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始まりの卒業パーティ
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行きに乗ってきた豪華な馬車に押し込まれた後、ニコラスの合図でメルゼ邸に向けて走り出してしまった。
「リーン。こちらを向いて。顔みせて」
私を抱きかかえるように座ったニコラスが頭の上で喋っている。相変わらずハンカチ越しに繋いだ手はそのままだった。
「ちゃんと説明して下さい!!」
「説明ねー。じゃあさ、リーンは俺とアリアが君としか一緒にいない理由は知ってる?」
「えっ?」
「こーんなにも顔が良くて、家柄もいい俺たちだよ? 不思議に思わなかった?」
「……だって二人とも仲良くなる前は無表情だったし……二人でいるから友達いらないのかなって……」
「まぁそれもあるね。ただ、それだけじゃないよ。みんな俺たちが怖いから近寄ってこないの」
「どういうこと?」
「俺たちの持っている魔法は、手で触れた人の心の声が聞こえる」
「………えっ!!」
思わず今繋がっている手に力が入る。
(ニコラス! ニコラス! もしもし? 聞こえますか?)
「ぶはっ!! もしもしって……!」
(なっ! 何で笑うの!?)
「この話を聞いてそんな反応する人、初めてだよ」
(だって! 不思議なんだもの! 便利ね)
「そうだね。でもね。聞かれたく無い事を胸に秘めている人からするととっても厄介な魔法なんだよ。そして貴族なんて聞かれたら困ることだらけの集まりだよ」
ニコラスの瞳が細められる。何かを思い出しているような暗い瞳だった。
(そんな辛そうな顔しないで……いつものニコラスがいいい)
「うん。ありがとう」
(はっ! 聞こえてるのね)
「そうだよ。でもね。悪い事ばっかりじゃない。例えば……」
ニコラスが見上げていたリーンの頬を撫でた。顔に熱が一瞬で集まるのを感じる。近づいてきたニコラスの唇が、恥ずかしさで引き結んだリーンの唇と重なる。
(なっなっな………! キス?! なんでっあっやっ唇舐めないで! やっ! えっ……きもちい……)
「きもちよかった?」
「…………イイエ」
「うん。俺に隠し事なんてできないよ」
にっこりと深みのある笑顔が返ってきた。
「俺はある程度制御できるんだけどね。アリアは全くできなかったし、そのせいで人嫌いが酷かったんだよ。でも、君と出会ってから変わったね」
魔法科で最初に出会った頃のアリアを思い出す。人を視界に入れる事もしなかった。人形のような無表情。今では信じられないが、初めてアリアが笑った日は嬉しくて泣いた記憶がある。
「アリア……」
「君はどんな時でも、優しい、面白い声しか聞こえないからね」
「……褒めてる?」
「もちろん」
「アリアに笑顔をくれてありがとう。もう一度、人と関わる気持ちを持たせてくれてありがとう。リーン。君が好きだよ。ずっと一緒にいたい。だから俺と結婚して欲しい」
「……侯爵家となんて無理だよ!! 私の家は子爵だよ?! 身分が違いすぎる」
「問題なのは身分の事だけ? 条件は無くしてくれる?」
「……こんなに優しくてかっこいい人がずっと側にいて! 好きになるなって方が無理でしょ!! でもっ! 条件に当てはまらないって、自制してたのに!!」
「何で思っていることそのまま声に出ちゃうかなぁー」
ニコラスがくっくっと声を上げて笑っている。人には見せない、三人でいる時にだけ見せる無邪気な笑顔だった。
心臓が早鐘を打っている。自制なんて簡単に崩れてしまうと、気づいていた。だから、今日の卒業パーティーをいい思い出にしようと、自分に言い聞かせていた。
「その条件が俺にとっても自制だったんだけどね。もういらないかな」
すぐ近くでニコラスがボソリと呟いた。片腕で強く抱きしめられて、再びキスが始まる。再び足りなくなる酸素と共に思考が奪われていく頭に、ニコラスの心地よい声が響いている。
「ねぇ。リーン俺の事好き?」
「ふっんっんっ」
(……すき……)
「ほんっと素直でかわいいね」
キスがどんどん深くなり、酸素を求めて離れようとするが、後頭部を支えている手がそれを許さなかった。溢れた唾液は首をつたい垂れていく。ハッハッと、大きくなる呼吸が、コルセットで押し上られた胸元を強調するように大きく上下している。
頭を支えていた手がドレスの紐を解いたようだ。突然、解かれた開放感が体をかける。続いて同じようにコルセットの紐もどんどん解かれていく。ただでさえ大きく上下している胸が解放される時を期待して待っているようだった。
「やだっいやっ」
(コルセットが無くなったら全部見えちゃう!)
「そうだね。俺だけに見せて。他の誰にも見せたらだめだよ。アリアだってだめだ」
解いていく手は止まる事はなく、支えるものがなくなったリーンの胸はフルリ揺れてニコラスの眼前に晒された。咄嗟に片手で胸を隠したが、隠しきれない大きさを強調するだけになった。
はみ出している隙間からニコラスが舌を這わせていく。指まで一緒に舐めるので、くすぐったさに少し笑ってしまった。そのせいで緩んだ、指の間から乳首を口に含まれ、舌で転がされ、その度に声をあげるリーンをからかうように、遊ばれていく。
初めての感覚に震えるような快感が少しづつ腹部に溜まっていった。
相変わらず繋いだままの、怪我をしている手は、ニコラスによって押さえつけられ、動かすことができない。――手を離したら、また血が出てきてしまうかもしれない、いや、なんだか離れてしまうのがイヤかもしれない。そんなリーンの心の声は、全てニコラスに聞こえてしまっている。
ニコラスは、もう、我慢の限界だった。うっとりと、熱にあかされた顔でリーンを見下ろし、繋いだ手にキスをする。
「顔真っ赤。かわい。もう俺のものになろ? もう離してあげる気ないから諦めて」
「あのっ私っ……昔の記憶があるの! 絶倫騎士に抱かれて苦労した記憶が! だからそういうことが少し怖くて……」
「へぇ……? 俺以外に抱かれてる記憶?」
「私じゃないよ! でも、私は奥さんの視点で……。嫌だって言っても止めてくれないの。まだまだ終わらないよって笑ってて。それが辛そうで……」
「だからあの条件?」
「そうだよ」
「……今から抱くから。俺との事だけこれからは思い出して。知らない男との記憶なんて忘れて?」
「いっ今から?! ここで?!」
「もう、家までなんて待てないから」
「リーン。こちらを向いて。顔みせて」
私を抱きかかえるように座ったニコラスが頭の上で喋っている。相変わらずハンカチ越しに繋いだ手はそのままだった。
「ちゃんと説明して下さい!!」
「説明ねー。じゃあさ、リーンは俺とアリアが君としか一緒にいない理由は知ってる?」
「えっ?」
「こーんなにも顔が良くて、家柄もいい俺たちだよ? 不思議に思わなかった?」
「……だって二人とも仲良くなる前は無表情だったし……二人でいるから友達いらないのかなって……」
「まぁそれもあるね。ただ、それだけじゃないよ。みんな俺たちが怖いから近寄ってこないの」
「どういうこと?」
「俺たちの持っている魔法は、手で触れた人の心の声が聞こえる」
「………えっ!!」
思わず今繋がっている手に力が入る。
(ニコラス! ニコラス! もしもし? 聞こえますか?)
「ぶはっ!! もしもしって……!」
(なっ! 何で笑うの!?)
「この話を聞いてそんな反応する人、初めてだよ」
(だって! 不思議なんだもの! 便利ね)
「そうだね。でもね。聞かれたく無い事を胸に秘めている人からするととっても厄介な魔法なんだよ。そして貴族なんて聞かれたら困ることだらけの集まりだよ」
ニコラスの瞳が細められる。何かを思い出しているような暗い瞳だった。
(そんな辛そうな顔しないで……いつものニコラスがいいい)
「うん。ありがとう」
(はっ! 聞こえてるのね)
「そうだよ。でもね。悪い事ばっかりじゃない。例えば……」
ニコラスが見上げていたリーンの頬を撫でた。顔に熱が一瞬で集まるのを感じる。近づいてきたニコラスの唇が、恥ずかしさで引き結んだリーンの唇と重なる。
(なっなっな………! キス?! なんでっあっやっ唇舐めないで! やっ! えっ……きもちい……)
「きもちよかった?」
「…………イイエ」
「うん。俺に隠し事なんてできないよ」
にっこりと深みのある笑顔が返ってきた。
「俺はある程度制御できるんだけどね。アリアは全くできなかったし、そのせいで人嫌いが酷かったんだよ。でも、君と出会ってから変わったね」
魔法科で最初に出会った頃のアリアを思い出す。人を視界に入れる事もしなかった。人形のような無表情。今では信じられないが、初めてアリアが笑った日は嬉しくて泣いた記憶がある。
「アリア……」
「君はどんな時でも、優しい、面白い声しか聞こえないからね」
「……褒めてる?」
「もちろん」
「アリアに笑顔をくれてありがとう。もう一度、人と関わる気持ちを持たせてくれてありがとう。リーン。君が好きだよ。ずっと一緒にいたい。だから俺と結婚して欲しい」
「……侯爵家となんて無理だよ!! 私の家は子爵だよ?! 身分が違いすぎる」
「問題なのは身分の事だけ? 条件は無くしてくれる?」
「……こんなに優しくてかっこいい人がずっと側にいて! 好きになるなって方が無理でしょ!! でもっ! 条件に当てはまらないって、自制してたのに!!」
「何で思っていることそのまま声に出ちゃうかなぁー」
ニコラスがくっくっと声を上げて笑っている。人には見せない、三人でいる時にだけ見せる無邪気な笑顔だった。
心臓が早鐘を打っている。自制なんて簡単に崩れてしまうと、気づいていた。だから、今日の卒業パーティーをいい思い出にしようと、自分に言い聞かせていた。
「その条件が俺にとっても自制だったんだけどね。もういらないかな」
すぐ近くでニコラスがボソリと呟いた。片腕で強く抱きしめられて、再びキスが始まる。再び足りなくなる酸素と共に思考が奪われていく頭に、ニコラスの心地よい声が響いている。
「ねぇ。リーン俺の事好き?」
「ふっんっんっ」
(……すき……)
「ほんっと素直でかわいいね」
キスがどんどん深くなり、酸素を求めて離れようとするが、後頭部を支えている手がそれを許さなかった。溢れた唾液は首をつたい垂れていく。ハッハッと、大きくなる呼吸が、コルセットで押し上られた胸元を強調するように大きく上下している。
頭を支えていた手がドレスの紐を解いたようだ。突然、解かれた開放感が体をかける。続いて同じようにコルセットの紐もどんどん解かれていく。ただでさえ大きく上下している胸が解放される時を期待して待っているようだった。
「やだっいやっ」
(コルセットが無くなったら全部見えちゃう!)
「そうだね。俺だけに見せて。他の誰にも見せたらだめだよ。アリアだってだめだ」
解いていく手は止まる事はなく、支えるものがなくなったリーンの胸はフルリ揺れてニコラスの眼前に晒された。咄嗟に片手で胸を隠したが、隠しきれない大きさを強調するだけになった。
はみ出している隙間からニコラスが舌を這わせていく。指まで一緒に舐めるので、くすぐったさに少し笑ってしまった。そのせいで緩んだ、指の間から乳首を口に含まれ、舌で転がされ、その度に声をあげるリーンをからかうように、遊ばれていく。
初めての感覚に震えるような快感が少しづつ腹部に溜まっていった。
相変わらず繋いだままの、怪我をしている手は、ニコラスによって押さえつけられ、動かすことができない。――手を離したら、また血が出てきてしまうかもしれない、いや、なんだか離れてしまうのがイヤかもしれない。そんなリーンの心の声は、全てニコラスに聞こえてしまっている。
ニコラスは、もう、我慢の限界だった。うっとりと、熱にあかされた顔でリーンを見下ろし、繋いだ手にキスをする。
「顔真っ赤。かわい。もう俺のものになろ? もう離してあげる気ないから諦めて」
「あのっ私っ……昔の記憶があるの! 絶倫騎士に抱かれて苦労した記憶が! だからそういうことが少し怖くて……」
「へぇ……? 俺以外に抱かれてる記憶?」
「私じゃないよ! でも、私は奥さんの視点で……。嫌だって言っても止めてくれないの。まだまだ終わらないよって笑ってて。それが辛そうで……」
「だからあの条件?」
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