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FILE2 訳あり物件
第十話「あれが夢ってやつかなあ......」
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「僕ノ名前ハ手島。コノ姿ニナッテカラハココデ住ンデイタヨ」
腕の化け物......手島さんの名を聞いて、大谷荘の噂を思い出す。
「もしかして......大谷荘に住んでいた、ラジオ局に勤めるDJの手島さん?」
「アア、懐カシイネエ。ラジオ局ハモウ辞メテイタケドネ」
確か、独立してラジオ局を立ち上げると語っていたはずだ。その後、姿を消したが......
「私は昨日、あなたの部屋に引っ越してきたんですよ」
「エ? 僕ノ住ンデイタ部屋ニ? アア、ソレデ無クナッテイタノカア!!」
そう言って、手島さんは昨日の説明をしてくれた。
手島さんは、この姿になってでも独立してラジオ局を作る夢を諦めなかった。下水道に身を隠してからも、アパートに置いて来たという機材を排水口を通じて集めていたという。
「デモ、大キイ機材ハドウシタノ?」
途中でシロナちゃんが口を挟む。
「ウマク解体シテ運ンダンダ。元々手先ハ器用ダッタケド、コノ姿ニナッテカラハ道具スラ要ラナクナッタカラサ」
話を戻そう。機材を順調に集めていった手島さんだったが、ある日、あったはずの機材が無くなった。手島さんは失踪したことになり、部屋が事故物件として売られたために、中の物が全部運ばれてしまったのだ。そうとは知らずに手島さんは今まで探し続けた。そして、昨日......
「心臓ガ止マルト思ッタナア......アノ時ハ」
そう言いながら手島さんは一本の手で頭をかいた。
「本当にすみません......」
「サッキ謝ッタカライイヨ。デモ大丈夫ダッタ? 思ワズ針出シチャッタケド」
昨日の午後の光景が蘇る。そして、先ほどの光景の中で気になることが思い浮かんだ。
「まあなんとか大丈夫でした。ところで、ちょっと無駄話になりますが......もし私が先ほど張り巡らしていた手に触れていたとしたら、どうしていましたか?」
「ソウダネエ......容赦ナク串指シニシテタネ!」
「でしょうね」「デショウネ」
眩しい笑顔で答える手島さんに対して、思わずシロナちゃんと一緒に即答。
「......それじゃあ次の質問に行きます」
「ウン」
「手島さん以外に姿が変化した人と会ったことはないですか?」
「ウーン、ナイネエ......」
「......布団並の大きさで四足歩行、大きな亀のような甲羅を背負っている人は?」
「想像スルノガチョット難シイ見タ目ダネ......ソノ人ガドウシタノ?」
私は昨日の夜に、亀の化け物と出会ったことを説明した。説明を終えると、一緒に話を聞いてくれたシロナちゃんが、私の求めていた質問をしてくれた。
「......コノ町ニ、人ニ戻レナカッタ化ケ物ガ身を隠シテイル......廃墟デモ聞イタケド、私タチト同ジヨウナ化ケ物ガイルッテコト?」
「恐らくそうだろう。一島町で失踪した人間は化け物のような姿になる。一部のオカルトファンで広まっていた噂は本当なのかもしれないね」
「ナンダカヨクワカラナイケド、キットソノ人ガ何カ知ッテイルノカモシレナイネ。ソウイエバ、僕ニ会ッタ証拠ヲ残サナクテモイイノ?」
言われて見ればそうだ。私はポケットに手を入れ、携帯電話に触れる。
「写真撮って大丈夫です? あとできればシロナちゃんも」
「誰ニモ見セナカッタライイヨ ソッチノ子ハ?」
シロナちゃんはしばらく黙ってから口を開く。
「......イイケド、廃墟デ撮ッテモラッテイイ?」
「うん、だいたい聞きたいことも聞けたし、写真を撮ったら帰るとしようか」
「ソレジャア、先ニ帰ッテイルカラ」
そう言って、シロナちゃんは暗闇の中へと消えて行った。
「僕モコノ噂ニハ目ヲツケテイタンダヨ」
写真を取り置えた後、手島さんはそう言った。
「自立するきっかけも、そうなんですか?」
「アア、君ホドハ強クナイケド、好奇心ハアル方ダカラネ。ダケドモウ他人事ジャア無クナッタカラネエ......早ク計画ヲ進メナイトネ」
いきなり手を捕まれる経験をしたのに、手島さんはまだ懲りないんだ。
「ソウダ、モシ良カッタラ協力シテクレナイカイ?」
「と、言いますと?」
「僕ガ出来ルコトナラ自分デスルツモリダケド......出来ナイコトハ上宮サンニ頼ミタインダ。イイカナ?」
恐らく、外に出ないと出来ないことであろう。
「いいですよ。仕事の合間に来ますから」
「アリガトウ。ソウソウ、彼女ニモ声ヲカケテクレルカイ?」
「話はしておきますよ」
私は取材を切り上げ、下水道から立ち去った。
月夜の下を、懐中電灯を手に歩く。
「あれが夢ってやつかなあ......」
手島さんはあの姿になっても、機材を回収してまでラジオ局を作ろうとしている。どんなラジオ番組を作るのかは聞きそびれてしまったが、また会うことが出来るから気にしなくていいや。個人的な取材にしつこく執着する必要はないからね。
「すみませーん! 診察を受けに来たのですがー!?」
廃墟の玄関でまたジョークを言ってみる。今回は後ろを取られることはないな。
......シロナちゃんにも、失った記憶の中に夢があったのだろうか。人生の中で、どんなきっかけがあって道が別れるかはわからない。姿が変わったことにより、人目を避けなければならなくなったシロナちゃんと手島さん、トラウマと共に妙な好奇心を手に入れた私。そして、私の心変わりによって道を変えた、流レ亭の......
......おかしいなあ、結構待っているのに、シロナちゃんが姿を現さない。
「シロナちゃーん? 写真取るんだろう?」
ジョークなしで答えてみても、私の声が通路を駆け抜けるだけで反応なし。私は懐中電灯片手に足を進めてみた......
廊下に落ちている何かを懐中電灯が捉えた。それは、墨汁のように真っ黒い液体で濡れた、毛布だった。
......シロナちゃんのだ。
FILE2 END
腕の化け物......手島さんの名を聞いて、大谷荘の噂を思い出す。
「もしかして......大谷荘に住んでいた、ラジオ局に勤めるDJの手島さん?」
「アア、懐カシイネエ。ラジオ局ハモウ辞メテイタケドネ」
確か、独立してラジオ局を立ち上げると語っていたはずだ。その後、姿を消したが......
「私は昨日、あなたの部屋に引っ越してきたんですよ」
「エ? 僕ノ住ンデイタ部屋ニ? アア、ソレデ無クナッテイタノカア!!」
そう言って、手島さんは昨日の説明をしてくれた。
手島さんは、この姿になってでも独立してラジオ局を作る夢を諦めなかった。下水道に身を隠してからも、アパートに置いて来たという機材を排水口を通じて集めていたという。
「デモ、大キイ機材ハドウシタノ?」
途中でシロナちゃんが口を挟む。
「ウマク解体シテ運ンダンダ。元々手先ハ器用ダッタケド、コノ姿ニナッテカラハ道具スラ要ラナクナッタカラサ」
話を戻そう。機材を順調に集めていった手島さんだったが、ある日、あったはずの機材が無くなった。手島さんは失踪したことになり、部屋が事故物件として売られたために、中の物が全部運ばれてしまったのだ。そうとは知らずに手島さんは今まで探し続けた。そして、昨日......
「心臓ガ止マルト思ッタナア......アノ時ハ」
そう言いながら手島さんは一本の手で頭をかいた。
「本当にすみません......」
「サッキ謝ッタカライイヨ。デモ大丈夫ダッタ? 思ワズ針出シチャッタケド」
昨日の午後の光景が蘇る。そして、先ほどの光景の中で気になることが思い浮かんだ。
「まあなんとか大丈夫でした。ところで、ちょっと無駄話になりますが......もし私が先ほど張り巡らしていた手に触れていたとしたら、どうしていましたか?」
「ソウダネエ......容赦ナク串指シニシテタネ!」
「でしょうね」「デショウネ」
眩しい笑顔で答える手島さんに対して、思わずシロナちゃんと一緒に即答。
「......それじゃあ次の質問に行きます」
「ウン」
「手島さん以外に姿が変化した人と会ったことはないですか?」
「ウーン、ナイネエ......」
「......布団並の大きさで四足歩行、大きな亀のような甲羅を背負っている人は?」
「想像スルノガチョット難シイ見タ目ダネ......ソノ人ガドウシタノ?」
私は昨日の夜に、亀の化け物と出会ったことを説明した。説明を終えると、一緒に話を聞いてくれたシロナちゃんが、私の求めていた質問をしてくれた。
「......コノ町ニ、人ニ戻レナカッタ化ケ物ガ身を隠シテイル......廃墟デモ聞イタケド、私タチト同ジヨウナ化ケ物ガイルッテコト?」
「恐らくそうだろう。一島町で失踪した人間は化け物のような姿になる。一部のオカルトファンで広まっていた噂は本当なのかもしれないね」
「ナンダカヨクワカラナイケド、キットソノ人ガ何カ知ッテイルノカモシレナイネ。ソウイエバ、僕ニ会ッタ証拠ヲ残サナクテモイイノ?」
言われて見ればそうだ。私はポケットに手を入れ、携帯電話に触れる。
「写真撮って大丈夫です? あとできればシロナちゃんも」
「誰ニモ見セナカッタライイヨ ソッチノ子ハ?」
シロナちゃんはしばらく黙ってから口を開く。
「......イイケド、廃墟デ撮ッテモラッテイイ?」
「うん、だいたい聞きたいことも聞けたし、写真を撮ったら帰るとしようか」
「ソレジャア、先ニ帰ッテイルカラ」
そう言って、シロナちゃんは暗闇の中へと消えて行った。
「僕モコノ噂ニハ目ヲツケテイタンダヨ」
写真を取り置えた後、手島さんはそう言った。
「自立するきっかけも、そうなんですか?」
「アア、君ホドハ強クナイケド、好奇心ハアル方ダカラネ。ダケドモウ他人事ジャア無クナッタカラネエ......早ク計画ヲ進メナイトネ」
いきなり手を捕まれる経験をしたのに、手島さんはまだ懲りないんだ。
「ソウダ、モシ良カッタラ協力シテクレナイカイ?」
「と、言いますと?」
「僕ガ出来ルコトナラ自分デスルツモリダケド......出来ナイコトハ上宮サンニ頼ミタインダ。イイカナ?」
恐らく、外に出ないと出来ないことであろう。
「いいですよ。仕事の合間に来ますから」
「アリガトウ。ソウソウ、彼女ニモ声ヲカケテクレルカイ?」
「話はしておきますよ」
私は取材を切り上げ、下水道から立ち去った。
月夜の下を、懐中電灯を手に歩く。
「あれが夢ってやつかなあ......」
手島さんはあの姿になっても、機材を回収してまでラジオ局を作ろうとしている。どんなラジオ番組を作るのかは聞きそびれてしまったが、また会うことが出来るから気にしなくていいや。個人的な取材にしつこく執着する必要はないからね。
「すみませーん! 診察を受けに来たのですがー!?」
廃墟の玄関でまたジョークを言ってみる。今回は後ろを取られることはないな。
......シロナちゃんにも、失った記憶の中に夢があったのだろうか。人生の中で、どんなきっかけがあって道が別れるかはわからない。姿が変わったことにより、人目を避けなければならなくなったシロナちゃんと手島さん、トラウマと共に妙な好奇心を手に入れた私。そして、私の心変わりによって道を変えた、流レ亭の......
......おかしいなあ、結構待っているのに、シロナちゃんが姿を現さない。
「シロナちゃーん? 写真取るんだろう?」
ジョークなしで答えてみても、私の声が通路を駆け抜けるだけで反応なし。私は懐中電灯片手に足を進めてみた......
廊下に落ちている何かを懐中電灯が捉えた。それは、墨汁のように真っ黒い液体で濡れた、毛布だった。
......シロナちゃんのだ。
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