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7章
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「あれ、どこ行くん?」
まだミックス弁当を食べている寺嶋が頭を上げる。
「ゴミ捨ててくる」
空になった牛乳パックとパン袋を手にした叶太は、椅子から立ち上がった。思いのほか椅子の足がキイッと響いてしまい、詩乃と詩乃の取り巻きが一斉に叶太の方を見る。
「あ、ごめん」
形ばかりの謝罪を口にしたあと、逃げるように教室から廊下へと出た。
耳も心臓も痛い。これ以上詩乃の話を聞いていたくなかった。あれだけ詩乃が周りに自慢しているし、これだけ第三者にも知られているのだ。詩乃が嘘を言いふらしているとは思えなかった。
廊下に設置されたゴミ箱に紙パックとパン袋を捨てる。まだ昼休みが終わるまでに二十分以上ある。教室には戻りたくなかった。
とりあえず新しい飲み物でも買うか。叶太は談話室の自販機に向かおうと、廊下の端にある階段を降りることにした。
踊り場まで降りたところで、ちょうど下の階から登ってきた相手とかち合った。
「叶太」
叶太の前に立ちふさがった相手。それは青だった。突然出くわした衝撃で、心臓が口から飛び出そうだった。咄嗟に言葉が出てこなくなる。
「……おう」
絞り出した声は、自分でも驚くほど低いものだった。
青が登った先は三年生の教室だ。詩乃に会いにきたのだろうか。そんな想像に、胸がギュッと締め付けられる。早くこの場所からいなくなりたかった。
叶太は相手の視線から逃げるよう、目を下に逸らした。青の横を通り、階段を下ろうとした瞬間、「おい」の声掛けとともに腕を掴まれる。
「……なに」
「どこ行くんだよ」
青こそどこに……誰のところに行くつもりで階段を登ってたんだよ。言いたい言葉が喉まで出かかったが、ぐっと飲み込んだ。
「なんでおまえにいちいちそんなこと言わなくちゃいけないの。どこでもいいだろ」
「北村のところか? あいつなら今日は委員会の集まりがあって教室には――」
聞いてもいないのに、青の口から聞かされる北村の情報。ショックだった。やっぱり青は北村と自分が早くくっつけばいいと思っていたんだ。応援……していたんだ。
叶太はぐいっと腕を下にして、青の手を振り解いた。
「知ってる」
噓だ。北村とはもう連絡を取っていないから知らない。
まさか昔からの仲の自分が、青のことを好きだなんて微塵も思っていないんだろう。それがまざまざとわかってしまい、胸が締め付けられる。
「おまえこそ、さっさと三年生の教室行けば。彼女が待ってるんじゃねーの」
「……っ。やっぱり叶太おまえ……っ」
焦燥に駆られた青の声が降ってくる。肩をぐっと引っ張られ、無理やり青の方を向かされそうになる。
「触んじゃねえよ!」
全力で相手の手を弾く。ふと見上げると、傷ついたように歪んだ青の顔が見えた。
どうしてそっちがそんな顔をするんだよ。苛立って、つい荒い言葉を投げかけてしまう。
「彼女ができたんなら、オレのことなんか放っとけばいいじゃん」
「ちょっと待て叶太、オレの話を聞け――」
「聞きたくねえ」
まだミックス弁当を食べている寺嶋が頭を上げる。
「ゴミ捨ててくる」
空になった牛乳パックとパン袋を手にした叶太は、椅子から立ち上がった。思いのほか椅子の足がキイッと響いてしまい、詩乃と詩乃の取り巻きが一斉に叶太の方を見る。
「あ、ごめん」
形ばかりの謝罪を口にしたあと、逃げるように教室から廊下へと出た。
耳も心臓も痛い。これ以上詩乃の話を聞いていたくなかった。あれだけ詩乃が周りに自慢しているし、これだけ第三者にも知られているのだ。詩乃が嘘を言いふらしているとは思えなかった。
廊下に設置されたゴミ箱に紙パックとパン袋を捨てる。まだ昼休みが終わるまでに二十分以上ある。教室には戻りたくなかった。
とりあえず新しい飲み物でも買うか。叶太は談話室の自販機に向かおうと、廊下の端にある階段を降りることにした。
踊り場まで降りたところで、ちょうど下の階から登ってきた相手とかち合った。
「叶太」
叶太の前に立ちふさがった相手。それは青だった。突然出くわした衝撃で、心臓が口から飛び出そうだった。咄嗟に言葉が出てこなくなる。
「……おう」
絞り出した声は、自分でも驚くほど低いものだった。
青が登った先は三年生の教室だ。詩乃に会いにきたのだろうか。そんな想像に、胸がギュッと締め付けられる。早くこの場所からいなくなりたかった。
叶太は相手の視線から逃げるよう、目を下に逸らした。青の横を通り、階段を下ろうとした瞬間、「おい」の声掛けとともに腕を掴まれる。
「……なに」
「どこ行くんだよ」
青こそどこに……誰のところに行くつもりで階段を登ってたんだよ。言いたい言葉が喉まで出かかったが、ぐっと飲み込んだ。
「なんでおまえにいちいちそんなこと言わなくちゃいけないの。どこでもいいだろ」
「北村のところか? あいつなら今日は委員会の集まりがあって教室には――」
聞いてもいないのに、青の口から聞かされる北村の情報。ショックだった。やっぱり青は北村と自分が早くくっつけばいいと思っていたんだ。応援……していたんだ。
叶太はぐいっと腕を下にして、青の手を振り解いた。
「知ってる」
噓だ。北村とはもう連絡を取っていないから知らない。
まさか昔からの仲の自分が、青のことを好きだなんて微塵も思っていないんだろう。それがまざまざとわかってしまい、胸が締め付けられる。
「おまえこそ、さっさと三年生の教室行けば。彼女が待ってるんじゃねーの」
「……っ。やっぱり叶太おまえ……っ」
焦燥に駆られた青の声が降ってくる。肩をぐっと引っ張られ、無理やり青の方を向かされそうになる。
「触んじゃねえよ!」
全力で相手の手を弾く。ふと見上げると、傷ついたように歪んだ青の顔が見えた。
どうしてそっちがそんな顔をするんだよ。苛立って、つい荒い言葉を投げかけてしまう。
「彼女ができたんなら、オレのことなんか放っとけばいいじゃん」
「ちょっと待て叶太、オレの話を聞け――」
「聞きたくねえ」
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