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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 03-04
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「ッ!?」
ギノアは、吹き飛んだ。
辰巳に殴り飛ばされたから、というだけでは無い。
切磋に発動させようとしたコートの跳躍術式が、肘打ちの直後に発動したためだ。かくてギノアは進行上の建物をすり抜けながら、実に数十メートルのアーチを描いた後、日乃栄高校グラウンドの真ん中に叩きつけられた。
大きな、鈍い音が辰巳の耳に届く。幻燈結界が無ければ、きっと巨大な砂埃も巻き上がって見えただろう。
「すぅ――」
残心して拳を解く辰巳は、まず最初に自動拳銃の制御を切った。
「カット、ハンドガン」
『Roger Handgun Return』
光の粒となってこぼれ落ちていく自動拳銃を放りながら、辰巳はギノアの落下地点へ向かって歩き出した。いつもの渡り廊下を斜めに横切り、校舎をすり抜けながら、辰巳は少し右肩を回す。
ケガという程では無いが、やはり少し違和感はあった。
ラピッドブースターもそうだが、酒月が造った術式は強力な分ピーキーすぎる。パイルバンカーのように嗜好が強すぎるのも色々とアレだと辰巳は思う。
まぁ、文句を言っても聞かない人種だという事も分かりきっているので、辰巳は早々に考えるのを止めた。
「それにしても……」
辰巳は別の疑問を思考する。ギノアは分霊に、どうやってあれだけの霊力を使わせる事が出来たのか。
前回フェンリル化していた時は、日乃栄の霊地から抽出した莫大な霊力があった。だが今回はそれがない。だというのにギノアは高火力の霊力弾を連射し、跳躍と防御の術式を二重に刻んだコートを装備していた。
どちらか片方ならまだ分かる。だがその両方を行使する事など、本体ではない一介の分霊に可能なのだろうか――。
「――うん?」
そう考えていた矢先、辰巳は足下に変なものを見つけた。
砂の上、グラウンドの隅っこ。そこにあったのは薄黄色く古ぼけた、小指の先くらいしかない小さな塊。
ただの石、ではないだろう。もしそうなら幻燈結界の薄墨に染まっているはずだ。
程度はともかく霊力を帯びているらしいそれは、つまみ上げてみると予想以上に軽い。
察するに、この塊がギノアの分霊の霊力源だったのだろう。
「しかし、こりゃ一体なんだ? キャラメルじゃないのは確かだが」
いぶかしむ辰巳。だが検分する暇も無く、塊は辰巳の指をすり抜け、薄墨色に染まりながら地面に落ちる。残っていた僅かな霊力が拡散し、ただの塊に戻ってしまったのだ。
ギノアは、吹き飛んだ。
辰巳に殴り飛ばされたから、というだけでは無い。
切磋に発動させようとしたコートの跳躍術式が、肘打ちの直後に発動したためだ。かくてギノアは進行上の建物をすり抜けながら、実に数十メートルのアーチを描いた後、日乃栄高校グラウンドの真ん中に叩きつけられた。
大きな、鈍い音が辰巳の耳に届く。幻燈結界が無ければ、きっと巨大な砂埃も巻き上がって見えただろう。
「すぅ――」
残心して拳を解く辰巳は、まず最初に自動拳銃の制御を切った。
「カット、ハンドガン」
『Roger Handgun Return』
光の粒となってこぼれ落ちていく自動拳銃を放りながら、辰巳はギノアの落下地点へ向かって歩き出した。いつもの渡り廊下を斜めに横切り、校舎をすり抜けながら、辰巳は少し右肩を回す。
ケガという程では無いが、やはり少し違和感はあった。
ラピッドブースターもそうだが、酒月が造った術式は強力な分ピーキーすぎる。パイルバンカーのように嗜好が強すぎるのも色々とアレだと辰巳は思う。
まぁ、文句を言っても聞かない人種だという事も分かりきっているので、辰巳は早々に考えるのを止めた。
「それにしても……」
辰巳は別の疑問を思考する。ギノアは分霊に、どうやってあれだけの霊力を使わせる事が出来たのか。
前回フェンリル化していた時は、日乃栄の霊地から抽出した莫大な霊力があった。だが今回はそれがない。だというのにギノアは高火力の霊力弾を連射し、跳躍と防御の術式を二重に刻んだコートを装備していた。
どちらか片方ならまだ分かる。だがその両方を行使する事など、本体ではない一介の分霊に可能なのだろうか――。
「――うん?」
そう考えていた矢先、辰巳は足下に変なものを見つけた。
砂の上、グラウンドの隅っこ。そこにあったのは薄黄色く古ぼけた、小指の先くらいしかない小さな塊。
ただの石、ではないだろう。もしそうなら幻燈結界の薄墨に染まっているはずだ。
程度はともかく霊力を帯びているらしいそれは、つまみ上げてみると予想以上に軽い。
察するに、この塊がギノアの分霊の霊力源だったのだろう。
「しかし、こりゃ一体なんだ? キャラメルじゃないのは確かだが」
いぶかしむ辰巳。だが検分する暇も無く、塊は辰巳の指をすり抜け、薄墨色に染まりながら地面に落ちる。残っていた僅かな霊力が拡散し、ただの塊に戻ってしまったのだ。
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