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3章
3ー1
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***
北村に告白され、青と喧嘩した金曜日から三日が経った。
世間は猛暑の月曜日を迎え、朝から各地で今年最高気温を更新しているとニュースが伝えていた。
「この土日、青くん来なかったねー」
叶太の母が、お天気ニュースを見ながら、アイスコーヒーの入ったグラスの氷をカラカラ回して言った。
「この暑さでダウンしてるのかな? ねえ、叶太聞いてない?」
突然話を振られ、叶太は齧りかけの食パンを口から離した。
「知らね」
気にしていない風に答えたが、内心ちょっと気になっていた。
土日になると大体、青はこれといった用事もなく椿家に遊びにやってくる。本人いわく自分の部屋は「西日がクソ暑い」らしく、避難目的で叶太の部屋に来ているのだという。
だけどこの土日、母が言うように青は来なかった。原因はおそらく金曜日のあれだろう。喧嘩……というほどじゃないと自分では思っているが、あんなにも切羽詰まった青を見るのは初めてだった。
どうしてあの日の青は、あんなにも余裕がなかったんだろう。考えてもわからなくて、この土日、叶太はモヤモヤした。
「昨日スーパーで舞子さんに会ったって言ってたじゃん。そこで聞いてないの」
「会ったけど、青くんのことは言ってなかったなー」
「じゃあ大丈夫なんじゃね」
苦い気持ちと一緒に、少し焦げたトーストを再び齧る。この前母親がセレクトショップで買ってきたりんごバターを塗ってみたものの、バター感が少なくてジャムみたいな味と食感だ。パンよりヨーグルトの方が合うんじゃね?なんて考えていると、テーブルに置いていたスマホが鳴った。
空いている左手を伸ばし、スマホを手に取る。画面に表示されたのは北村から届いたメッセージだった。
『おはようございます。今日の昼休みは予定ありますか? もしよかったら一緒にお昼ご飯を食べませんか?』
いわゆるランチタイムのお誘いだ。メッセージを見た途端、トーストが喉に詰まりそうになる。
先週の金曜日、告白されたあとに北村とラインを交換した。だが、この週末は特にやりとりをしていないので、あまりラインとかしないタイプなのかなと勝手に思っていた。
叶太は口の中のものをゴクッと飲み込んでから「まじか」と呟く。
断る理由がない。それに真剣に気持ちを伝えてくれたのだから、返事をするためにもまずは北村のことを知らなければ。
叶太は親指で画面をタップし、返事を打ち込んだ。
『いいよー』
『オレいつも弁当なんだけど、そっちは学食派?』
二回に分けて返信すると、叶太のメッセージにはすぐに既読がついた。
『ありがとうございます!』
『僕もお弁当派です。購買部の談話室で待ち合わせしませんか?』
向こうからも二回に分けてメッセージが送られてくる。これに叶太が『OK』のスタンプを送ったあと、北村から『楽しみにしてます!』と返ってきてラインは終わった。
余計なラインはしてこないし、かといってこちらが質問したらそれに答えて終わりではなく、次の質問をしてくれる。メッセージの終わりどころもわきまえているのか、こちらが終わりたいタイミングでやりとりを終わらせてくれる。
まだ数回しかラインで話していないけれど、北村とラインを交換してから今のところストレスはゼロだ。気を遣ってくれているのかもしれないが、連絡頻度が同じというのは付き合う上で大事な要素な気がする。北村と付き合ったらこんな感じなのかなと想像しつつ、叶太は食べ終わった朝ご飯の皿をシンクに置いた。
北村に告白され、青と喧嘩した金曜日から三日が経った。
世間は猛暑の月曜日を迎え、朝から各地で今年最高気温を更新しているとニュースが伝えていた。
「この土日、青くん来なかったねー」
叶太の母が、お天気ニュースを見ながら、アイスコーヒーの入ったグラスの氷をカラカラ回して言った。
「この暑さでダウンしてるのかな? ねえ、叶太聞いてない?」
突然話を振られ、叶太は齧りかけの食パンを口から離した。
「知らね」
気にしていない風に答えたが、内心ちょっと気になっていた。
土日になると大体、青はこれといった用事もなく椿家に遊びにやってくる。本人いわく自分の部屋は「西日がクソ暑い」らしく、避難目的で叶太の部屋に来ているのだという。
だけどこの土日、母が言うように青は来なかった。原因はおそらく金曜日のあれだろう。喧嘩……というほどじゃないと自分では思っているが、あんなにも切羽詰まった青を見るのは初めてだった。
どうしてあの日の青は、あんなにも余裕がなかったんだろう。考えてもわからなくて、この土日、叶太はモヤモヤした。
「昨日スーパーで舞子さんに会ったって言ってたじゃん。そこで聞いてないの」
「会ったけど、青くんのことは言ってなかったなー」
「じゃあ大丈夫なんじゃね」
苦い気持ちと一緒に、少し焦げたトーストを再び齧る。この前母親がセレクトショップで買ってきたりんごバターを塗ってみたものの、バター感が少なくてジャムみたいな味と食感だ。パンよりヨーグルトの方が合うんじゃね?なんて考えていると、テーブルに置いていたスマホが鳴った。
空いている左手を伸ばし、スマホを手に取る。画面に表示されたのは北村から届いたメッセージだった。
『おはようございます。今日の昼休みは予定ありますか? もしよかったら一緒にお昼ご飯を食べませんか?』
いわゆるランチタイムのお誘いだ。メッセージを見た途端、トーストが喉に詰まりそうになる。
先週の金曜日、告白されたあとに北村とラインを交換した。だが、この週末は特にやりとりをしていないので、あまりラインとかしないタイプなのかなと勝手に思っていた。
叶太は口の中のものをゴクッと飲み込んでから「まじか」と呟く。
断る理由がない。それに真剣に気持ちを伝えてくれたのだから、返事をするためにもまずは北村のことを知らなければ。
叶太は親指で画面をタップし、返事を打ち込んだ。
『いいよー』
『オレいつも弁当なんだけど、そっちは学食派?』
二回に分けて返信すると、叶太のメッセージにはすぐに既読がついた。
『ありがとうございます!』
『僕もお弁当派です。購買部の談話室で待ち合わせしませんか?』
向こうからも二回に分けてメッセージが送られてくる。これに叶太が『OK』のスタンプを送ったあと、北村から『楽しみにしてます!』と返ってきてラインは終わった。
余計なラインはしてこないし、かといってこちらが質問したらそれに答えて終わりではなく、次の質問をしてくれる。メッセージの終わりどころもわきまえているのか、こちらが終わりたいタイミングでやりとりを終わらせてくれる。
まだ数回しかラインで話していないけれど、北村とラインを交換してから今のところストレスはゼロだ。気を遣ってくれているのかもしれないが、連絡頻度が同じというのは付き合う上で大事な要素な気がする。北村と付き合ったらこんな感じなのかなと想像しつつ、叶太は食べ終わった朝ご飯の皿をシンクに置いた。
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