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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 13-04
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「な、んだ」
跪き、ギノアは恐る恐る髑髏に手を伸ばす。
時の重みによって黄ばんだそれは、今にも崩れてしまいそうなくらいにボロボロだ。
経年劣化、というだけではない。顔の右半分を覆っている、仮面のような機械――強制霊力抽出装置が、髑髏への負担を無視して霊力を吸い上げていたためだ。
右眼窩にはめられたランプを点滅させながら、今も掃除機のように霊力を吸引するそれを、ギノアは外そうとする。
「なん、だ、これは。なんなんだ、これは」
二度、三度。髑髏を傷つけぬよう注意深く引っ張るギノアだが、仮面はネジ止めでもされているのかビクともしない。
「なぜ、こんなものが、私の本体に繋がっているんだ――!?」
混乱を叫ぶギノアに、辰巳と風葉もまた目を丸めた。
「ほ、本体!? どういう事なの!?」
「そりゃあ、きっと、言葉通りだろうからさ」
驚く風葉を背に、辰巳は一人納得する。
――強大な霊力と引き換えに、己の肉体を捨てた存在。それが死霊術師だ。
彼等は己を保つため、特殊な施術を施した道具に自身の魂を封じる。そこから分身を生み出し、己の目的を遂行する。
ギノアにとってはそれが今割れた箱であり、自身の髑髏であった訳だ。
そして、今。ギノアはようやくその事実を思い出した。
この箱は死霊術師となった当時から、ギノアの本体である髑髏を守り、また霊力循環の手助けをするよう術式を刻んだ代物だ。
息子を守るために、妻を忘れぬために、想いの全てを刻み込んだ代物だったはずだ。
それを、何故、今この瞬間まで忘れていたのか。理解できなかったのか。
理由は明白だ。
見覚えのない、仮面型の霊力抽出機構。それを仕込んだ何者かが、ギノアの記憶に細工をしたのだ――!
「サトウ……よくも……サトウーッ! よくも私を騙したなァァァァッ!」
チカチカと、ギノアを嘲笑うかのように点滅するランプ。激高し、グングニルごと霊力を振り回すオーディン。
瞬く間に烈風が辺りを撹拌し始め、レツオウガは慌てて間合いを離す。
「な、なに? なんでいきなりあんな怒りだしたの?」
「さぁな。画鋲でも踏んだんじゃないのか」
適当な口調とは裏腹に、辰巳は努めて冷徹に解析する。
霊力増幅器、とギノアが言っていた髑髏入りの箱。破損したこの瞬間まで分からなかったが、どうやらあれには凄まじい量の霊力が封入されていたようだ。察するに、日乃栄霊地の満杯分くらいはあったろう。
「だが、一体どうやってそれだけの量を……」
つぶやく辰巳の脳裏で、カチカチと、情報のピースが音を立てて組み上がる。
第一次Rフィールド殲滅作戦以後、数十年間行方不明だったギノア・フリードマン。
彼は、当時から目を付けられていたのだ。
恐らくは、大量の霊力を足がつかない形で捻出するために。
跪き、ギノアは恐る恐る髑髏に手を伸ばす。
時の重みによって黄ばんだそれは、今にも崩れてしまいそうなくらいにボロボロだ。
経年劣化、というだけではない。顔の右半分を覆っている、仮面のような機械――強制霊力抽出装置が、髑髏への負担を無視して霊力を吸い上げていたためだ。
右眼窩にはめられたランプを点滅させながら、今も掃除機のように霊力を吸引するそれを、ギノアは外そうとする。
「なん、だ、これは。なんなんだ、これは」
二度、三度。髑髏を傷つけぬよう注意深く引っ張るギノアだが、仮面はネジ止めでもされているのかビクともしない。
「なぜ、こんなものが、私の本体に繋がっているんだ――!?」
混乱を叫ぶギノアに、辰巳と風葉もまた目を丸めた。
「ほ、本体!? どういう事なの!?」
「そりゃあ、きっと、言葉通りだろうからさ」
驚く風葉を背に、辰巳は一人納得する。
――強大な霊力と引き換えに、己の肉体を捨てた存在。それが死霊術師だ。
彼等は己を保つため、特殊な施術を施した道具に自身の魂を封じる。そこから分身を生み出し、己の目的を遂行する。
ギノアにとってはそれが今割れた箱であり、自身の髑髏であった訳だ。
そして、今。ギノアはようやくその事実を思い出した。
この箱は死霊術師となった当時から、ギノアの本体である髑髏を守り、また霊力循環の手助けをするよう術式を刻んだ代物だ。
息子を守るために、妻を忘れぬために、想いの全てを刻み込んだ代物だったはずだ。
それを、何故、今この瞬間まで忘れていたのか。理解できなかったのか。
理由は明白だ。
見覚えのない、仮面型の霊力抽出機構。それを仕込んだ何者かが、ギノアの記憶に細工をしたのだ――!
「サトウ……よくも……サトウーッ! よくも私を騙したなァァァァッ!」
チカチカと、ギノアを嘲笑うかのように点滅するランプ。激高し、グングニルごと霊力を振り回すオーディン。
瞬く間に烈風が辺りを撹拌し始め、レツオウガは慌てて間合いを離す。
「な、なに? なんでいきなりあんな怒りだしたの?」
「さぁな。画鋲でも踏んだんじゃないのか」
適当な口調とは裏腹に、辰巳は努めて冷徹に解析する。
霊力増幅器、とギノアが言っていた髑髏入りの箱。破損したこの瞬間まで分からなかったが、どうやらあれには凄まじい量の霊力が封入されていたようだ。察するに、日乃栄霊地の満杯分くらいはあったろう。
「だが、一体どうやってそれだけの量を……」
つぶやく辰巳の脳裏で、カチカチと、情報のピースが音を立てて組み上がる。
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彼は、当時から目を付けられていたのだ。
恐らくは、大量の霊力を足がつかない形で捻出するために。
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