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4章
4ー2
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「なんだよその言い方は! ごめんなー、あいつ愛想なくて」
青の代わりに謝る。北村は「大丈夫です」と慣れていると言わんばかりの表情で笑った。
「そういえば椿先輩は今月の二十三日って、何か予定ありますか? テスト期間明けの、最初の土曜日なんですけど」
突然北村が聞いてくる。夏休み前のテストは二週間後から始まる予定だ。わかっていたのに、なんとなくワンクッション挟みたくなって「期末の?」と聞き返す。北村は「はい」と頷いた。
「先輩、この前ブラレイが好きって言ってたじゃないですか。二十五日から、南武遊園地でコラボするみたいで」
ブラレイというのは、今叶太がハマっている少年漫画が原作のアニメだ。『ブラック・レインド』というダークファンタジーで、こないだ青に貸しそびれた漫画でもある。
「え、まじで? ブラレイ、コラボすんの?」
「はい。さっき公式から発表があったんです」
北村はスマホでSNSの画面を開き、公式のアカウントを見せてくれた。
好きな作品が遊園地とコラボする。きっとコラボグッズとかコラボメニューがあるのだろう。叶太はコラボメニューやコラボグッズなど、限定のものにめっぽう弱い。今までハマった作品がカフェや遊園地とコラボしたら、誰かしら友達を誘って行くほどだ。
「やべー、めっちゃ行きたい」
北村のスマホを食い入るように見ながら、叶太は呟いた。
「よかったら一緒に行きませんか?」
それは不意打ちの誘い。「え」と頭を上げると、北村がニコッと笑った。
ちなみにコラボ系のカフェには、一度だけ青を誘って行ったことがある。でもそのときは女性ファンの多いアニメ作品だったこと、そして青の整ったビジュも相まって、カフェで女性客にジロジロ見られて恥ずかしかった。それ以来、コラボ系のカフェやイベントに青を誘うことはやめた。
でも今回は……一緒に行く相手は北村ということになるのか。今回のアニメはダークファンタジーということもあって、女性ファンはもちろん男性ファンも多いと聞く。青と一緒に行ったときみたいに、ジロジロ見られる心配もないだろう。
北村とは一緒にいて、もの凄くドキドキするわけじゃない。歩くペースが合わなくても、時間や距離感は叶太に合わせてくれる。何よりいいやつだし、居心地は悪くない。
何より好きなアニメと遊園地のコラボに誘ってくれた。断る理由が見つからなかった。
でも……どうしてだろう。学校の外で会うことになるからだろうか。いまいち気が乗らなかった。
「えっと……」
言葉に詰まった理由は、すぐに判明した。
……――シュッポ、シュッポ、シュッポ、シュッポ、シュッポ――。
そう、さっきから叶太たちの近くで鳴っている、気の抜けるこの音。北村への返事の前に、まずはこの耳障りな音をなんとかしたかった。
「おい青! さっきからシュポシュポうるせーんだけど!」
自宅の庭にいる青が、「あ?」と気だるげに頭を上げた。自転車に空気を入れている最中のようで、青の隣には自転車が、手には空気入れがあった。
「空気入れる前にまずは読め!」
「なんで?」
平然と聞き返してくると、青は続けた。
「ここオレんちだし、何しようがオレの勝手だろ」
「それはそう! でもこのタイミングで空気入れなくてもいいんじゃねーの」
「無理。明日の朝じゃ忘れる」
ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。青の無神経な態度にイライラしていると、北村はその様子を見ながら苦笑いした。
青の代わりに謝る。北村は「大丈夫です」と慣れていると言わんばかりの表情で笑った。
「そういえば椿先輩は今月の二十三日って、何か予定ありますか? テスト期間明けの、最初の土曜日なんですけど」
突然北村が聞いてくる。夏休み前のテストは二週間後から始まる予定だ。わかっていたのに、なんとなくワンクッション挟みたくなって「期末の?」と聞き返す。北村は「はい」と頷いた。
「先輩、この前ブラレイが好きって言ってたじゃないですか。二十五日から、南武遊園地でコラボするみたいで」
ブラレイというのは、今叶太がハマっている少年漫画が原作のアニメだ。『ブラック・レインド』というダークファンタジーで、こないだ青に貸しそびれた漫画でもある。
「え、まじで? ブラレイ、コラボすんの?」
「はい。さっき公式から発表があったんです」
北村はスマホでSNSの画面を開き、公式のアカウントを見せてくれた。
好きな作品が遊園地とコラボする。きっとコラボグッズとかコラボメニューがあるのだろう。叶太はコラボメニューやコラボグッズなど、限定のものにめっぽう弱い。今までハマった作品がカフェや遊園地とコラボしたら、誰かしら友達を誘って行くほどだ。
「やべー、めっちゃ行きたい」
北村のスマホを食い入るように見ながら、叶太は呟いた。
「よかったら一緒に行きませんか?」
それは不意打ちの誘い。「え」と頭を上げると、北村がニコッと笑った。
ちなみにコラボ系のカフェには、一度だけ青を誘って行ったことがある。でもそのときは女性ファンの多いアニメ作品だったこと、そして青の整ったビジュも相まって、カフェで女性客にジロジロ見られて恥ずかしかった。それ以来、コラボ系のカフェやイベントに青を誘うことはやめた。
でも今回は……一緒に行く相手は北村ということになるのか。今回のアニメはダークファンタジーということもあって、女性ファンはもちろん男性ファンも多いと聞く。青と一緒に行ったときみたいに、ジロジロ見られる心配もないだろう。
北村とは一緒にいて、もの凄くドキドキするわけじゃない。歩くペースが合わなくても、時間や距離感は叶太に合わせてくれる。何よりいいやつだし、居心地は悪くない。
何より好きなアニメと遊園地のコラボに誘ってくれた。断る理由が見つからなかった。
でも……どうしてだろう。学校の外で会うことになるからだろうか。いまいち気が乗らなかった。
「えっと……」
言葉に詰まった理由は、すぐに判明した。
……――シュッポ、シュッポ、シュッポ、シュッポ、シュッポ――。
そう、さっきから叶太たちの近くで鳴っている、気の抜けるこの音。北村への返事の前に、まずはこの耳障りな音をなんとかしたかった。
「おい青! さっきからシュポシュポうるせーんだけど!」
自宅の庭にいる青が、「あ?」と気だるげに頭を上げた。自転車に空気を入れている最中のようで、青の隣には自転車が、手には空気入れがあった。
「空気入れる前にまずは読め!」
「なんで?」
平然と聞き返してくると、青は続けた。
「ここオレんちだし、何しようがオレの勝手だろ」
「それはそう! でもこのタイミングで空気入れなくてもいいんじゃねーの」
「無理。明日の朝じゃ忘れる」
ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。青の無神経な態度にイライラしていると、北村はその様子を見ながら苦笑いした。
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