7 / 162
#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 01-07
しおりを挟む
「うーん。みんな元気だなぁ」
「その元気に火を点けたのは誰よ!?」
「いやぁ、ついね。火災報知機のボタンとか押したくなる時あるじゃん?」
「押したくなるだけにしてよ! 良識の範疇で思いとどまろうよ!?」
辰巳にジト目を向けながら、両耳に手を当てて塞ぐ風葉。もちろんその頬は真っ赤だ。
「はっは、ゴメンよ」
笑いつつ、辰巳は風葉の手と耳を観察する。
今、風葉が押さえている耳は人間の方だけだ。犬耳の方も騒音を避けるようペタリと垂れ下がってはいるが、先端は元の耳を塞ぐ風葉の指先を突き抜けている。
どうやら、憑依の度合いはまだまだ低いようだ。
「まぁ、そんなのはどうでもいいとしてだ。銀髪と犬耳に関して心配することはないよ」
「ちょっ、どうでもいいって事は……って、えっ?」
目が点になる風葉に、辰巳は更なる断言を重ねる。
「色々と準備が要るから今すぐってワケにはいかないが、それくらいなら簡単に戻るはずさ」
「そう、なんだ。それは、よかった、けど」
安心半分、びっくり半分な表情を浮かべながら、風葉はまじまじと辰巳を見つめる。
「なんで、そんなに詳しいの?」
「さて、その辺を聞かれると返答に困るんだなー。ヤマが外れたテストみたいにさ」
「そこはちゃんと勉強しようよ」
「はっは、ゴメンよ」
からから、と屈託なく辰巳は笑う。散々悩んでいた風葉とは対照的に、なんでもないような口振りだ。
「まぁ冗談は置いといて、実際もうすぐ朝のホームルームが始まるから――」
その後で、という続きを、辰巳は言うことが出来なかった。
あまつさえ、犬耳と銀髪についての追求は、全て後回しになってしまった。
それ以上の怪異が、堂々と出現したからだ。
「っ!?」
みし、と震える空気。
たったそれだけで、世界は影色に沈んだ。
「……なに、これ」
つぶやく風葉。
一直線の廊下。朝日が差し込む窓。向かいに見える北校舎。並んでいる教室の扉。歩いて来る担任の先生方、等々。
風葉の目に映っている全てのモノから、精彩が失われていた。
比喩ではない。本当に、あらゆる色が、薄墨色のベールの向こうにあるのだ。
「その元気に火を点けたのは誰よ!?」
「いやぁ、ついね。火災報知機のボタンとか押したくなる時あるじゃん?」
「押したくなるだけにしてよ! 良識の範疇で思いとどまろうよ!?」
辰巳にジト目を向けながら、両耳に手を当てて塞ぐ風葉。もちろんその頬は真っ赤だ。
「はっは、ゴメンよ」
笑いつつ、辰巳は風葉の手と耳を観察する。
今、風葉が押さえている耳は人間の方だけだ。犬耳の方も騒音を避けるようペタリと垂れ下がってはいるが、先端は元の耳を塞ぐ風葉の指先を突き抜けている。
どうやら、憑依の度合いはまだまだ低いようだ。
「まぁ、そんなのはどうでもいいとしてだ。銀髪と犬耳に関して心配することはないよ」
「ちょっ、どうでもいいって事は……って、えっ?」
目が点になる風葉に、辰巳は更なる断言を重ねる。
「色々と準備が要るから今すぐってワケにはいかないが、それくらいなら簡単に戻るはずさ」
「そう、なんだ。それは、よかった、けど」
安心半分、びっくり半分な表情を浮かべながら、風葉はまじまじと辰巳を見つめる。
「なんで、そんなに詳しいの?」
「さて、その辺を聞かれると返答に困るんだなー。ヤマが外れたテストみたいにさ」
「そこはちゃんと勉強しようよ」
「はっは、ゴメンよ」
からから、と屈託なく辰巳は笑う。散々悩んでいた風葉とは対照的に、なんでもないような口振りだ。
「まぁ冗談は置いといて、実際もうすぐ朝のホームルームが始まるから――」
その後で、という続きを、辰巳は言うことが出来なかった。
あまつさえ、犬耳と銀髪についての追求は、全て後回しになってしまった。
それ以上の怪異が、堂々と出現したからだ。
「っ!?」
みし、と震える空気。
たったそれだけで、世界は影色に沈んだ。
「……なに、これ」
つぶやく風葉。
一直線の廊下。朝日が差し込む窓。向かいに見える北校舎。並んでいる教室の扉。歩いて来る担任の先生方、等々。
風葉の目に映っている全てのモノから、精彩が失われていた。
比喩ではない。本当に、あらゆる色が、薄墨色のベールの向こうにあるのだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
Chivalry - 異国のサムライ達 -
稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか?
これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる