9 / 162
#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 01-09
しおりを挟む
噴出元は中庭にある物置、打ち出しコンクリートの素っ気ない屋根の真ん中。
白から赤、赤から緑と、目まぐるしく変わり続ける光柱。一秒ごとにじわじわと直径を広げていくその様は、さながら虹色の万華鏡だ。
一メートル。三メートル。五メートル。物置そのものを飲み込みながらもなお拡大する光の柱は、やがて根本にいた誰かの姿を照らし出す。
物置の影から現れた誰かは、やはり辰巳達と同様に薄墨のフィルターがかかっていない。
距離が遠い上、光柱の逆光が強いせいでよく分からないが、線の細さから女性らしいことは見て取れた。それも若い。
ひょっとすると二人と同じ学生なのかもしれないが、なぜか彼女は制服ではなくジャージを着ていた。
小豆色で、胸元のファスナーが上がり切らないジャージを。
「……え、えっ!?」
思わず窓枠に張り付き、中庭を注視する風葉。
その視線を感じたのか、彼女もまた南校舎を見上げる。
目が、合った。
今朝方、洗面所で別れた時のままの格好をしている友人と。
「いず、み」
呆然とつぶやく風葉。
それが聞こえたのか、聞こえなかったのか。光柱の前に立つ泉は、風葉を見つめながらにたりと笑う。
いつもからは到底考えられない、粘着くような愉悦がそこにあった。
「う、そ。あれは――」
反射的に後ずさる風葉。
そんな風葉と入れ替わるように、辰巳は中庭の泉を見下ろす。
「友達かい?」
「そう、なん、だけど」
確かに、泉のはずなのに。
泉では、ない。絶対に違う。
根拠はない、けれども間違いなく断定できる違和感に、頭を抱える風葉。
その混乱を、当の泉が悪意とともに助長させる。
「さぁて、小手調べといってみましょうか?」
相変わらずタールのような笑みを浮かべながら、泉は不意に指を鳴らした。
ぱきり。
不自然なくらいに響き渡るその音は、彼女の背後で立ち上る光柱に波紋を生む。
波紋は波となり、するすると光柱を登って行き、風葉達がいる窓の正面で停止する。
「こ、今度はなに?」
身構える風葉の眼前で、波は風船のように膨れ上がり、窓に触れる。
そして、そのまますり抜けた。
音を立てず、何も壊さず、さながら幽霊のように。
「な、何で!? 窓開いてないのに!?」
「そりゃ幻燈結界が動いてるからな。それよりも、もっと下がってくれ」
白から赤、赤から緑と、目まぐるしく変わり続ける光柱。一秒ごとにじわじわと直径を広げていくその様は、さながら虹色の万華鏡だ。
一メートル。三メートル。五メートル。物置そのものを飲み込みながらもなお拡大する光の柱は、やがて根本にいた誰かの姿を照らし出す。
物置の影から現れた誰かは、やはり辰巳達と同様に薄墨のフィルターがかかっていない。
距離が遠い上、光柱の逆光が強いせいでよく分からないが、線の細さから女性らしいことは見て取れた。それも若い。
ひょっとすると二人と同じ学生なのかもしれないが、なぜか彼女は制服ではなくジャージを着ていた。
小豆色で、胸元のファスナーが上がり切らないジャージを。
「……え、えっ!?」
思わず窓枠に張り付き、中庭を注視する風葉。
その視線を感じたのか、彼女もまた南校舎を見上げる。
目が、合った。
今朝方、洗面所で別れた時のままの格好をしている友人と。
「いず、み」
呆然とつぶやく風葉。
それが聞こえたのか、聞こえなかったのか。光柱の前に立つ泉は、風葉を見つめながらにたりと笑う。
いつもからは到底考えられない、粘着くような愉悦がそこにあった。
「う、そ。あれは――」
反射的に後ずさる風葉。
そんな風葉と入れ替わるように、辰巳は中庭の泉を見下ろす。
「友達かい?」
「そう、なん、だけど」
確かに、泉のはずなのに。
泉では、ない。絶対に違う。
根拠はない、けれども間違いなく断定できる違和感に、頭を抱える風葉。
その混乱を、当の泉が悪意とともに助長させる。
「さぁて、小手調べといってみましょうか?」
相変わらずタールのような笑みを浮かべながら、泉は不意に指を鳴らした。
ぱきり。
不自然なくらいに響き渡るその音は、彼女の背後で立ち上る光柱に波紋を生む。
波紋は波となり、するすると光柱を登って行き、風葉達がいる窓の正面で停止する。
「こ、今度はなに?」
身構える風葉の眼前で、波は風船のように膨れ上がり、窓に触れる。
そして、そのまますり抜けた。
音を立てず、何も壊さず、さながら幽霊のように。
「な、何で!? 窓開いてないのに!?」
「そりゃ幻燈結界が動いてるからな。それよりも、もっと下がってくれ」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
Chivalry - 異国のサムライ達 -
稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか?
これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる