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【R18】天使と魔王の戯れ(後編)
しおりを挟む冷たいシャワーを頭から浴びる。熱くなっていた身体が少しずつ落ち着いていく。
頭が冷えると同時に不安が襲ってきた。
――――夜景……送らなければよかったかな。……変に思われていたらどうしよう。
ノワールからの返事が気になって仕方ない。
冷たいシャワーだけでは身体が冷えるからと湯船にもつかったが、結局数分つかっただけでお風呂を飛び出した。
バタバタと身体を拭いて、部屋にあった寝衣を着る。
そして、ベッドの上で正座になりスマホに手を伸ばした。深呼吸をして、覚悟を決める。LIMEを開いた。
――――既読マークはついているのに……返信は無い。
何度も文章を読み返す。――――いっそのこと送り間違えたとでも言ってみようか。いや、さすがに不自然か。
どうしたらいいのだろうと、スマホを握り唸っているとノック音が聞こえてきた。
冷静な精神状態だったならそんなことはしなかっただろう。
けれど、この時の天宮はお酒を飲んでいて、さらには情緒不安定だった。
だから……スマホを握りしめたまま、上に何かを羽織るでもなくそのまま扉を開けてしまった。
天宮の姿を目にした黒野は一瞬呆け、すぐに我に返り、天宮を隠すように抱きしめると部屋の中へと押し入った。
そして、勢いよく身体を離して天宮の両肩を掴む。天宮は驚いて黒野を見上げた。あまりにも無防備すぎる天宮の言動に黒野は眉根を寄せる。
「なんでそんな恰好で出てくるんですか! 隙を見せるなって言ったじゃないですか!」
「え?」
「俺言いましたよね?! 男には気を付けろって!」
その言葉には確かに覚えがある。何度も頭の中で思い出してはどういう意味なのかと考えていたから覚えている。
でも、それを言ったのは別の人物で……。
――――あれ? そういえば、黒野の声って……似てる? いや、でも……。
困惑していると黒野の顔が近づいてきた。よける間もなく、唇を奪われる。
いつの間にか黒野から再びぎゅうっと抱きしめられていた。
服越しでもわかる熱い身体はお酒のせいだけとは思えなくて心臓が暴れだす。雰囲気に流されそうになるが、その前にはっきりさせなければ。
「んうっ。んっ……んん!」
暴れまわる舌に翻弄されながらも必死に腕を叩いて離れるように示す。唇が離れると名残惜しげに銀色の糸が舌と舌を繋いで途切れた。
天宮は息も絶え絶えに顔を逸らす。そして、自分のあられもない姿に気づいて慌てて後ろを向いた。呼吸を落ち着けてから口を開く。
「あ、あの……黒野君が……ノワールなの?」
小声だったが、黒野にはしっかり届いたようだ。
「はい。さっきのLIMEで天宮さんがブランだって確信して……直接話をしようと思ってきました」
天宮を後ろから抱きしめると黒野は耳元で囁いた。甘さを多分に含んだ声に天宮は腰がくだけそうになるが、黒野がしっかりと支える。
放心状態の天宮を黒野は抱きかかえてベッドへと運ぶ。
後ろから抱えられたまま、首筋にキスが落とされた。
「ちょ、ちょっとまってノワール!」
「はい」
素直に止まった黒野を天宮は振り返って見上げる。
「まだ私混乱しているから整理させて」
「どうぞ」
黒野は微笑んだが、その笑みは今まで見たことがないものだった。嬉しさや愛おしさを集めて煮詰めたような微笑み。天宮は思わず見惚れてしまったが、我に返って咳ばらいで誤魔化した。この場の雰囲気に流されるわけにはいかない。まだ確かめたいことがいくつかあるのだ。
「ノワ……んん、黒野君はなんで、私がブランだとわかったの? その、結構イメージ違うでしょ? 万が一ゲーム内でリアルの知り合いとあってもバレないようにって気を付けてたつもりなんだけど……」
「ああ……それはその……」
言いづらそうな黒野。ジッと見つめていると観念して話しだした。
最初に「もしや」と思ったのは先週の電話の時だったらしい。
出張の話をしている時にブランはスマホを落とした。その際、何かの拍子でビデオ通話に切り替わった。ノワールはブランが気づいていないことには気が付いていたが、もしかしたらブランの顔が見れるかもと思い、つい魔がさして黙っていたのだという。そして、その際にちらりと見てしまったのだ。
あの時の天宮はすっぴんでさらには上着を脱いでいた。黒野は目に入った光景に慌ててビデオ通話をオフにしたもののちらりと見た顔に見覚えがあった。でも、一瞬だったので確信はもてなかったそうだ。
決定打は先程の夜景。
天宮は夜景のことしか気にしていなかったが、実は窓ガラスに反射して映っていたそうだ。これまた、下着姿の天宮が。今度はわりとはっきりと。
――――恥ずかしすぎて死ぬ。
羞恥心に耐え切れなくなった天宮は両手で顔を覆った。しかし、無情にも黒野の手によって外される。両手は捕まえられていて逃げられない。天宮は潤んだ目で黒野に訴えかけた。
しかし、残念ながらそれは黒野を刺激する効果しかなかった。
「天宮さんって……本当はそんなに目が悪くないでしょ」
「うっ……ゲームのしすぎで目が悪かったのは本当よ。ただ、数年前にレーシックをしたから今は眼鏡は必要ない。でも、今更眼鏡外すのもなんか恥ずかしくて。それに、オンオフの切り替えにもなるから」
「なるほど……じゃあ、これからもそうしてください。この天宮さんを見られるのは俺だけってことで」
「え?」と首を傾げた瞬間、どさりとベッドへと押し倒される。天宮は抵抗しなかった。どこか期待した眼差しに黒野は己の頬が緩むのを自覚する。しかし、いざ唇を重ねようとしたら掌で遮られた。天宮がすねた顔で黒野を睨みつける。
「まだ、何も言われてないんだけど」
「? ……あ! すみません。俺、浮かれて調子にのりました」
上半身を起こし、今度は黒野が顔を両手で覆って項垂れた。天宮は苦笑しながらも慰めるように黒野の背中を叩く。
黒野はガバッと顔を上げると、正座した。黒野に倣って天宮も正座して向き合う。
「俺はブランが、天宮さんが好きです。付き合ってください!」
土下座する勢いで頭を下げる黒野に、天宮も「こちらこそよろしくお願いします」と頭を下げた。しばらくして二人して顔を上げて、笑いあい、どちらともなく顔を近づけて唇を重ねた。
思いを確かめあった二人。
そして、意中の女性は今黒野の腕の中でとても魅惑的な格好をしている。
お預けを食らっていた犬がお利口さんでいられたのはここまでだ。
黒野はベッドに天宮を押し倒すと己の腕で逃がさないように囲って夢中で唇を貪った。
若さ有り余る勢いに天宮は追い詰められていく。
喘ぐように空気を求め口を開けば差し込まれた舌が暴れ回り、息苦しくて涙がこぼれる。
胸元を叩くと離れてくれたが、黒野は口元を拭いながら興奮した様子を隠そうともせずにギラギラした視線で天宮を射抜く。
「黒野君も脱いで……私だけは嫌」
寝衣を脱がされ、パンティー一枚の天宮が負けずに涙目で睨めば、黒野はキョトンとした後ニヤリと笑って頷いた。
なぜか、一枚一枚ゆっくりと見せつけるように脱いでいく黒野。いけないものを見ている気になった天宮は視線を逸らそうとした。けれど、黒野は許してくれない。
「ダメですよ。ちゃんと見ていてください」
からかうようなトーンで言われ、頬が熱くなるのを自覚しながらも天宮は黒野を睨む勢いで見つめ返した。
黒野は満足そうに、シャツのボタンを外していく。鍛えられたシックスパックが目に入り、そういえば元バスケ部だと言っていたことを思い出す。
腕に浮かんだ筋や、均整の取れた身体は想像していたよりも蠱惑的で思わず釘付けになる。己の喉が鳴った音で我に返った。
黒野がボクサーパンツに手をかけたところで天宮は慌てて口を開いた。
「ま、まだそこはいいから!」
視界に入ってきたボクサーパンツは一部が盛り上がり、先端が少しだけ濡れて色が変わっている。天宮の視線に気づいた黒野が恥ずかしげもなく言う。
「天宮さんが欲しくて我慢できないみたいです」
ほら、と手をとられパンツの上から握らされた。
熱く、固く、太く、長いモノにゴクリと喉が鳴る。
「天宮さんはどうですか?」
「え? あ、…ぅ」
欲しいと正直には言えず涙目で訴えると、黒野は仕方ないなぁという表情を浮かべ天宮にキスをした。「違う!」と言いたかったが、唇は黒野に塞がれている。
黒野は天宮の手の上から己の肉棒をしごき始めた。荒い息が聞こえてきて頭がおかしくなりそうだ。
もう限界だと黒野に伝えたかったが、するりともう片方の手がパンティーの中に入りこんできてビクリと身体が揺れる。
すでに濡れていた秘裂は、さすられる度にくちゅりくちゅりと水音が鳴った。ぷっくり膨らんだ秘芽が黒野の指先で執拗にこねくり回される。強い刺激に腰が揺れ、嬌声が止まらない。
黒野も気持ちいいのか下着の染みは広がり、荒い息が続いている。
呼吸を整えると天宮の緩み始めた秘部に指をねじ込んだ。それだけで天宮の身体は反り、軽く痙攣する。
黒野はそっと唇を離し、重ねていた手も離した。秘部に入れた指だけはそのままに、素早く片手で自分のボクサーパンツを脱ぐ。天宮は恥ずかしいのかギュッと目を閉じている。
秘部を好きなだけ弄り回した指をそっと引き抜き、塗りつけるように己の肉棒を軽くぬく。そして、天宮のパンティーを剥ぎ取った。
熱くパンパンになり、臍までそりかえった肉棒を握る。天宮の秘部に押し当て、こすりつければぐちゅぐちゅと音が鳴る。
――――これだけでイキそうだ。
まるで視界の暴力。期待からか天宮の秘部もヒクヒクしている。
――――挿れたい。
そう思ったのは天宮も一緒だったようで、両手を黒野に伸ばした。
「きて。ノワールを……黒野君をちょうだい」
「はい。俺の全部、天宮さんにあげます。そのかわり、ブランの……天宮さんの全部をもらいますよ」
宣言とともにゆっくりと天宮の中に黒野が入ってくる。
中がいっぱいになったと思った瞬間、ズン!とさらに奥を突かれた。
今まで感じたことのない衝撃に思わず口を開いて仰け反る。
黒野は満足げにグリグリと天宮の奥に己をすりつけると、今度は身体をピタリと重ねて腰をゆっくり振り始めた。
「すげぇ、夢みたいだ。本物のブランに会えて、それが天宮さんで、こうしてるなんて」
うっとりと呟きながらふわふわの胸に顔を埋め、頬を擦り付けたり、たまに乳首に吸い付く。
その度に天宮の中がきゅうっと締まった。
「私だって……ぁんっ、んん、一緒なんだから……ああっ! そこっだめっ」
「ここ? ここがいいの?」
ぐちゅりぐちゅりとした音がいつの間にかパンッパンッと激しい音に変わり、与えられる快感も増していく。身体は無意識に経験したことのない快感から逃れようとするが抱え込まれて逃げられない。
喘ぎ続ける天宮の唇を塞ぎ、黒野はひたすらに反応の良いところを突いて責め立てる。
限界に達した天宮は黒野をぎゅーっと締め付け、その衝撃で黒野も達しそうになる。慌てて抜き、天宮のお腹へと一気に放った。あまりにも勢いがあったのか、天宮の鎖骨あたりまで飛んでいる。
黒野は苦笑すると、ティッシュで天宮の身体を拭き、抱きしめて頬や髪に口付けた。天宮は疲れたのかぐったりして好き放題にされている。
調子にのった黒野が至る所にキスをしていると止められた。
「どうかしまし、んっ」
「んっ。……ふふ」
不意打ちで唇を奪われた黒野が固まっていると、天宮がしてやったりという顔で笑う。
思わず真っ赤になった黒野だが、次の瞬間ニヤリと笑って天宮に覆いかぶさった。慌てて逃げだそうとする天宮。しかし、久しぶりの運動(?)で疲労してしまった身体では逃げられずあっさりと捕まった。
耳元で囁く黒野の言葉に天宮は青ざめる。
「元バスケ部で、現役廃人プレイヤーの体力と集中力舐めないでくださいね」
今にもログアウトしたそうなブランを前に、
ノワールは凶悪な笑みを見せると、ペロリと己の唇を舐め、ガブリと獲物に噛み付いた。
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