【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ

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6章

6-8

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 それから数分は花より団子状態で、叶太は焼きそばと唐揚げを夢中で食べた。泣いたり笑ったりと忙しかったせいで、腹が減っていたのだ。

 それはようやく花火を見上げながら、ラムネを飲んでいたときのこと。プラスチック瓶の中でビー玉がカチャンと鳴ったそのとき、叶太の左手に何かが触れた。

 え、と驚いてラムネ瓶から口を離す。隣を見ると、頬を赤くさせた北村が花火を見上げていた。

 自分の手に触れているもの――それは北村の手だった。重なるように乗せた手は、控えめに叶太の手を包んでいた。

「突然すみません。花火の間だけ……こうしていても、いいですか」

 よほど緊張しているのか。北村の手は小刻みに震えている。自分相手に、こんな風に緊張して、優しく触れてくれる人がいる。そこに男だとか女だとか、そんなものは関係ないんだなと思った。

 叶太は頷くことも、被せられた手を払うこともできず、サンダルの先っぽに目を落とした。

 北村の精一杯の行動にじんとした。なんて自分は恵まれているんだろう。

 でも……。

 さっき青と繋いだ右手を意識する。じっとりと汗が滲んでくる。ふと斜め前を見ると、ちょうど後ろを向いたばかりの青と目が合った。ドキッとした。悪いことをしているような衝動に突き動かされる。これは……罪悪感だろうか。

 青の視線が、叶太と北村の繋がれた手に刺さる。それもほんの一瞬のことだった。

 青はすぐさま顔を前に戻すと、再び花火を見上げた。青の目の中で、まばゆい火の粉が散っている。自分と北村が手を繋いでいる場面を見ても、表情一つ変えなかった。興味が……なさそうだった。

 ああ、どうしよう。なんだかものすごくショックだ。

 北村や他の観客らが花火に夢中になっている間、叶太はほとんど下を向いていた。だって前を見たら、青が目に入る。今、青を見たら泣いてしまうと思った。

 どうしてこんなときに気づいてしまったんだろう。北村と手を繋ぎながら、こんな気持ちに胸焦がれているんだろう。

 自分は青のことが好きなんだって。


***


 夏休みが明けて二学期が始まった直後、あるニュースが校内を騒がせた。それは青に関することだった。

 本人からは聞いていない。クラスの男子が廊下で話しているところを、ちょうど通りがかったときに知った。

 ――二年の五十嵐青に彼女ができたらしい。

 耳に入ってきた瞬間、叶太は息を止めた。

 まさか。まさか。青に限ってそんな。

 信じたくないのに、その報せはたちまち校内の壁や床から聞こえてくるようになった。噂レベルから成長していくのに、時間もかからなかった。

 叶太が直視できる頃には、『真実』となって校内のいたるところに漂っていた。




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