ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と共有

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 ギルドに着いてからはごたごただった。既に噂になり始めてたのか、冒険者達はレティシアを見ただけで声を上げ、ギルドの偉い人……支部長のドリゥグさんと言うらしいあの男の人も、レティシアを見て安堵の息を漏らしていた。
 だが、そこからが大変でレティシアはギルド支部長のドリゥグさんや重役っぽい人達と施設の奥で話し込み、レティシアさんと共に街に帰って来ていた僕は周りの人達及びパーティの仲間から質問責めにあっていた。

「だから、僕は森の途中で合流しただけだって! 洞窟の中のことは何も知らないから!」

「本当かぁ? 何か知ってんじゃねえだろうなぁ?」

「知らないってば……」

「酒奢るから話せよォ」

 僕は溜息を吐き、机に突っ伏した。

「僕は酒は飲まないんだ。未成年だからね」

 こっちの基準だと成人っぽいけど、そんなことは知らぬ。

「ちょっとアンタら、何してんのよ」

「お、帰って来たかレティシア! 洞窟で何があったのか……」

 ドリゥグさんと一緒に出て来たレティシア。そこに早速声を掛けに行く冒険者の男が、ドリゥグさんの手で制される。

「全員、集合だ」

 皺と傷の刻まれた険しい顔が、ギルド内を睨み付けていた。五十代くらいに見えるドリゥグさんは、ダナウさんとはまた違う圧がある。

「冒険者を集合させろ、可能な限り速くだ。お前らもパーティの仲間が居るなら呼んで来い。一時間後に話を始める」

「何だよそれ、先に教えといてくれよ?」

「混乱を避ける為に今は伝えられない。だが、最大級に重要な話だ」

 ドリゥグさんがそう宣言すると、ギルド内がざわめき出した。そんな中、僕の隣に寄って来たウィーが机にもたれていた僕の腕をぷいぷいと突く。

「なぁなぁ、治」

「どうしたの?」

「何があったのか、お前は知ってんじゃねえのか? オレにだけ教えてくれよ、コッソリさ」

「……まぁ、確かにパーティメンバーではあるしね」

 教えても良いか。僕は騒ぎに乗じてウィーとアシラを連れ、ギルドを出た。

「治」

 ところで、ナーシャに見つかった。

「アシラ、ウィーも……私抜きで、何してたの?」

 圧のある視線が僕らを射抜いた。僕がさっとアシラの後ろに隠れると、呆れたような溜息をアシラは漏らした。

「治が人探しをしてるって言うからね。ウィーなら知ってるだろうってことで合流して、それから色々あって……今は少し、大事になっているところだよ」

「大事?」

 想像していなかったであろう言葉に、ナーシャの目が少し丸くなった。

「そうだ。そして、その理由を今から治から聞こうって所だね」

「……聞かせて貰う」

 薄く青みがかった灰色の目が僕をじっと見た。

「うん、ちょっとここら辺は出入りが激しくなりそうだから……」

「んじゃ、こっち行こうぜ。人居ねえし、見られねぇから」

 ウィーに連れられて人気の無い路地裏に来た僕は、触れたら汚れそうな壁に体を当てないように立ちながら説明を始めた。

「簡単に言うと……ヤバい施設が見つかったんだよ。僕は見てないけど、レティシア曰く」

「ヤバい施設だぁ? 何だよそれ、森の奥に態々拵えて何の施設だ?」

「魔物の生産施設だ。いや、変換施設……改造工場と言った方が良いかな」

「……何だい、それは」

 さっきまでは穏やかな顔をしていたアシラが、冷たくなった目で僕を見ていた。

「周辺の魔物を引き寄せて、改造し、強化してこの街へと侵攻する命令を与える……そういう、施設だった」

「ッ、誰がそんなことを……いや」

「あぁ、そんなことする奴らなんざ一択だろうぜ」

 僕たちの言葉を聞いたナーシャが、暗い目で呟く。

「……魔族」

 僕は、静かに頷いた。それを見た皆の目に宿る憎悪の感情に、僕は魔族と人類の間にある大きな溝を感じた。

「施設に居たのは、魔族だった。レティシアはそれと戦って……辛くも、勝利した」

 僕はサラッと作り上げたシナリオを口にしたが、疑う目は無かった。実際、僕が助けたなんて言うよりも、よっぽど信憑性のある話だろう。

「そうして施設を調べ、情報を持ち帰ろうと森を歩く中で……探しに来た僕と出会ったって訳だ」

 街を出た時間的に、洞窟の中で出会ったって言うと少し不自然かと思って森の中で会ったことにした。

「魔物を追い払いつつ森を走り抜けて、街に辿り着いて……今に至るって感じかな」

「それで、ドリゥグのおっさんがあんなにクソ真面目な顔してたのか……」

「……それに、他にも同じような施設がある可能性もある訳だからね。多分、これからされる話は似たような施設が無いかどうか探る為の調査依頼ってところかな。知見がある人は直接施設の方に行って色々調べることになると思う」

 僕がそう語り終えると、ナーシャが物言いたげにじっとこちらを見ていた。

「どんな、魔族だった?」

 それに気付いた僕が目が合わせた瞬間、ナーシャはそう問いかけて来た。

「え? どんなって……ごめん、僕は見てないから分からない」

「そう……」

 ナーシャは小さく息を吐き、視線を逸らした。僕はその態度に不自然さを感じつつも、問い詰めるようなことはしなかった。嘘を吐いた分際で、聞き出すなんて出来ない。

「それで、治……魔術について、ちょっと話があるんだけど」

「あ、ごめん。僕、そろそろ用事があって……また今度で」

「えっ」

 もうそろそろ、帰らないと晩御飯の時間だからね。残念だけど、またの機会で。
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