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全知全能と模擬戦
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紅茶を楽しんだ僕たちは、遂に安堂さんとユモンとの模擬戦を迎えることとなった。屋敷の地下にある空間に案内された僕は、ちょっと緊張を覚え始めていた。
「いやぁ、なんか緊張して来たね」
「何でお前が緊張してんだよ。するならオレ様だろうが」
「……逆に緊張してないの?」
「する訳ねぇだろ……命も掛かってねぇのによ」
た、確かに……命をかけて戦うのが当たり前な人にとっては、こんな模擬戦じゃ緊張もしないのか。
「私は少しだけ緊張しておりますが……命はかかっておりませんが、面子は少しかかっておりますので」
「あぁ、そうか。オレ様には命より大事な面子は特にねェからな」
命とは別に大事なものがかかってる人も居た……。
「取り敢えず、ここに立っときゃ良いんだな?」
「えぇ、そちらに」
空間の中心で向かい合うように立つ二人を見て、紫苑ちゃんはにやりと笑う。
「ふふ、ここでこそ紅茶が欲しかったわね」
「ご用意しましょうか」
「良いのよ。貴方も見ていなさい」
「承知致しました」
紫苑ちゃんの斜め後ろに控えた朝熊さん。この部屋には椅子が一つしか無かったので、僕はちょっと離れた場所で壁にもたれ掛かって立っている。
「……っと、これで良いわね」
紫苑ちゃんが指先をすらりと伸ばすと、二人の立つ場所を囲むように黒色の結界が展開された。
「さ、いつでも良いわよ。準備は出来てるかしら?」
紫苑ちゃんに視線を向けられると、二人は迷うことなく頷いた。
「応、いつでも良いぜェ」
「えぇ、いつでも構いません」
二人の言葉に紫苑ちゃんは笑みを浮かべて頷き、片腕を真っ直ぐ上に伸ばした。
「じゃあ、行くわよ……始めっ!」
腕が振り下ろされる。それと同時に、動き出した安堂さんは懐から数本の小瓶のような物を引き抜いた。小瓶の中に詰まっているのは僅かに青みを帯びた流動性のある金属……恐らく、水銀のようなものだ。
「紋章、展開」
それは、独りでに小瓶から飛び出すと、安堂さんの服の内側に流れて行った。体のあちこちに向かって行ったそれは、魔力を見ると胸や腕、足や脛などの必要な場所で紋章状に纏われていることが分かった。全身に繋がった金属の紋章は、安堂さんの身体能力を引き上げ、そして魔力の流れ自体を極めて高速化させているようだった。
「……ステゴロだ」
そのまま小瓶を地面に投げて、流麗な動作で拳を構えた安堂さんに僕は呟いた。ユモンは拳を構えた安堂さんににやりと笑うと、自分も拳を構えて顎を引き、安堂さんと目を合わせる。
「良いじゃねぇか。嫌いじゃないぜェ、そういうのもなぁ」
「ほう、そうですか……それは重畳」
安堂さんが踏み込んだ。空気を切り裂きながら金属の紋章を纏った拳が真っ直ぐに突き出される。その拳は、僕の目ですら捉えることは出来なかった。
「ほぉ」
ユモンが笑みを深める。そして、振り抜かれた拳をその手で往なすようにして避けた。だが、そうなることを予見していたかのように安堂さんは殴り抜ける勢いを利用して上体を低くしながら横に抜けて、即座に次の拳を打ち出した。
「悪くねぇな」
しかし、神速の二度目の打撃をユモンはその手で受け止めていた。
「なッ……!?」
「舐めねェ方が良いぜ。ああイヤ、正確に言うなら……気ィ遣ってんじゃねえよ」
ユモンが安堂さんの手をギュッと握り潰そうとするが、安堂さんの手に纏われた金属の紋章がユモンの手を滑らせ、掴まれていた安堂さんの拳がするりと抜ける。
「ならば、遠慮なく……」
安堂さんがその足をユモンへと振り上げる。鋭く伸びるそれは鎌の様に見えた。
「へへッ、怖ぇな」
いや、それは本当に鎌だった。流れる金属が安堂さんの足で刃となっていた。だが、ユモンはそれを顔を逸らすだけで避け……次に迫る拳も一歩下がるだけで避けた。
「これは……どうやら、土台からモノが違うようですな」
「だったら、諦めるかぁ?」
挑発するように笑いながら言うユモンの言葉に、安堂さんは目を細め、懐から小瓶をもう一本取り出して……その中身を、飲み干した。
「紋章、過速」
瞬間、安堂さんの魔力の動きが更に高まり、その出力が大きく向上した。目が青みがかった光を帯び、雰囲気が変化する。
「し、紫苑ちゃん……これ、安全なの?」
「まぁ、私が居れば安全よ……一応ね」
紫苑ちゃんは溜息を吐き、首を振った。その後ろで朝熊さんも険しい表情をしていた。
「こっちを使うなら、あのスタイルで行けばよかったのに……ま、良いわ」
紫苑ちゃんは拳を構え直した安堂さんの方を見た。
「勝ちなさいよ」
「勿論」
ユモンを見据えたまま短く返した安堂さんは、地面を蹴りつけると稲妻の如く鋭く踏み込んだ。
「いやぁ、なんか緊張して来たね」
「何でお前が緊張してんだよ。するならオレ様だろうが」
「……逆に緊張してないの?」
「する訳ねぇだろ……命も掛かってねぇのによ」
た、確かに……命をかけて戦うのが当たり前な人にとっては、こんな模擬戦じゃ緊張もしないのか。
「私は少しだけ緊張しておりますが……命はかかっておりませんが、面子は少しかかっておりますので」
「あぁ、そうか。オレ様には命より大事な面子は特にねェからな」
命とは別に大事なものがかかってる人も居た……。
「取り敢えず、ここに立っときゃ良いんだな?」
「えぇ、そちらに」
空間の中心で向かい合うように立つ二人を見て、紫苑ちゃんはにやりと笑う。
「ふふ、ここでこそ紅茶が欲しかったわね」
「ご用意しましょうか」
「良いのよ。貴方も見ていなさい」
「承知致しました」
紫苑ちゃんの斜め後ろに控えた朝熊さん。この部屋には椅子が一つしか無かったので、僕はちょっと離れた場所で壁にもたれ掛かって立っている。
「……っと、これで良いわね」
紫苑ちゃんが指先をすらりと伸ばすと、二人の立つ場所を囲むように黒色の結界が展開された。
「さ、いつでも良いわよ。準備は出来てるかしら?」
紫苑ちゃんに視線を向けられると、二人は迷うことなく頷いた。
「応、いつでも良いぜェ」
「えぇ、いつでも構いません」
二人の言葉に紫苑ちゃんは笑みを浮かべて頷き、片腕を真っ直ぐ上に伸ばした。
「じゃあ、行くわよ……始めっ!」
腕が振り下ろされる。それと同時に、動き出した安堂さんは懐から数本の小瓶のような物を引き抜いた。小瓶の中に詰まっているのは僅かに青みを帯びた流動性のある金属……恐らく、水銀のようなものだ。
「紋章、展開」
それは、独りでに小瓶から飛び出すと、安堂さんの服の内側に流れて行った。体のあちこちに向かって行ったそれは、魔力を見ると胸や腕、足や脛などの必要な場所で紋章状に纏われていることが分かった。全身に繋がった金属の紋章は、安堂さんの身体能力を引き上げ、そして魔力の流れ自体を極めて高速化させているようだった。
「……ステゴロだ」
そのまま小瓶を地面に投げて、流麗な動作で拳を構えた安堂さんに僕は呟いた。ユモンは拳を構えた安堂さんににやりと笑うと、自分も拳を構えて顎を引き、安堂さんと目を合わせる。
「良いじゃねぇか。嫌いじゃないぜェ、そういうのもなぁ」
「ほう、そうですか……それは重畳」
安堂さんが踏み込んだ。空気を切り裂きながら金属の紋章を纏った拳が真っ直ぐに突き出される。その拳は、僕の目ですら捉えることは出来なかった。
「ほぉ」
ユモンが笑みを深める。そして、振り抜かれた拳をその手で往なすようにして避けた。だが、そうなることを予見していたかのように安堂さんは殴り抜ける勢いを利用して上体を低くしながら横に抜けて、即座に次の拳を打ち出した。
「悪くねぇな」
しかし、神速の二度目の打撃をユモンはその手で受け止めていた。
「なッ……!?」
「舐めねェ方が良いぜ。ああイヤ、正確に言うなら……気ィ遣ってんじゃねえよ」
ユモンが安堂さんの手をギュッと握り潰そうとするが、安堂さんの手に纏われた金属の紋章がユモンの手を滑らせ、掴まれていた安堂さんの拳がするりと抜ける。
「ならば、遠慮なく……」
安堂さんがその足をユモンへと振り上げる。鋭く伸びるそれは鎌の様に見えた。
「へへッ、怖ぇな」
いや、それは本当に鎌だった。流れる金属が安堂さんの足で刃となっていた。だが、ユモンはそれを顔を逸らすだけで避け……次に迫る拳も一歩下がるだけで避けた。
「これは……どうやら、土台からモノが違うようですな」
「だったら、諦めるかぁ?」
挑発するように笑いながら言うユモンの言葉に、安堂さんは目を細め、懐から小瓶をもう一本取り出して……その中身を、飲み干した。
「紋章、過速」
瞬間、安堂さんの魔力の動きが更に高まり、その出力が大きく向上した。目が青みがかった光を帯び、雰囲気が変化する。
「し、紫苑ちゃん……これ、安全なの?」
「まぁ、私が居れば安全よ……一応ね」
紫苑ちゃんは溜息を吐き、首を振った。その後ろで朝熊さんも険しい表情をしていた。
「こっちを使うなら、あのスタイルで行けばよかったのに……ま、良いわ」
紫苑ちゃんは拳を構え直した安堂さんの方を見た。
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「勿論」
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