神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

文字の大きさ
11 / 162
#1 レツオウガ起動

Chapter01 邂逅 01-11

しおりを挟む
 辰巳の左掌は、確かに切れていた。人差し指の根本から斜めに走る傷が、掌を一直線に横断している。
 だが、それだけだ。骨は断たれていない。血もまったく流れていない。
 ただ銀色の鋼が、傷口から顔を見せていただけだ。
「いつつじ、くん。それ、って」
「ん、ああ。リザードマンだな。RPGとかでよく出てくるだろ?」
「いや、あのトカゲ人間達の名前じゃなくて。そりゃそっちも気になるけどさ」
 思わずツッコミを返した後、風葉は改めて辰巳の左手を見る。
「その。五辻くんの、手が……」
「ああ、そういや言ってなかったっけ。俺、実は改造人間なんだ。主に左腕が」
「嘘!?」
「うんうん。嘘だと良かったんだけどなホント」
 しれりととんでもないことを言いつつ、辰巳は左腕を突き出す。
「ま、とりあえず着替えるから下がっといて」
 言いつつ、辰巳は左袖を軽くまくる。
 トカゲ人間――もとい、リザードマン達へ宣戦布告するかのごとく、まっすぐに突き出される手刀。手首には、鍔のようにごつい腕時計が輝いている。
 色は銀。傷口から見えた色も同じだったような――と訝しむ風葉を背に、辰巳は肘を基点に左腕を翻し、握った拳を天井へと向ける。
 丁度リザードマン達の方へ文字盤を向ける腕時計。辰巳はその文字盤に手をかけ、下方へスライドさせる。
 カシン、と響く鉄の音。
 中から現れたのは、青い光をたたえる小さな石。
 直径三センチほどだろうか。宝石のように透き通ったその青が、煌々とした光を灯す。
 淡い、けれども確かな存在感を発するその青色に、先頭のリザードマンはいきなり吼えた。
「GAッ!? GARAAAAAA!!」
 見開かれた赤い瞳に何故か驚愕をたたえながら、リザードマン達は辰巳へ向けて走り出した。
「い、五辻くん!?」
「心配ないさ」
 ぼそりと。
 振り向きもせず、吐き捨てるようにつぶやく辰巳。
「これが俺の、存在意義だからな」
 ため息よりも小さい、どこか悲しげな独白。
 それは一体どういう意味なのかを、しかし考えている暇はなかった。
 予想だにしない響きが、風葉の疑問を消し飛ばしたからだ。
 それは――
「セット、プロテクター」
『Roger Get Set Ready』
 ――辰巳の腕時計が立てた電子音声であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...