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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 14-02
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「……さて」
辰巳は考える。
とりあえず声をかけてみたものの、何から切り出せば良いのやら。辰巳側としても、それはもう色んな事があったのだ。
始末書、報告書、診断書。その他諸々ダース単位で襲い来る書類の山々。
査問、検査、会議。その他諸々ひたすら長いミーティングの連続。
連日連夜繰り返されるは責任のドッジボールばかりで、レツオウガ関連の扱いは宙ぶらりんのまま止まっている。ウィーン会議とタメを張れそうな有様だ。
そんな最中、うまく立ち回った巌が辰巳に時間を作り――凪守には日乃栄霊地の監視再開という名目で――こうして登校できるよう調整してくれたのだ。
話し始めるならその辺からだろうか。それとも、フェンリルの処遇についてだろうか。
「ぬぅ」
「どしたの五辻くん。やっぱり、都合が悪かったり?」
「いや、そうじゃなく……」
などと言い淀んでいたために、結局時間は無くなった。
こち、と無慈悲に時間を刻む分針。
同時に、きんこんとチャイムが鳴り出した。朝のホームルームが始める時間だ。
「……悪いのは都合じゃなくて、タイミングだったようだな」
「らしいね」
笑い合う二人。そうこうする間に鳴り止もうとしているチャイムを聞きながら、辰巳はカバンを持ち直す。
「まぁ、なんだ。とりあえず、遅刻の言い訳とか考えながら行こうか」
何にせよ、まずは授業に出るのが一番だろう。小難しい話や思い出話は、それこそ休み時間にでもたっぷりすればいい。
「賛成。でも、寮生が遅刻するってどんな状況だよって話じゃない?」
言いつつ、風葉は辰巳に先んじて歩き出した。
「そりゃそうなんだがな――」
風葉を追い、辰巳も翠明寮の玄関を潜る。見上げる空は、突き抜けるような青色。
神影鎧装、フェンリル、凪守、Eマテリアル、事後処理、その他諸々。一切合切どうでもよくなるくらい、さわやかな快晴である。
「灰でも赤でもない空、か」
いつか雨は降るだろう。風が吹き荒んでいくだろう。
だが、それでも、とりあえず今は。
「五辻くん? ホームルームどころか一限目まで遅れちゃうよ?」
「ん、ああ。分かってる」
いつの間にか止まっていた足を踏み出し、辰巳は前を見る。
とりあえず今は繋いだ今日を、戻ってきた日常を過ごすために。
「じゃ、行くか」
先に行く風葉の背中を、辰巳は追いかけることにした。
黒いポニーテールが、心なしか嬉しそうに揺れていた。
辰巳は考える。
とりあえず声をかけてみたものの、何から切り出せば良いのやら。辰巳側としても、それはもう色んな事があったのだ。
始末書、報告書、診断書。その他諸々ダース単位で襲い来る書類の山々。
査問、検査、会議。その他諸々ひたすら長いミーティングの連続。
連日連夜繰り返されるは責任のドッジボールばかりで、レツオウガ関連の扱いは宙ぶらりんのまま止まっている。ウィーン会議とタメを張れそうな有様だ。
そんな最中、うまく立ち回った巌が辰巳に時間を作り――凪守には日乃栄霊地の監視再開という名目で――こうして登校できるよう調整してくれたのだ。
話し始めるならその辺からだろうか。それとも、フェンリルの処遇についてだろうか。
「ぬぅ」
「どしたの五辻くん。やっぱり、都合が悪かったり?」
「いや、そうじゃなく……」
などと言い淀んでいたために、結局時間は無くなった。
こち、と無慈悲に時間を刻む分針。
同時に、きんこんとチャイムが鳴り出した。朝のホームルームが始める時間だ。
「……悪いのは都合じゃなくて、タイミングだったようだな」
「らしいね」
笑い合う二人。そうこうする間に鳴り止もうとしているチャイムを聞きながら、辰巳はカバンを持ち直す。
「まぁ、なんだ。とりあえず、遅刻の言い訳とか考えながら行こうか」
何にせよ、まずは授業に出るのが一番だろう。小難しい話や思い出話は、それこそ休み時間にでもたっぷりすればいい。
「賛成。でも、寮生が遅刻するってどんな状況だよって話じゃない?」
言いつつ、風葉は辰巳に先んじて歩き出した。
「そりゃそうなんだがな――」
風葉を追い、辰巳も翠明寮の玄関を潜る。見上げる空は、突き抜けるような青色。
神影鎧装、フェンリル、凪守、Eマテリアル、事後処理、その他諸々。一切合切どうでもよくなるくらい、さわやかな快晴である。
「灰でも赤でもない空、か」
いつか雨は降るだろう。風が吹き荒んでいくだろう。
だが、それでも、とりあえず今は。
「五辻くん? ホームルームどころか一限目まで遅れちゃうよ?」
「ん、ああ。分かってる」
いつの間にか止まっていた足を踏み出し、辰巳は前を見る。
とりあえず今は繋いだ今日を、戻ってきた日常を過ごすために。
「じゃ、行くか」
先に行く風葉の背中を、辰巳は追いかけることにした。
黒いポニーテールが、心なしか嬉しそうに揺れていた。
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