あなたは誰?

しっけ

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僕の宝物

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生まれた時から
お前は選ばれた人間なのだと
親から言われて育ち

周囲にいる有象無双には
熱に浮かれたような
目線に晒され続ける毎日

ずっと変わり映えのしない日々を
送るのだろうと思っていた。
常に一枚薄い膜に覆われていた
僕と僕以外の人たち。

初めて玲央を瞳の中に捉えた時
君しかいないって思ったんだよ。

大学でいつものように
いつもの場所で人に囲まれていた僕の前を
過る君と誰か。

笑い合いながら
気心の知れた友達のように
でも友達とは言い切れない親密な温もりを感じる
2人の距離感。

これだと思った人の横には
得体の知れない男が我が物顔で横にいる現実。

あの頃暇を持て余していた僕は
周りに群がる美しく着飾る人形で遊んでいたっけ

興味もないものに時間を使うのが
無駄なことだと気づいた時捨てたゴミ
彼らは泣いて縋っていたな

こんなにも僕以外の人たちは
心を震わせて生きているのに
何で僕の心はこんなにも乾いているのだろう

いつも不思議だったっけ

でも当たり前だった
どうでも良いものに心なんて震えるはずがないものね

僕のために作られたもののように
すっぽりとハマるであろうその身長に
指に絡む細い美しい黒髪。

気づいた時から君の噂は何でも耳に入ってきた

太陽のような人だと聞いた玲央
でも僕は大好きなものを人と共有することが
世界で一番嫌いなんだ

特に君の横に
対のようにいる邪魔な男

どうせなら目の前で死んでもらおう

「さようなら」

玲央の心が壊れる音を
僕は君の心臓に耳を当てていたからしっかり聞けた

今までの君は今あいつと共に死んだんだ。

これからは僕の匂いを繕って
共に生きて死んでね

記憶と共に
記録も死んだ日

世界から君が消えた日

愛してるよ玲央

家と一緒にお墓も買った 

墓標はなんにしよう
揺り籠から墓場まで
僕は君を守り、共に死ぬことをここに誓う
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