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2章
2ー1
***
昼休みのあとの体育→現代文の流れは寝るしかないって。
叶太はさっきから口から出っ放しのあくびを噛み殺しながら、筆圧の濃い黒板文字をぼんやりと眺めていた。
現代文の佐多先生ことサティは、木魚を打つリズムで『羅生門』の一節を読み上げている。おじいちゃん先生の音読ほど眠たくなるものはない。
あーだめだ。こりゃ寝る。むしろ寝させるつもりで読んでいる。周りを見ると、他の人たちも睡魔と闘っているようだ。頭をカックンカックンさせている同級生がちらほら確認できる。
でもサティは急に音読する人を当ててくるから注意しなくちゃいけない。特に見ていないようで見ているらしく、眠そうにしている人をきっちり指定してくるから怖いのだ。
だから寝るわけにはいかない……と用心していても、眠気は無情にも襲ってくるわけで。
こめかみを揉みつつ、眠気で重くなった目を起こす。ちょうど外から体育の声が聞こえてきたタイミングで、叶太は窓の外に目をやった。
さっきまで自分のクラスが授業をしていたグラウンドでは、二年生が走り幅跳びをしている。体操服を着た青が、レーンの外でクラスメイトと話している姿が見えた。
遠くから青の周りにいる人と見比べると、体の大きさは歴然だ。派手な髪型や髪色はしていないけれど、頭が小さいのに背は他の人より頭一つ分高く、モデルみたいだ。
あえて目で追いかけるつもりはなくても、勝手に目に入ってくる。それぐらい目立つということなんだろう。おまけにイケメンでスポーツもできて成績優秀となれば、モテない方がおかしいか。今までわからなかったけど。
ああ、世の中の女子に言いたい。男の良さはそういう目に見えるものだけじゃないんだぞ、と。
また青に対して羨ましい気持ちがふつっと湧きかけたが、幸い前の席でうつらうつらしていた寺嶋がサティに当てられたことで気が逸れた。
後ろの寺嶋が当てられたことで眠気も吹っ飛び、無事に六時間目を最後まで終えたあと。担任待ちのホームルーム前の時間に、それは訪れた。
「椿くん、二年生の子が呼んでるよ」
席で鞄にノートを詰めながら寺嶋と話していると、廊下から戻ってきた三上さんが教えてくれた。
「二年が? 誰だろ」
「五十嵐じゃね?」
寺嶋はそう言うが、青だったら教室がもっとざわつく気がする。それこそ女子が黙っていないだろう。そこでハッとひらめき、「もしかして女子――」と言いかけたが、
「ではないね」
と表情一つ変えない三上さんに否定される。
「ですよね……」
伝言役になってくれた三上さんに軽く礼を言い、叶太は一人で廊下へ出た。
教室を背にドアの横にいた人物。それは体操服を着た男子生徒だった。体育の授業後にそのまま三年の教室まで来たのか、額に掻いた汗を手で拭いている。どこかで見たような気がするけど、すぐには思い出せなかった。
神妙な面持ちで上履きの先を見ている男子に、叶太は声をかけた。
「オレのこと呼んだ?」
男子はハッと顔を上げた。
「す、すみませんっ。変なタイミングで呼んでしまって」
声を聞いて思い出した。
昼休みのあとの体育→現代文の流れは寝るしかないって。
叶太はさっきから口から出っ放しのあくびを噛み殺しながら、筆圧の濃い黒板文字をぼんやりと眺めていた。
現代文の佐多先生ことサティは、木魚を打つリズムで『羅生門』の一節を読み上げている。おじいちゃん先生の音読ほど眠たくなるものはない。
あーだめだ。こりゃ寝る。むしろ寝させるつもりで読んでいる。周りを見ると、他の人たちも睡魔と闘っているようだ。頭をカックンカックンさせている同級生がちらほら確認できる。
でもサティは急に音読する人を当ててくるから注意しなくちゃいけない。特に見ていないようで見ているらしく、眠そうにしている人をきっちり指定してくるから怖いのだ。
だから寝るわけにはいかない……と用心していても、眠気は無情にも襲ってくるわけで。
こめかみを揉みつつ、眠気で重くなった目を起こす。ちょうど外から体育の声が聞こえてきたタイミングで、叶太は窓の外に目をやった。
さっきまで自分のクラスが授業をしていたグラウンドでは、二年生が走り幅跳びをしている。体操服を着た青が、レーンの外でクラスメイトと話している姿が見えた。
遠くから青の周りにいる人と見比べると、体の大きさは歴然だ。派手な髪型や髪色はしていないけれど、頭が小さいのに背は他の人より頭一つ分高く、モデルみたいだ。
あえて目で追いかけるつもりはなくても、勝手に目に入ってくる。それぐらい目立つということなんだろう。おまけにイケメンでスポーツもできて成績優秀となれば、モテない方がおかしいか。今までわからなかったけど。
ああ、世の中の女子に言いたい。男の良さはそういう目に見えるものだけじゃないんだぞ、と。
また青に対して羨ましい気持ちがふつっと湧きかけたが、幸い前の席でうつらうつらしていた寺嶋がサティに当てられたことで気が逸れた。
後ろの寺嶋が当てられたことで眠気も吹っ飛び、無事に六時間目を最後まで終えたあと。担任待ちのホームルーム前の時間に、それは訪れた。
「椿くん、二年生の子が呼んでるよ」
席で鞄にノートを詰めながら寺嶋と話していると、廊下から戻ってきた三上さんが教えてくれた。
「二年が? 誰だろ」
「五十嵐じゃね?」
寺嶋はそう言うが、青だったら教室がもっとざわつく気がする。それこそ女子が黙っていないだろう。そこでハッとひらめき、「もしかして女子――」と言いかけたが、
「ではないね」
と表情一つ変えない三上さんに否定される。
「ですよね……」
伝言役になってくれた三上さんに軽く礼を言い、叶太は一人で廊下へ出た。
教室を背にドアの横にいた人物。それは体操服を着た男子生徒だった。体育の授業後にそのまま三年の教室まで来たのか、額に掻いた汗を手で拭いている。どこかで見たような気がするけど、すぐには思い出せなかった。
神妙な面持ちで上履きの先を見ている男子に、叶太は声をかけた。
「オレのこと呼んだ?」
男子はハッと顔を上げた。
「す、すみませんっ。変なタイミングで呼んでしまって」
声を聞いて思い出した。
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