神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

文字の大きさ
80 / 162
#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 01-06

しおりを挟む
 声の質から鑑みるに、青年、だろうか。
 服装はサトウと同じスーツにコート。身長はサトウよりも少し大きい。
 だが最も目を引くのが、その顔に被っている仮面だろう。
 何か魔術的な補助道具なのだろうか。目元と口元のみを僅かに露出させているその仮面は、黒と赤のツートンカラーに塗り分けられている。
 仮面には何らかの魔術的な措置が施されているらしく、男の声は奇妙にくぐもっている。口元が出ているにも関わらず、だ。
 更に口元や手など、僅かに露出している肌は浅黒く、この男の奇妙さに拍車をかけていた。
「ヘェ? つーことはオウガをブッ潰す段取りが出来たワケか。OKOK、んじゃスパッといこうか。座標は前と同じでいいんだろ? フォースアームシステム――」
 言いつつ、右腕を掲げる仮面の男。その手首、辰巳のものと似た形状の多目的コンピュータが、霊力の光を灯しだした。
 だがサトウはそれを諫める。
「今すぐじゃないですよグレン君、日本に居るフリードマン氏の分霊から合図があってからです」
「んだよトロくせェな。さっさと終わらせてひとっ風呂浴びてえのによ」
 外見に似合わぬ、いかにもチンピラじみた仮面男の物言いに、ギノアは片眉をつり上げる。
「……相変わらずですね、レイドウくんは」
 苦笑を浮かべるギノア。
 この仮面の青年こそ、単身で高度な転移術式を駆動させる事が出来る希有な技能の持ち主、グレン・レイドウである。
 性格的には多少難があるものの、その術式に関する技量、特に転移術式の正確さに関しては、ギノアも身を持って知っている。
 更に如何なる探査術式を駆使しているのか、仮面の男――もとい、グレンは右腕のコンピュータを見下ろしながら、とんでもない事をつぶやく。
「やるならさっさとやっちまえよ。エッケザックス共が動き出してる」
 グレンの言うエッケザックスとは、アイスランドに所属する魔術機関だ。日本で言う凪守に該当する組織である。
 天来号から跳んだ雷蔵が、早速動き出したのだ。
「ほほう、凪守にも中々頭の回る方がいらっしゃるようですね。ですが、こちらの準備は既に終わっています」
 言いつつ、サトウは持っていたトランクを開き、中の物を取り出す。
 恭しく取り出されたのは、外側の大きなトランクには見合わない、小さな木箱だった。
 五十センチ四方ほどの小さな黒い立方体には、簡素な装飾と四脚の足が施されており、どこか香炉のようにも見える。だが側面にも天板にも、香気を発する為の穴は開いていない。
 そんな用途不明の箱を、ギノアは椅子から立ち上がって受け取る。その顔には、子供のような喜色が満面に浮かんでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...