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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Sacred Dagger/3
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霊力の集まっている場所ははっきりと濃くなる。勝利をほしがる崇剛は血も涙もなく相手の急所――弱点をついてくる。
迫ってきた霊ののど元をえぐるようにダガーで突き刺し、ダーツの矢を投げる要領で、真正面へ向かって冷酷無残に射放った。
死霊という特急列車の通過をホームから見送るように、冷静な水色の瞳から霊はみるみる遠くなっていき、ひび割れたステンドグラスは、
ガシャンッッッ!!!!
ダガーから発せられるメシアの強い力で、派手に砕け散った。再び左腰元の鞘にしまったままの物質界のダガーへと手をかけ、霊界のものを取り出す。
左手に刃物を握ったまま自分の右肩へ向かって、自傷行為につながりそうな勢いで振り下ろし、
「そちらからくると思っていましたよ」
「ウワッ!!」
苦痛の声が上がるが、幽霊の白い手に刺さるだけで、一瞬ゆらっと揺れてすぐに元へ戻ってしまった。
自分の体に浮遊霊の手がかけられてしまったが、優雅な聖霊師はなぜかくすりと笑う。
「困りましたね。正神界だったのですね、あなたは」
神父の体はぐらっと後ろへ傾き、そのまま四方八方から別の手たちが伸びてきて、肉体から魂が無理やり引きずり出された。
重力のかかる感覚が軽くなり、すぐ目の前に瑠璃色の貴族服を着た自分の後ろ姿が立っていた。
まるで糸が切れた操り人形のように床に崩れ落ち、自分を自分が見ている状況下でも、聖霊師の崇剛は優雅に微笑む。
「幽体離脱ですか。さて、どのようにしましょうか?」
このままでは死という出口のない迷路へと、悪霊たちによって投げ込まれてしまう。
メシアという霊力の高いものに惹かれ、浮遊霊は次々と集まってきてしまい、敵の数は最初の倍以上になっていた。
しかし、焦りという感情を簡単に抑え込める、崇剛の冷静な頭脳は絶えず正常に稼動中。
(そうですね……? こちらのようにしましょうか?)
同じ次元となった悪霊の手を、細く神経質なそれで直接剥がしながら、青白い触手の群れを次々とダガーで迎え撃つ。
「左右両方でしょうか!」
素早くダガーを分身させ、同時に短剣二本が銃口から放たれた弾丸のように、宙で鉛色の尾を引きながら離れてゆく。
「どちらも邪神界だったみたいです」
ふたつの悪霊が爆風を巻き起こしつつ、濁った大理石の上を横滑りしていき、祭壇と、
ズバンッ!
ガシャンッ!
ステンドグラスにそれぞれ磔となった。
それにしても、戦闘開始時に願った誰かは未だに出てこない。戦況は劣勢に傾きつつある。
「仕方がありませんね。あの方にも困ったものです」
神父の手に素早く握られた新しいダガー。次々に襲いかかる浮遊霊を縦横無尽にさけながら、聖霊師はあきれたように、天へ向かって問いかけた。
「どのような可能性を導き出されたのですか?」
可能性――
崇剛の思考回路を形作る言葉。
不浄な霊界で優雅な声が舞うが、それでも誰もこない。崇剛は霊を斬り裂きながら少しずつあとずさって、とうとう壁際へ追い詰められてしまった。
古い聖堂とはいえ、聖なる結界がうっすらと張られている。神に与えられたメシアを持っている崇剛は、もれずにそれに体をさえぎられてしまい、絶体絶命のピンチを迎えた。
手がふたつ同時に伸びてきて、聖霊師は両手首に手錠をかけられたようにつかまれてしまった。そのまま壁に強く押しつけられ、中性的な唇から思わず苦痛の吐息がもれる。
「くっ!」
優雅な神父は多くの悪霊に拘束されてしまった。手首をロープか何かで縛られたように、頭上高くへ無理やり持ち上げられる。
袖口で優美を讃えているロイヤルブルーサファイアのカフスボタンは、持ち主から最高潮に離された。
「っ……!」
聖霊師が持っていられなくなったダガーが強制的に戦闘不能へを追いやられる。ストンと床に落ち、縦に突き刺さった。
「苦しめばいい……」
「悲しめばいい……」
「死ねばいい……」
丸腰で無防備となってしまった神父へ、悪霊の青白い口から浴びせられる怨念の数々。
迫ってきた霊ののど元をえぐるようにダガーで突き刺し、ダーツの矢を投げる要領で、真正面へ向かって冷酷無残に射放った。
死霊という特急列車の通過をホームから見送るように、冷静な水色の瞳から霊はみるみる遠くなっていき、ひび割れたステンドグラスは、
ガシャンッッッ!!!!
ダガーから発せられるメシアの強い力で、派手に砕け散った。再び左腰元の鞘にしまったままの物質界のダガーへと手をかけ、霊界のものを取り出す。
左手に刃物を握ったまま自分の右肩へ向かって、自傷行為につながりそうな勢いで振り下ろし、
「そちらからくると思っていましたよ」
「ウワッ!!」
苦痛の声が上がるが、幽霊の白い手に刺さるだけで、一瞬ゆらっと揺れてすぐに元へ戻ってしまった。
自分の体に浮遊霊の手がかけられてしまったが、優雅な聖霊師はなぜかくすりと笑う。
「困りましたね。正神界だったのですね、あなたは」
神父の体はぐらっと後ろへ傾き、そのまま四方八方から別の手たちが伸びてきて、肉体から魂が無理やり引きずり出された。
重力のかかる感覚が軽くなり、すぐ目の前に瑠璃色の貴族服を着た自分の後ろ姿が立っていた。
まるで糸が切れた操り人形のように床に崩れ落ち、自分を自分が見ている状況下でも、聖霊師の崇剛は優雅に微笑む。
「幽体離脱ですか。さて、どのようにしましょうか?」
このままでは死という出口のない迷路へと、悪霊たちによって投げ込まれてしまう。
メシアという霊力の高いものに惹かれ、浮遊霊は次々と集まってきてしまい、敵の数は最初の倍以上になっていた。
しかし、焦りという感情を簡単に抑え込める、崇剛の冷静な頭脳は絶えず正常に稼動中。
(そうですね……? こちらのようにしましょうか?)
同じ次元となった悪霊の手を、細く神経質なそれで直接剥がしながら、青白い触手の群れを次々とダガーで迎え撃つ。
「左右両方でしょうか!」
素早くダガーを分身させ、同時に短剣二本が銃口から放たれた弾丸のように、宙で鉛色の尾を引きながら離れてゆく。
「どちらも邪神界だったみたいです」
ふたつの悪霊が爆風を巻き起こしつつ、濁った大理石の上を横滑りしていき、祭壇と、
ズバンッ!
ガシャンッ!
ステンドグラスにそれぞれ磔となった。
それにしても、戦闘開始時に願った誰かは未だに出てこない。戦況は劣勢に傾きつつある。
「仕方がありませんね。あの方にも困ったものです」
神父の手に素早く握られた新しいダガー。次々に襲いかかる浮遊霊を縦横無尽にさけながら、聖霊師はあきれたように、天へ向かって問いかけた。
「どのような可能性を導き出されたのですか?」
可能性――
崇剛の思考回路を形作る言葉。
不浄な霊界で優雅な声が舞うが、それでも誰もこない。崇剛は霊を斬り裂きながら少しずつあとずさって、とうとう壁際へ追い詰められてしまった。
古い聖堂とはいえ、聖なる結界がうっすらと張られている。神に与えられたメシアを持っている崇剛は、もれずにそれに体をさえぎられてしまい、絶体絶命のピンチを迎えた。
手がふたつ同時に伸びてきて、聖霊師は両手首に手錠をかけられたようにつかまれてしまった。そのまま壁に強く押しつけられ、中性的な唇から思わず苦痛の吐息がもれる。
「くっ!」
優雅な神父は多くの悪霊に拘束されてしまった。手首をロープか何かで縛られたように、頭上高くへ無理やり持ち上げられる。
袖口で優美を讃えているロイヤルブルーサファイアのカフスボタンは、持ち主から最高潮に離された。
「っ……!」
聖霊師が持っていられなくなったダガーが強制的に戦闘不能へを追いやられる。ストンと床に落ち、縦に突き刺さった。
「苦しめばいい……」
「悲しめばいい……」
「死ねばいい……」
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