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4章
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意外と歩くのが遅いんだな。
北村と並んで歩いたときに思ったのは、そんな感想だった。
「えっ、佐多先生ってサティって呼ばれているんですか?」
叶太の隣を歩く北村が、驚いた顔でこっちを見た。
「うん、そう。逆に二年の間ではなんて呼んでんの?」
「普通に佐多先生って呼んでる人が多いと思いますけど」
「えーまじか。オレ、サティは全学年共通のあだ名だと思ってた」
現代文の佐多先生ことサティの話をしながら北村と歩いているのは、桜並木の通学路だ。
校舎から大通りまで続く桜並木も、今ではすっかり蝉の大合唱があちこちから聞こえている。
ホームルームを終えたあとの放課後。陽が傾きかけた桜並木には、自分たちの他に大通りへと向かって歩く生徒の姿がちらほらと見える。
北村から「一緒に帰りませんか」と誘われたのは、今日の昼休みのこと。談話室で一緒にお弁当を食べていたときだった。
ちなみに北村とは一週間前から、毎日昼休みを一緒に過ごしている。昼休みといっても、お弁当を食べてすぐ解散するだけの短い時間。叶太に受験対策の補講が入った日や、北村に委員会の集まりが入った日は、普通に別々になることもある。そんなゆるい昼休みは、叶太の日常にすんなりと溶け込んだ。
一緒に帰ろう、という提案も、別に毎日を指しているわけじゃない。北村の誘いが気軽なものであるとわかっていたから、叶太も軽い気持ちで「いいよー」と承諾した。
偶然にも北村の住んでいるマンションは、叶太の家がある住宅地から数百メートルしか離れていなかった。ネット上のマップを見せ合い、お互い「めっちゃ近いじゃん」と笑い合ったのは初めて喋った玄関でのこと。
学校を出てから並木道を経て、大通りを歩く。北村のマンションは叶太の家を経由して帰ることができるらしい。なんとなく叶太の家まで一緒に帰ることになった。
叶太は身長のわりに歩幅が広く、歩くペースが速いらしい。以前移動教室で廊下を歩いているとき、寺嶋に指摘されて知った。
だから自分より背の高い北村が、自分の歩くペースよりも遅いことがちょっと気になった。というか歩きにくいなと感じた。人には人のペースというものがあるので、しょうがないことなんだけど。
日が傾いているとはいえ、夏の夕方はまだまだ昼間みたいに明るい。歩いているだけで、脇や額から汗が噴き出す。
叶太の家は住宅に囲まれた丁字路を曲がってすぐの戸建てだ。白い外壁の中古物件で、叶太が三歳のときに引っ越してきた。
北村と他愛のない話をしながら角を曲がり、家の門扉が見えたそのときだった。向かいにある戸建ての門扉が、キイと開閉する音が聞こえてきた。
ふと音のする方を見ると、自転車を押しながら門扉の内側に入っていく青がいた。
「あ」
叶太の声に青が振り向く。
「なん――」
何か言いかけようとした青だが、叶太と北村を交互に見るや否や、きゅっと口を結んだ。
「……なんだ。北村もいたのか」
額から汗が伝っているというのに、相変わらず涼しげな顔だ。青は引き続き自転車を押して庭に入ると、門扉を閉めた。
意外と歩くのが遅いんだな。
北村と並んで歩いたときに思ったのは、そんな感想だった。
「えっ、佐多先生ってサティって呼ばれているんですか?」
叶太の隣を歩く北村が、驚いた顔でこっちを見た。
「うん、そう。逆に二年の間ではなんて呼んでんの?」
「普通に佐多先生って呼んでる人が多いと思いますけど」
「えーまじか。オレ、サティは全学年共通のあだ名だと思ってた」
現代文の佐多先生ことサティの話をしながら北村と歩いているのは、桜並木の通学路だ。
校舎から大通りまで続く桜並木も、今ではすっかり蝉の大合唱があちこちから聞こえている。
ホームルームを終えたあとの放課後。陽が傾きかけた桜並木には、自分たちの他に大通りへと向かって歩く生徒の姿がちらほらと見える。
北村から「一緒に帰りませんか」と誘われたのは、今日の昼休みのこと。談話室で一緒にお弁当を食べていたときだった。
ちなみに北村とは一週間前から、毎日昼休みを一緒に過ごしている。昼休みといっても、お弁当を食べてすぐ解散するだけの短い時間。叶太に受験対策の補講が入った日や、北村に委員会の集まりが入った日は、普通に別々になることもある。そんなゆるい昼休みは、叶太の日常にすんなりと溶け込んだ。
一緒に帰ろう、という提案も、別に毎日を指しているわけじゃない。北村の誘いが気軽なものであるとわかっていたから、叶太も軽い気持ちで「いいよー」と承諾した。
偶然にも北村の住んでいるマンションは、叶太の家がある住宅地から数百メートルしか離れていなかった。ネット上のマップを見せ合い、お互い「めっちゃ近いじゃん」と笑い合ったのは初めて喋った玄関でのこと。
学校を出てから並木道を経て、大通りを歩く。北村のマンションは叶太の家を経由して帰ることができるらしい。なんとなく叶太の家まで一緒に帰ることになった。
叶太は身長のわりに歩幅が広く、歩くペースが速いらしい。以前移動教室で廊下を歩いているとき、寺嶋に指摘されて知った。
だから自分より背の高い北村が、自分の歩くペースよりも遅いことがちょっと気になった。というか歩きにくいなと感じた。人には人のペースというものがあるので、しょうがないことなんだけど。
日が傾いているとはいえ、夏の夕方はまだまだ昼間みたいに明るい。歩いているだけで、脇や額から汗が噴き出す。
叶太の家は住宅に囲まれた丁字路を曲がってすぐの戸建てだ。白い外壁の中古物件で、叶太が三歳のときに引っ越してきた。
北村と他愛のない話をしながら角を曲がり、家の門扉が見えたそのときだった。向かいにある戸建ての門扉が、キイと開閉する音が聞こえてきた。
ふと音のする方を見ると、自転車を押しながら門扉の内側に入っていく青がいた。
「あ」
叶太の声に青が振り向く。
「なん――」
何か言いかけようとした青だが、叶太と北村を交互に見るや否や、きゅっと口を結んだ。
「……なんだ。北村もいたのか」
額から汗が伝っているというのに、相変わらず涼しげな顔だ。青は引き続き自転車を押して庭に入ると、門扉を閉めた。
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