神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

文字の大きさ
161 / 162
#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 14-01

しおりを挟む
 かちり、こちり。大げさな音を立てて時計が回る。
 文字盤が指す時刻は八時二十分、もうすぐ朝のホームルームが始まる時間だ。至近距離に校舎がある翠明すいめい寮とはいえ、こんな時間までくすぶっている生徒はそうそういない。
 いるとすればそれは病欠か、あるいは何かを待っているかのどちらかだ。
「来ないなぁ」
 そして今、玄関先で立ち尽くしている霧宮風葉きりみやかざはは、まさに後者だった。
「むぅ」
 溜息をつきながら、風葉は力なく壁を蹴る。古ぼけて黄ばんだ漆喰は、やっぱり通り抜けたりしない。堅い感触を返してくるだけだ。
「むぅー」
 風葉は待っている。誰あろう、五辻辰巳いつつじたつみを。強引かつなし崩し的だったとはいえ、それでも共に激戦をくぐり抜けた友達を。
 だがあれ以来、辰巳は一向に顔を見せない。教室どころか、寮の食堂にさえも。
 もう三日も経つのに、だ。
「三日、三日かぁ」
 時間の流れの速さに辟易しながら、風葉は回想する。この三日間、何度も繰り返したあの後の顛末を。
 ――零壱式れいいちしきに拘束されたレツオウガは、霊力装甲を解除した後、有無を言わさず拘束された。
 それからあっと言う間に転移術式で凪守なぎもりの基地へ連行され、半日の間色んな事をした。
 具体的には質疑応答と身体検査だ。他にもあった気はするが、とにかく色々ありすぎたのでよく思い出せない。
 そうして確か、午後六時くらいだったろうか。気づくと、風葉は開放されていた。
 二度とフェンリルを引き出さぬよう、かつグレイプニル・レプリカを極力外さぬよう、厳重な注意は受けた。
 そして、それだけだ。
 風葉の手元には、驚くほどあっさりと、いつもの日常が返って来たのだ。
 ただ唯一、五辻辰巳の姿を除いて。
「だから待ってるんだけど、ね」
 こちり、とまた時計が時間を刻む。針が八時二十六分を指す。そろそろ小走りしないと間に合わない時間だが、風葉は動かない。動けない。
 ただ、何気なく事務室の窓を見る。
 誰もいない窓枠の中に、自分の姿がぼんやりと映る。
 いつもの制服に身を包んだ、黒髪のポニーテール。とっくに見慣れた、けれどほんの少し違和感のある髪。
 フェンリルの憑依が離れたわけではない。ただグレイプニル・レプリカの効力で、犬耳や尻尾共々見えなくなっているだけだ。
 丁度、辰巳や凪守の動きと同じように。
「ああもう、なにやってんだろ」
 辰巳も、凪守も、自分自身でさえも。
 足踏みすら出来ない現状に、一際大きなため息をつく風葉。
 同時に、こち、とまた分針が風葉を急かす。そろそろ限界だ。
「いい加減のんびりしてらんないなぁ」
「そうみたいだな」
 踵を返した直後、後ろからかかってきた声が一つ。
 がば、と風葉は振り向く。
「……まぁ、なんだ。おはよう」
 ばりばりと。バツが悪そうに頭をかく辰巳が、そこに立っていた。
 勿論、日乃栄ひのえ高校指定の男子制服姿だ。
「……うん。おはよう」
 はにかみながら、風葉は微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

処理中です...