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全知全能と琥珀の中の魂
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逃走を始めた仮面の者達。だが、茜はその背に炎の鞭を伸ばして貫いていく。炎熱と電撃が臓器を焼けば、生き残ることは決して出来ない。
「逃がす訳ねぇだろ。私らの情報を持ち帰らせはしねぇよ」
一人、二人。背を貫かれて地面に倒れ伏す。しかし、茜一人でバラバラに逃げて行く仮面の者達の全てを追い切れはしない。
「行けそうだな。じゃ、オレ様は取り逃がしそうな奴を追って来るから、頼んだぜェ」
「おう、頼むぜ」
ユモンはそう伝えると、その場から瞬く間に姿を消した。
♢
ビルの隙間に飛び込んで、階段に繋がる裏口の扉を魔術で開錠して入り込んだ仮面の一人は、即座に仮面を外して懐にしまい込んだ。上着を裏返して着直し、素知らぬ顔をしてその階段を上って行こうとする。
「よっ」
「ッ!?」
その肩に手を置いた男に、階段を登ろうとした男は振り返る。さっきの男だ。にやりと余裕に満ちた笑みで、こちらを見ている。
「もしかして、ここに住んでるのか? ここいらは殆ど人が住んでねぇって聞いてたんだが……どこの、何階に住んでんのか、教えてくれよ」
「な、な……そ、な……!」
動揺と焦燥、隠すことも出来ず、懐に震える手を伸ばす男だったが……それよりも先に、ユモンの手が男の胸に触れていた。
「もう少し脅かしてやりたいところだが……後がつっかえてるんでな」
「ぐ、ゥ……!?」
ユモンの手が琥珀色に透き通り、それが男の胸の中へと、水に沈むように入り込んで行った。瞬間、男は苦悶の声を上げて一切の動きを止める。
「貰って行くぜ」
「ァ」
引き抜かれた琥珀色の手。その中に握り締められたものを、ユモンは躊躇なく呑み込んだ。地面にばたりと倒れ込んでいる男を気にすることも無く、ユモンは悪魔のような深い笑みを浮かべる。
「あァ……最高だぜ。やっぱり、久し振りの魂は格別だ」
暫く放心したように、深く味わっているように上を向いていたユモンだったが、ふぅと小さく息を吐くと視線を死体と化した男に向けた。
「襲って来てくれて、どうもありがとうなァ。お陰で、美味かったぜ」
おっと、とユモンは声を上げて男の前で手を合わせた。
「ごちそうさま、の方がこっちだと合ってるか」
ユモンは踵を返し、男の死体に背を向けて去った。
♢
それからも次々に、ユモンは逃げ延びた者達を刈り取って行った。そして、その様子を観測していた男が一人居た。離れたビルの屋上から双眼鏡型の魔道具を手に、小さな笑みを浮かべながらそれを観察している。
「……雷撃の走る炎の鞭を操る女に、高度な転移能力に触れるだけで敵を即死させる男……中々に、奇妙だ。だが、面白いぞ……手に入れられれば、尚面白い」
男は屋上の縁から体を離し、双眼鏡を目元から外した。
「とは言え、骨は折れそうだ。特に、あの男は……まだまだ得体が知れないか。捨て駒にするには僅かに惜しい連中だったが、奴らでこの程度しか実力を図れないなら、ケチって雑魚を送らずに正解だったというところか」
男は双眼鏡を懐に仕舞って、屋上の扉を開けようと手をかける。
「……なに?」
浮かんでいた小さい笑みが消えて、男は眉を顰める。扉が開かない。鍵は閉めていない筈だ。どうせ、誰も来やしない屋上……なら、誰が? 態々、このタイミングでビルの管理人でも来て鍵を閉められでもしたか?
「まぁ、良い……」
開錠の魔術、その程度も使えない魔術士ではない。特に、自分は闇の側の魔術士なのだ。暗い用途の魔術ならば一通りは使えるというもの。
「なっ……!?」
魔術が鍵穴を通り抜けていったが、その効果は発揮されなかった。何かに阻害されたように、対抗されたように、効果は無かった。
「よっ」
直後、背後からの声と共に自分の肩に手が置かれていた。
「どう、やって……!」
震えを堪えた男が、乱暴に振り返って腕を振るった。そこに立っていた時代錯誤な服を着た男は腕を避けると、にやりと楽し気に笑う。
「どうもこうも、ねぇよ」
一歩距離を詰めて、じっと男の目を見る……悪魔は、男の体から冷や汗を噴き出させるには十分な威圧感を放っていた。
「お前がオレ様のことをじーっとずーっと見てっから、こうやって来てやったんだろ? なァ、用があるなら言えよ。見てたんなら、用があんだよなァ」
「……ッ!」
悪魔は再び、男の肩に手を置いた。
「なァ、黙ってねェで答えろよ。先ずは、用件を言ってみろ。あ、けど嘘吐いたら直ぐ殺すぜ」
「…………お前を、俺は、お前を雇いたい。と、思う。思っている。どうだ? 金なら、十分にあるぞ。ウチは」
「ほォ? 取り敢えず、嘘は言ってないみたいだな」
「も、勿論だ。お前くらいの実力なら、上だって青天井で雇う筈だ。話は俺が死んでも付ける。支配者の立場だって、狙えるレベルだろう、お前が居れば。その筈だ」
男の言葉に、悪魔はこくこくと興味を持ったように頷いている。
「どうだ、来てみないか!? お前は人を殺すことにも抵抗は無いだろう! うちなら、お前の才能を最大限に活かせるぞ!? 金も出るッ、女も何もかも、殺せば殺す程に思い通りだッ!!」
男が言うと、悪魔は溜息を吐いて首を振った。
「あー、残念だが条件に合ってないな。オレ様、人殺しは出来ないんだよ。正当防衛以外は」
「な、なにを……」
当惑する男の胸に、琥珀色に透き通った悪魔の手が沈んでいた。
「ま、後の所は魂に聞くわ。誘ってくれて、ありがとなァ」
「ァ」
琥珀色の手が、引き抜かれる。バタリと男がその場に倒れると、その手に握られたものを悪魔は躊躇いなく口の中に放り込んだ。
「逃がす訳ねぇだろ。私らの情報を持ち帰らせはしねぇよ」
一人、二人。背を貫かれて地面に倒れ伏す。しかし、茜一人でバラバラに逃げて行く仮面の者達の全てを追い切れはしない。
「行けそうだな。じゃ、オレ様は取り逃がしそうな奴を追って来るから、頼んだぜェ」
「おう、頼むぜ」
ユモンはそう伝えると、その場から瞬く間に姿を消した。
♢
ビルの隙間に飛び込んで、階段に繋がる裏口の扉を魔術で開錠して入り込んだ仮面の一人は、即座に仮面を外して懐にしまい込んだ。上着を裏返して着直し、素知らぬ顔をしてその階段を上って行こうとする。
「よっ」
「ッ!?」
その肩に手を置いた男に、階段を登ろうとした男は振り返る。さっきの男だ。にやりと余裕に満ちた笑みで、こちらを見ている。
「もしかして、ここに住んでるのか? ここいらは殆ど人が住んでねぇって聞いてたんだが……どこの、何階に住んでんのか、教えてくれよ」
「な、な……そ、な……!」
動揺と焦燥、隠すことも出来ず、懐に震える手を伸ばす男だったが……それよりも先に、ユモンの手が男の胸に触れていた。
「もう少し脅かしてやりたいところだが……後がつっかえてるんでな」
「ぐ、ゥ……!?」
ユモンの手が琥珀色に透き通り、それが男の胸の中へと、水に沈むように入り込んで行った。瞬間、男は苦悶の声を上げて一切の動きを止める。
「貰って行くぜ」
「ァ」
引き抜かれた琥珀色の手。その中に握り締められたものを、ユモンは躊躇なく呑み込んだ。地面にばたりと倒れ込んでいる男を気にすることも無く、ユモンは悪魔のような深い笑みを浮かべる。
「あァ……最高だぜ。やっぱり、久し振りの魂は格別だ」
暫く放心したように、深く味わっているように上を向いていたユモンだったが、ふぅと小さく息を吐くと視線を死体と化した男に向けた。
「襲って来てくれて、どうもありがとうなァ。お陰で、美味かったぜ」
おっと、とユモンは声を上げて男の前で手を合わせた。
「ごちそうさま、の方がこっちだと合ってるか」
ユモンは踵を返し、男の死体に背を向けて去った。
♢
それからも次々に、ユモンは逃げ延びた者達を刈り取って行った。そして、その様子を観測していた男が一人居た。離れたビルの屋上から双眼鏡型の魔道具を手に、小さな笑みを浮かべながらそれを観察している。
「……雷撃の走る炎の鞭を操る女に、高度な転移能力に触れるだけで敵を即死させる男……中々に、奇妙だ。だが、面白いぞ……手に入れられれば、尚面白い」
男は屋上の縁から体を離し、双眼鏡を目元から外した。
「とは言え、骨は折れそうだ。特に、あの男は……まだまだ得体が知れないか。捨て駒にするには僅かに惜しい連中だったが、奴らでこの程度しか実力を図れないなら、ケチって雑魚を送らずに正解だったというところか」
男は双眼鏡を懐に仕舞って、屋上の扉を開けようと手をかける。
「……なに?」
浮かんでいた小さい笑みが消えて、男は眉を顰める。扉が開かない。鍵は閉めていない筈だ。どうせ、誰も来やしない屋上……なら、誰が? 態々、このタイミングでビルの管理人でも来て鍵を閉められでもしたか?
「まぁ、良い……」
開錠の魔術、その程度も使えない魔術士ではない。特に、自分は闇の側の魔術士なのだ。暗い用途の魔術ならば一通りは使えるというもの。
「なっ……!?」
魔術が鍵穴を通り抜けていったが、その効果は発揮されなかった。何かに阻害されたように、対抗されたように、効果は無かった。
「よっ」
直後、背後からの声と共に自分の肩に手が置かれていた。
「どう、やって……!」
震えを堪えた男が、乱暴に振り返って腕を振るった。そこに立っていた時代錯誤な服を着た男は腕を避けると、にやりと楽し気に笑う。
「どうもこうも、ねぇよ」
一歩距離を詰めて、じっと男の目を見る……悪魔は、男の体から冷や汗を噴き出させるには十分な威圧感を放っていた。
「お前がオレ様のことをじーっとずーっと見てっから、こうやって来てやったんだろ? なァ、用があるなら言えよ。見てたんなら、用があんだよなァ」
「……ッ!」
悪魔は再び、男の肩に手を置いた。
「なァ、黙ってねェで答えろよ。先ずは、用件を言ってみろ。あ、けど嘘吐いたら直ぐ殺すぜ」
「…………お前を、俺は、お前を雇いたい。と、思う。思っている。どうだ? 金なら、十分にあるぞ。ウチは」
「ほォ? 取り敢えず、嘘は言ってないみたいだな」
「も、勿論だ。お前くらいの実力なら、上だって青天井で雇う筈だ。話は俺が死んでも付ける。支配者の立場だって、狙えるレベルだろう、お前が居れば。その筈だ」
男の言葉に、悪魔はこくこくと興味を持ったように頷いている。
「どうだ、来てみないか!? お前は人を殺すことにも抵抗は無いだろう! うちなら、お前の才能を最大限に活かせるぞ!? 金も出るッ、女も何もかも、殺せば殺す程に思い通りだッ!!」
男が言うと、悪魔は溜息を吐いて首を振った。
「あー、残念だが条件に合ってないな。オレ様、人殺しは出来ないんだよ。正当防衛以外は」
「な、なにを……」
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「ま、後の所は魂に聞くわ。誘ってくれて、ありがとなァ」
「ァ」
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