泡沫

文字の大きさ
5 / 17

ざわつき

しおりを挟む
「あっ、お金。」

食べ終わって会計をしようとすると

「もう、俺払っといたから。」

そう言ってピースをする。

「え?潤のおごり?やべー俺が出そうとしたのに俺の立場ねぇじゃん笑。」

そう言って悔しそうな顔をする亜季ちゃん。


「潤さんご馳走さまでした。」

玲奈がお辞儀をする。

「うん。今度は亜季さんに奢って貰うから笑。」


そう言って彼は笑った。


あっ、お礼…そう思って後を追いかける。

「今日はご馳走さまでした。」

あたしが彼の隣に並びそう言った。

「今日はじゃなくていつもご馳走するから遠慮なく言ってね」

とあたしの頭にポンッとてをおいた。

いつも…?

それって…。


いや、ただの社交辞令だ。

そう言い聞かせて高鳴る胸を抑えた。


「潤、愛結ちゃん送ってね~。家近いから二人とも」

そう言って亜季ちゃんはヒラヒラと手を振りながら玲奈と帰っていった。


「あ…あたし一人でも帰れますので…」

そう言うと

「え?なんで?俺送ってくよ?家どの辺?」

そう言って顔を覗き込まれる。

「いやでも…。」

「さ、行こう」

そう言って先に歩き出す。

「ホントに一人でも…」

あたしが慌てて追いかけると

「女の子だからだめだよ。」

そう言って笑った。

あたしの歩幅にあわせて歩いてくれる。

夏の夜のせいで少し汗ばむ。

「ねぇ、愛結ちゃん?」

あたしの名前を優しく呼ぶから

彼を見上げると

「また、会おうね。」

そう言って笑った。


「うん…。」

あたしは恥ずかしくて少し照れ臭くて

うつむいてそう言った。


「あの…もうここで。」

あたしがそう言うと


「え?ここ?俺の家とすげー近い」

そう言って2つ先のマンションを指す。


「え?」

凄いというか、なんというか。

偶然というものなのだろうか。


「じゃあ、また」

そう言ってあたしの頭をポンッと撫でる。


「ありがとう。」

そう言ってあたしはエントランスへ入っていった。

エレベーターへ乗るとドキドキしている
自分の心臓がやけにうるさい。


あたし、どうしちゃったんだろう。

潤くんに頭を触られただけでドキドキする。

胸が締め付けられる。


でも、きっとこの感情はこの時だけ。

自分の部屋を開けると

深いため息をはいた。


それから、何事もなく1週間、2週間と月日は過ぎた。


潤くんからは連絡がたまにくるだけで。


仕事が忙しいとあたしは返さないときもあった。

ここ1週間、潤くんに連絡を返していない。

時間がたちすぎて…返せないでいた。

「愛結!今日飲み行こう!」

仕事終わり、玲奈があたしに抱きつきそう言う。


「えぇ?今日は疲れたよ。」

あたしがそう言うと

「なにいってんの~咲花も一緒にいくんだよ~ほらはやく!」

そう言って急かされ、外へと出る。


「どこいくの?」

あたしが聞くと


「亜季のとこ~」


そう言ってピースをする。

「いや、お金そんなに持ってないしおろしてないからさ…」

あたしがそう言うと


「なにいってんの?お金なんて心配ないさー!」


何故か大西ライオンの真似をしながら

愉快に歩き出す。


そりゃあ亜季ちゃんの彼女だし、咲花は翔くんの彼女だからお金かからないけど。

あたしは…違うじゃん。

お客さんとして行くのに…それはまずいよね?

凄く行きづらくなって…やっぱり帰ろうかななんて思ってる間に…着いてしまった。


まぁ、足りなかったらカードで支払えばいいかな。

そうやって自己完結をした。

「あれ?今日は亜季ちゃんきてないね?」

下に迎えにくるはずの亜季ちゃんの姿がない


「行くとか言うとうるさいから内緒できたんだよ!」

そう言ってベロを出した。


それ、喧嘩になるやつじゃ…?


そんなこと思ってると玲奈は普通に店のドアをあける。


いらっしゃいませー!

という声とともに

ホストたちが焦りながら裏へ駆け込む。

そりゃ、そうだよね。

困るわ亜季ちゃん知らないんだもん。

「おい玲奈!」

亜季ちゃんは焦って裏から飛び出してくる。

「でへへ~ごめん!来ちゃった笑。」

そう言って軽くあしらう。


「V空いてないっすよ亜季さん。」

ホストのこがそう言って辺りを見回す。


「ん~…じゃあ、そこで。」

亜季ちゃんは渋々あたし達をホールへつれてく。

「なんでまた急になんだよおまえ。」

少し怒ったように亜季ちゃんは言った。

「だってさ行くとか言うと~だめだとか言うじゃん~」

「咲花もなんでまた…」


呆れながら翔くんも言った。


「他のホスト行ったら怒るでしょ?だから、ここに来たのよ!」


玲奈がそう言っていたずらそうに笑う。


「だからってなー…」

ブーブー言いながら亜季ちゃんはお酒を作り出した。


「あれ?愛結ちゃんどーする?」

あたしの方を亜季ちゃんは見て言う。


「潤くんに決まってんでしょ」


そう言ったのは玲奈で。


「わかった。」

そう言って亜季ちゃんは席をたった。

迷惑じゃないかな?

行きなり来て…。

それにしてもお客さんいっぱいだな~…

そんなこと思ってると奥のホールから

潤くんが来るのがわかった。

あっ、お客さんいたんだ。

いるよねそりゃ。

いきなり来ちゃって仕事増やしにきたみたいになっちゃってる。


「なんできたの?」

いつもと違う低い声であたしの目の前に立つ。

「え…?」

あたしが驚いてると

「いや、ごめん!潤さん!あたしが無理矢理連れてきてさ」

玲奈が慌てて間にはいる。

「はぁ…」

そうため息をはいてあたしの横に座る。

なんか…怒ってる…?

「あの…」

あたしが聞こうとしたら

「連絡ないし、いつまでたっても返してくれないし。」

こっちを見ずに潤くんは話し出す。

「それは…」

「かと思えばいきなりくるし。俺さ…店になんて別に来てほしいわけじゃないし…店じゃなくて普通に外で会いたいんだけど。」

そう言われて潤くんをみた。

「あの…ごめんなさい…連絡は忙しくて…なんか日が経ってから返しづらくて…」

そう言うとまた深いため息をはいた。

「ちょっとまってて。」

そう言って行ってしまった。

外で会いたいんだけど…?

それは…どういう意味?

意味なんてないよね…ただ普通に

意味がない言葉だよね。

カッと熱くなる顔を抑えるように

自問自答を繰り返した。

「あいつキレてるなー…」

亜季ちゃんがボソッと言ったのがこのでかい音量が流れている場所でも聞こえた。

怒ってるんだ…。

迷惑かけたからかな…。

「お客さんお帰りです。」

その声が聞こえるほうに目をやると

潤くんがお客さんの鞄を持っていた。

その女の子は凄く怒ってて。

潤くんはその子を無視して出口へと向かう。

「あちゃー…」

亜季ちゃんがそれを見て頭を抱える。

「あいつバカだなほんと。」

そう言ってグラスをあたしに傾けた。

テキーラの味に慣れているのに

酔いがまわるのが早く感じる。

どれくらいたったかな。

多分五分ぐらいなのにあたしには
10分ぐらいに感じた。

「ごめん。」

そう言って潤くんが隣に座る

「いや…あたしが勝手に来てそれで仕事増やしちゃってごめんね…」

そう言うと

「はぁ…違うそうじゃなくて…。あんまり仕事してるの見せたくなくて…。仕事にならねぇってゆうか…」

そう言って下を向く。

そうだよね…ごめんなさい…。

仕事してるのに、邪魔しに…。

あたしが黙ってると

「今日はもうお客さん来ないしきにしないで。」

そう言って笑った。

「でも…」

「連絡…待ってるから、だからちゃんと返してほしい。」

そう言ってあたしを見た。

「うん…。」


「うん。じゃあ俺もテキーラ飲むね。」

そう言ってグラスを合わせる。

「違うの飲んでもいいのに…」

「いや、これでいい。」

そう言ってまた笑った。

隣にいると…何故だか落ち着く…。

ずっと忘れていた…この感覚が

やっぱり潤くんのとなりにいると

蘇ってくる。

あたしは…もうしないって決めているのに
心はざわついていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

メリザンドの幸福

下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。 メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。 メリザンドは公爵家で幸せになれるのか? 小説家になろう様でも投稿しています。 蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

【完結】どくはく

春風由実
恋愛
捨てたつもりが捨てられてしまった家族たちは語る。 あなたのためだったの。 そんなつもりはなかった。 だってみんながそう言うから。 言ってくれたら良かったのに。 話せば分かる。 あなたも覚えているでしょう? 好き勝手なことを言うのね。 それなら私も語るわ。 私も語っていいだろうか? 君が大好きだ。 ※2025.09.22完結 ※小説家になろうにも掲載中です。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

処理中です...