案ずる者
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僕がレティシアと共に街に戻ると、何かを聞いていたのか門番の人が目を見開いて駆け寄って来た。
「レティシア殿ッ、無事だったのですね!?」
「えぇ、無事よ。色々あったけど……まぁ、何とかなったわ」
レティシアは僕の方をチラリと見たが、僕が小さく首を振ると曖昧にそう答えた。
「色々、ですか……ドリゥグ殿が探しておられたので、早めにお顔を……」
話す門番の横から男が飛び込んで来た。使い古された革鎧に、それ越しでも伝わって来るような筋肉、そしてスカーフェイス。見るだけですくみ上ってしまうような男が、血気迫る表情で詰め寄って来ていた。
「レティシアッ、お前どこ行ってたんだよッ!?」
「森の中の洞窟よ。例の、魔物が出てたって言う」
猛烈な勢いで肩を掴まれたレティシアは、うんざりしたような顔で視線を逸らしながらがくがくと身体を揺らされていた。
「ていうか、痛い。痛いわよ! 深い傷はまだ治ってないんだから……!」
「えっ、深い傷……?」
思わず反芻した僕だったが、考えてみれば当たり前のことだった。レティシアはあの魔族に負けかけていたんだ。というか、殺されかけていた。既に殆ど動けなくなるくらいには。
寧ろ、こうやって今も簡単に動けていることの方が不思議なくらいである。やっぱり、闘気の力とかだろうか。
「まぁ、深い傷って言ってもちょっと抉れてるってくらいよ。今日中に治せば傷も残らないわ」
「……すまねぇな。まさか、そこまでの傷を負ってるとは思ってなくてよ」
「アンタに言ってないわよ」
素気無く返された男は硬直し、レティシアは溜息を吐いた。
「だけど、ダナウ……これから、アンタも忙しくなるわよ」
「そいつぁ、どういうことだ?」
「詳しくは向こうで話すわ。ティーシさん、ピルムさんをギルドに呼んでくれないからしら? 悪いけど、一々伺ってる時間も無いかも知れないの」
「ッ、分かりました! お伝えさせて頂きます!」
男に意味深に言葉を伝えた後、門番にも誰かを呼ぶように言ったレティシアは、さっさと僕の分の入門料を払って街の中に入って行った。僕もそれに付いて行き、コメツキバッタのようにぺこぺこと頭を下げると、レティシアはふふっと笑って良いのよと柔らかく言った。
「おい、レティシア……お前、そこのガキに絆され過ぎてねぇか?」
「別に?」
「いや、今みたいな笑い方してんの見たことねぇぞ」
「見たことないは嘘でしょう」
呆れたような心配するような顔をする男……ダナウさんは、僕の方に視線を向けた。
「お前、どうやったんだ……? 確かにこいつは世話焼きじゃああるが、意外と堅物っちゃ堅物だと思ってたんだが……」
「い、いや、どうもこうも無いですけど……」
「無いこたぁねぇだろ……」
ねぇこたぁ無いけどなぁ……いや、あるか。一応、命を救いはしたしね。
「素直で純粋な子だったからよ。アンタみたいに擦り切れてんのとは訳が違うの」
「アンタもその類いだと思ってたのに、あんな優しそうに笑ってたから俺はビビってんだがな」
「うっさいわね……私がどんな顔してようと別に良いでしょ」
レティシアは僅かに顔を赤くして、視線を逸らした。
「……まぁ、無事なら何でも良いけどな。他の奴らも心配してたぜ? 俺は一足先に出たが、ドリゥグの奴が焚きつけた奴らも救出に行こうとしてたぜ?」
「へぇ……心配かけて悪かったわね。ありがと」
「やけに素直だな、おい」
「ッ、別に前からこんなもんよ!」
レティシアはそう叫ぶと、何故か僕を少し睨み付けた。
「それに、そこの治が一番来るのが早かったんだから」
「なッ、そうなのか?」
黙ってたら何も気付かれなかったかも知れないのに……
「そうよ。門の前でうじうじしてたアンタとは違うのよ」
「うじうじしてねぇよッ! 丁度出るところだったんだよ俺はッ!」
「声がデカいわよ、耳が痛くなるでしょう。ね、治」
急に振られた僕は怖すぎるダナウさんの顔にビビりつつ答えた。
「え、いや、僕は大丈夫です、けど……?」
「こいつが一番うじうじしてんじゃねえかよ。おい、ハキハキ喋ったらどうだ」
「ちょっと、虐めてんじゃないわよ」
「保護者かよテメェは!?」
またデカい声を上げたダナウさんは、溜息を吐いた後に僕の方を見た。顔が怖いね。
「まだ輝石級だよな? もう、森の奥まで入れるくらいに強くなったのか」
「違うわよ。輝石級だけど、元から強いのよ治は。冒険者としての知識は全然なかったみたいだけどね」
「あはは、全然っすけどねぇ……」
「んだよその謙遜は……ま、前に言ってた通り俺くらいの実力があるなら森を超えられる程度は当然だがな」
「ふふっ、同じどころか超えられるかも知れないわよ?」
「何だと……?」
ちょっと、レティシア煽らないでっ! 君が煽るとこっちが睨まれるんだから! 怖い、顔怖いよダナウさん!
「レティシア殿ッ、無事だったのですね!?」
「えぇ、無事よ。色々あったけど……まぁ、何とかなったわ」
レティシアは僕の方をチラリと見たが、僕が小さく首を振ると曖昧にそう答えた。
「色々、ですか……ドリゥグ殿が探しておられたので、早めにお顔を……」
話す門番の横から男が飛び込んで来た。使い古された革鎧に、それ越しでも伝わって来るような筋肉、そしてスカーフェイス。見るだけですくみ上ってしまうような男が、血気迫る表情で詰め寄って来ていた。
「レティシアッ、お前どこ行ってたんだよッ!?」
「森の中の洞窟よ。例の、魔物が出てたって言う」
猛烈な勢いで肩を掴まれたレティシアは、うんざりしたような顔で視線を逸らしながらがくがくと身体を揺らされていた。
「ていうか、痛い。痛いわよ! 深い傷はまだ治ってないんだから……!」
「えっ、深い傷……?」
思わず反芻した僕だったが、考えてみれば当たり前のことだった。レティシアはあの魔族に負けかけていたんだ。というか、殺されかけていた。既に殆ど動けなくなるくらいには。
寧ろ、こうやって今も簡単に動けていることの方が不思議なくらいである。やっぱり、闘気の力とかだろうか。
「まぁ、深い傷って言ってもちょっと抉れてるってくらいよ。今日中に治せば傷も残らないわ」
「……すまねぇな。まさか、そこまでの傷を負ってるとは思ってなくてよ」
「アンタに言ってないわよ」
素気無く返された男は硬直し、レティシアは溜息を吐いた。
「だけど、ダナウ……これから、アンタも忙しくなるわよ」
「そいつぁ、どういうことだ?」
「詳しくは向こうで話すわ。ティーシさん、ピルムさんをギルドに呼んでくれないからしら? 悪いけど、一々伺ってる時間も無いかも知れないの」
「ッ、分かりました! お伝えさせて頂きます!」
男に意味深に言葉を伝えた後、門番にも誰かを呼ぶように言ったレティシアは、さっさと僕の分の入門料を払って街の中に入って行った。僕もそれに付いて行き、コメツキバッタのようにぺこぺこと頭を下げると、レティシアはふふっと笑って良いのよと柔らかく言った。
「おい、レティシア……お前、そこのガキに絆され過ぎてねぇか?」
「別に?」
「いや、今みたいな笑い方してんの見たことねぇぞ」
「見たことないは嘘でしょう」
呆れたような心配するような顔をする男……ダナウさんは、僕の方に視線を向けた。
「お前、どうやったんだ……? 確かにこいつは世話焼きじゃああるが、意外と堅物っちゃ堅物だと思ってたんだが……」
「い、いや、どうもこうも無いですけど……」
「無いこたぁねぇだろ……」
ねぇこたぁ無いけどなぁ……いや、あるか。一応、命を救いはしたしね。
「素直で純粋な子だったからよ。アンタみたいに擦り切れてんのとは訳が違うの」
「アンタもその類いだと思ってたのに、あんな優しそうに笑ってたから俺はビビってんだがな」
「うっさいわね……私がどんな顔してようと別に良いでしょ」
レティシアは僅かに顔を赤くして、視線を逸らした。
「……まぁ、無事なら何でも良いけどな。他の奴らも心配してたぜ? 俺は一足先に出たが、ドリゥグの奴が焚きつけた奴らも救出に行こうとしてたぜ?」
「へぇ……心配かけて悪かったわね。ありがと」
「やけに素直だな、おい」
「ッ、別に前からこんなもんよ!」
レティシアはそう叫ぶと、何故か僕を少し睨み付けた。
「それに、そこの治が一番来るのが早かったんだから」
「なッ、そうなのか?」
黙ってたら何も気付かれなかったかも知れないのに……
「そうよ。門の前でうじうじしてたアンタとは違うのよ」
「うじうじしてねぇよッ! 丁度出るところだったんだよ俺はッ!」
「声がデカいわよ、耳が痛くなるでしょう。ね、治」
急に振られた僕は怖すぎるダナウさんの顔にビビりつつ答えた。
「え、いや、僕は大丈夫です、けど……?」
「こいつが一番うじうじしてんじゃねえかよ。おい、ハキハキ喋ったらどうだ」
「ちょっと、虐めてんじゃないわよ」
「保護者かよテメェは!?」
またデカい声を上げたダナウさんは、溜息を吐いた後に僕の方を見た。顔が怖いね。
「まだ輝石級だよな? もう、森の奥まで入れるくらいに強くなったのか」
「違うわよ。輝石級だけど、元から強いのよ治は。冒険者としての知識は全然なかったみたいだけどね」
「あはは、全然っすけどねぇ……」
「んだよその謙遜は……ま、前に言ってた通り俺くらいの実力があるなら森を超えられる程度は当然だがな」
「ふふっ、同じどころか超えられるかも知れないわよ?」
「何だと……?」
ちょっと、レティシア煽らないでっ! 君が煽るとこっちが睨まれるんだから! 怖い、顔怖いよダナウさん!
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