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2章
2ー3
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「ヤバい、オレ、告白されるかもしんない……」
「は? 誰から?」
「たぶん男」
寺嶋は本気にしていないのか、「よかったじゃん」と適当な返事だ。
「よくねーよ」
コソコソ反論していると、「ほらそこ、静かに」と担任の注意する声が飛んでくる。
注意されてまで寺嶋に説明する勇気はなく、中途半端な状態で叶太はホームルームの時間をやり過ごした。
ホームルームが終わったあと、寺嶋はさっさと帰ってしまった。このあと予備校があるらしく、無理に引き留めることもできなかった。
問題の放課後はすぐ目の前だ。
「青も来てくんねーかな……」
席を立つ際、叶太は誰に言うでもなく、小さく口にする。いつもの教室。いつもの廊下。見慣れた風景のはずなのに、そのどれもが今はただただ違和感に包まれている。
青がいれば、少しはいつものように見えるんじゃないか。そんな気がして、仕方なかった。
***
家に帰ると、母親はいなかった。夕飯に使う食材の買い出しに行っているのか、リビングのテーブルの上には母親の書置きだけが残されていた。
『叶太へ 冷蔵庫にマイコさんからいただいたゼリーが入ってます。おいしいヨ♡』
語尾の文字がカタカナになっているところが、いつも妙に古くさいなと思う。母親に指摘すると、「え~そんなことないでしょ~」とむしろこっちの感性がおかしいみたいな雰囲気を出されるから言わないけど。
学校からの帰り道。傾いた夕陽はじめじめしていて、帰ったらすぐにシャワーを浴びたいくらいだった。普段ならこのままシャワーに直行するし、冷蔵庫に入っているゼリーをすぐ口にしているところだろう。
けれど今、叶太に食欲はない。早く自分の涼しい部屋に行き、一人で籠りたかった。
キッチンで手を洗ったついでに麦茶をがぶ飲みする。さっさと二階にある自分の部屋に行き、叶太は鞄を床に投げるように置いて、顔からベッドへとダイブした。
いつも制服のままベッドに上がるなと母親に怒られるけど、今日だけは勘弁してほしい。
――僕は叶太先輩のことが……好きです。
学校の裏庭で起こった先ほどの出来事を思い出し、全身がむず痒くなる。叶太はぐるんと体を捻り、天井をぼーっと見つめた。
「……北村、かぁ」
裏庭で落ち合った北村は、体操服から制服に着替え、汗もしっかり拭いた状態で叶太の前に立った。相変わらず目尻眉尻は下がり、緊張のあまり寒空の下に立つ人のごとくガチガチに震えていた。
けれど怯えたチワワのようには見えなかった。柴犬ぐらいには大きく見えたし、それぐらい覚悟を決めて自分を呼び出したんだなと感心した。
――僕、元々男子に惹かれることが多いんです。それで……五十嵐と話しているところを見るうちに、どんどん叶太先輩のことが気になるようになって。少し前に玄関で話したじゃないですか。その時に優しく声をかけてくれて、やっぱり好きだなって思ったんです。
ぎゅっと握り締めた北村の拳は、痛々しいぐらいにきつく結ばれていた。
青の友達なのに、モテモテな青ではなく自分に目をつけるとは。なかなか見る目があるじゃないかと思ったと同時に困った。
叶太は女子が好きだ。付き合いたいのも女子だし、申し訳ないけど男が好きな男の話は自分とは縁のない話だと思っていた。実際告白された今でも思っている。
「は? 誰から?」
「たぶん男」
寺嶋は本気にしていないのか、「よかったじゃん」と適当な返事だ。
「よくねーよ」
コソコソ反論していると、「ほらそこ、静かに」と担任の注意する声が飛んでくる。
注意されてまで寺嶋に説明する勇気はなく、中途半端な状態で叶太はホームルームの時間をやり過ごした。
ホームルームが終わったあと、寺嶋はさっさと帰ってしまった。このあと予備校があるらしく、無理に引き留めることもできなかった。
問題の放課後はすぐ目の前だ。
「青も来てくんねーかな……」
席を立つ際、叶太は誰に言うでもなく、小さく口にする。いつもの教室。いつもの廊下。見慣れた風景のはずなのに、そのどれもが今はただただ違和感に包まれている。
青がいれば、少しはいつものように見えるんじゃないか。そんな気がして、仕方なかった。
***
家に帰ると、母親はいなかった。夕飯に使う食材の買い出しに行っているのか、リビングのテーブルの上には母親の書置きだけが残されていた。
『叶太へ 冷蔵庫にマイコさんからいただいたゼリーが入ってます。おいしいヨ♡』
語尾の文字がカタカナになっているところが、いつも妙に古くさいなと思う。母親に指摘すると、「え~そんなことないでしょ~」とむしろこっちの感性がおかしいみたいな雰囲気を出されるから言わないけど。
学校からの帰り道。傾いた夕陽はじめじめしていて、帰ったらすぐにシャワーを浴びたいくらいだった。普段ならこのままシャワーに直行するし、冷蔵庫に入っているゼリーをすぐ口にしているところだろう。
けれど今、叶太に食欲はない。早く自分の涼しい部屋に行き、一人で籠りたかった。
キッチンで手を洗ったついでに麦茶をがぶ飲みする。さっさと二階にある自分の部屋に行き、叶太は鞄を床に投げるように置いて、顔からベッドへとダイブした。
いつも制服のままベッドに上がるなと母親に怒られるけど、今日だけは勘弁してほしい。
――僕は叶太先輩のことが……好きです。
学校の裏庭で起こった先ほどの出来事を思い出し、全身がむず痒くなる。叶太はぐるんと体を捻り、天井をぼーっと見つめた。
「……北村、かぁ」
裏庭で落ち合った北村は、体操服から制服に着替え、汗もしっかり拭いた状態で叶太の前に立った。相変わらず目尻眉尻は下がり、緊張のあまり寒空の下に立つ人のごとくガチガチに震えていた。
けれど怯えたチワワのようには見えなかった。柴犬ぐらいには大きく見えたし、それぐらい覚悟を決めて自分を呼び出したんだなと感心した。
――僕、元々男子に惹かれることが多いんです。それで……五十嵐と話しているところを見るうちに、どんどん叶太先輩のことが気になるようになって。少し前に玄関で話したじゃないですか。その時に優しく声をかけてくれて、やっぱり好きだなって思ったんです。
ぎゅっと握り締めた北村の拳は、痛々しいぐらいにきつく結ばれていた。
青の友達なのに、モテモテな青ではなく自分に目をつけるとは。なかなか見る目があるじゃないかと思ったと同時に困った。
叶太は女子が好きだ。付き合いたいのも女子だし、申し訳ないけど男が好きな男の話は自分とは縁のない話だと思っていた。実際告白された今でも思っている。
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