13 / 162
化け物バックパッカー、ヒッチハイクする。[後編]
しおりを挟む
2人の前で、車が停止した。
赤い塗装に包まれた車の運転席には、サングラスと麦わら帽子を被った人影がある。
変異体の少女が老人を起こすと同時に、車の後部座席の扉が開く。2人はなだれ込むようにして後部座席に乗り込んだ。
「アノ、エット……」
変異体の少女は開けた口をすぐに閉じた。自分の奇妙な声帯を気にしたのだろうか。
「道の駅によってくれんか……迅速に……」
老人がか細い声で伝えると、開いていた扉が音を立てて閉まった。
その直後、後部座席のシートベルトが動き出し、2人の体を固定した。
アクセルが倒れ、車は勢いよく走り出す。
明らかに必要以上のスピード。
前方の車にあっという間に追いつく。
ハンドルは右に切る。
等速直線運動によって、2人と運転手は右に倒れる。
前方から、対向車が向かってくる。
ハンドルは左に切る。
等速直線運動によって、2人と運転手は左に倒れる。
右へ、左へ、
道の駅に到着するのに、時間はかからなかった。
赤い車が道の駅の駐車場に止まった直後、坂春は飛び出していった。
「……フウ」
坂春がトイレに入ったのを、車の窓から見届けた変異体の少女はほっと一息ついた。
その後、サイドミラーに映る運転手を見つめる。
「ア……アノ……」
お礼の言葉を言いかけて、またも変異体の少女は口を閉じた。運転手は無言を貫き通している。
「……」
少女は何度も、口を開けては閉じることを繰り返していた。
運転席に座っている人物が、首を横に倒している。もしもシートベルトが装着されていなければ、今すぐにでも倒れそうだ。
変異体の少女は決心したようにうなずき、横から運転手の顔をのぞいた。
運転手の肌は、布で出来ていた。
髪の毛は毛糸、サングラスの下にある目は、ボタンだ。
「コレッテ……人形?」
「ハハッ、ヨクデキテルダロウ?」
「キャ!?」
ゴツン
変異体の少女は謎の声に対して驚き、天井に頭をぶつけた。
「イタタ……ダ……誰……?」
「前ダヨ前。ラジオガ付イテイルトコダ」
ラジオが2つに分かれ、口のように動いていた。口の中には、人間らしい歯が見えている。
「アンタ姿カクシテイルケド、変異体ダヨナア? ナントナーク声ガオカシイトオモッタンダ」
「アナタモ……変異体ナノ……?」
「アア、モチロンダ」
それを聞いて、変異体の少女は胸を下ろす。
「ヨカッタ……コレガ人間ダッタラ、マタ脅カシテイタ……」
「ソウカ? アノジイサン、結構聞イテイタト思ウゼ?」
「坂春サンナラ、大丈夫」
「サカハル? アノジイサンノ名前カ?」
車の変異体の発言に少女は首をかしげたが、すぐに納得したようにうなずいた。
「モシカシテ、他人ダト思ッテル?」
「エ……知リ合イ!?」
変異体の少女は再びうなずいた。しかし、目が室内に付いていないのか、何も返答がないことに気づき、「ソウダヨ」と補足した。
「マジカ……テッキリ見ズ知ラズノ人間ヲ助ケタノカト……」
「“マジ”ッテ……ナニ?」
「本当……という意味だ」
車の後部座席の扉が開き、坂春が涼しい顔で車内をのぞいていた。そのまま目線を車の変異体に移し、丁寧にお辞儀をする。
「先ほどは助かった。改めて礼を言おう」
「アンタ……俺ガ怖クナイノカ!?」
一本道の道路を、赤い車が走る。
先ほどのような無茶苦茶なスピードではなく、一定の速度を保っている。
後部座席で、変異体の少女は窓の外の景色を眺めていたが、何かを思い出したかのように坂春を見た。
「坂春サン、コノ車……ジャナカッタ、コノ人ガ変異体ッテ気ヅイテイタノ?」
「いや、あの時は腹の痛みで精一杯だった。トイレの中でふと考えて初めて変異体だと気づいたんだ。まだ全自動シートベルト装着機なんて開発されていないからな」
「自動運転ニオシャベリ機能ヲ付ケタ車ナンテ、俺以外ニ存在シナイゼ」
車の変異体の口が、陽気にしゃべる。
「さっきから気になっていたんだが、おまえさんは普段もこうやって走り続けているのか?」
「マアナ。他ニスルコトナンテ、ナイカラナア」
「走ルノハ、好キナノ?」
「モチロンダ! 猛スピードデ走ルト、嫌ナコトモ退屈ナコトモ、コノゴ時世ダッテ忘レルコトガデキルンダゼ!!」
「さ……さすがにもう勘弁してくれ」
「大丈夫ダッテ!! アンタ達ト話シテイルト、ナゼカコノ速サデモ満足ナンダヨナア」
その言葉を皮切りに、3人の会話が盛り上がり始めた。
気づけば、空は再び夕焼け色に染まっていた。
「ソウイエバヨオ、アンタ達、旅シテイル格好ダケドヨオ、目的トカアンノ?」
車の変異体の問いに、坂春と変異体の少女は互いに顔を合わせてほほえんだ。
「この世界の価値を見るためだ」「コノ世界ノ全テヲ見ルタメ」
「ブッ!!」
突然、車の変異体の口が吹き出した。
「何がおかしい?」「何ガオカシイノ?」
「イヤアンタ達サア、息ピッタリニ言ッテイルンダケドサア、“全テ”ト“価値”ジャア大キサガ全然違ウダロ?」
笑い声を交えて話す車の口を、2人はまじめな目で見つめている。
「旅ノ目的ガ違ッタラ、一緒ニ旅スルノ、ダメ?」
「俺たちはただ、見に行くという共通点があるだけだ」
「エット……俺、癪ニ触ルコト、言ッタ?」
「いや、特に」「シャクッテナアニ?」
夕焼けの空は、少しずつ紺色に染まっていく。
「……ソレナラヨオ」
少しだけためて、口は言葉を放った。
「俺モ見ニ行ッテイイカ?」
車は、道路から外れた。
「お嬢さん、着いたようだぞ」
坂春の声に、変異体の少女の瞳が開く。
「アレ……私、マタ寝坊シチャッタ……?」
窓の外は暗闇で何も見えず、車内は天井に付けられたライトがほのかな光を出している。
「まだ夜中の12時だ。それにしても、あのスピードでよく眠れたな」
「ナンカ……ナレチャッテ」
「ナア早ク降リテクレヨ。ズット目ヲツブッテイルト、眠タクナッチマウ」
今にもあくびが出そうな車の口の言葉を聞いて、2人は車を降りた。
「これは……」「……!」
坂春は言葉が漏れるようにつぶやき、変異体の少女は何も言わずに口をふさぎ、息を漏らした。
山の頂上の高さから見る空には、星がより強い輝きを放って浮かんでいた。
「昨日ヨリモ……奇麗……」
「標高が高いから、光を吸収する大気が少ないんだ……だが……こんなにも奇麗だったのか……意味なんてないのにな……」
星を見上げる2人の側で、車のライトを隠すまぶたが開いた。光を灯さない2つのライトは、車の変異体の目とも捉えることが出来る。
車内の口が、口を開いていた。外の2人には聞こえない声で、自分に言い聞かせるように口を動かした。
「ヤッパリ、忘レルコトナンテ出来ナカッタンダ。ズット、1人ダッタ。星空ダッテ……今日ノヨウニ輝イテ見ルコトナンテ……ナカッタモンナ」
赤い塗装に包まれた車の運転席には、サングラスと麦わら帽子を被った人影がある。
変異体の少女が老人を起こすと同時に、車の後部座席の扉が開く。2人はなだれ込むようにして後部座席に乗り込んだ。
「アノ、エット……」
変異体の少女は開けた口をすぐに閉じた。自分の奇妙な声帯を気にしたのだろうか。
「道の駅によってくれんか……迅速に……」
老人がか細い声で伝えると、開いていた扉が音を立てて閉まった。
その直後、後部座席のシートベルトが動き出し、2人の体を固定した。
アクセルが倒れ、車は勢いよく走り出す。
明らかに必要以上のスピード。
前方の車にあっという間に追いつく。
ハンドルは右に切る。
等速直線運動によって、2人と運転手は右に倒れる。
前方から、対向車が向かってくる。
ハンドルは左に切る。
等速直線運動によって、2人と運転手は左に倒れる。
右へ、左へ、
道の駅に到着するのに、時間はかからなかった。
赤い車が道の駅の駐車場に止まった直後、坂春は飛び出していった。
「……フウ」
坂春がトイレに入ったのを、車の窓から見届けた変異体の少女はほっと一息ついた。
その後、サイドミラーに映る運転手を見つめる。
「ア……アノ……」
お礼の言葉を言いかけて、またも変異体の少女は口を閉じた。運転手は無言を貫き通している。
「……」
少女は何度も、口を開けては閉じることを繰り返していた。
運転席に座っている人物が、首を横に倒している。もしもシートベルトが装着されていなければ、今すぐにでも倒れそうだ。
変異体の少女は決心したようにうなずき、横から運転手の顔をのぞいた。
運転手の肌は、布で出来ていた。
髪の毛は毛糸、サングラスの下にある目は、ボタンだ。
「コレッテ……人形?」
「ハハッ、ヨクデキテルダロウ?」
「キャ!?」
ゴツン
変異体の少女は謎の声に対して驚き、天井に頭をぶつけた。
「イタタ……ダ……誰……?」
「前ダヨ前。ラジオガ付イテイルトコダ」
ラジオが2つに分かれ、口のように動いていた。口の中には、人間らしい歯が見えている。
「アンタ姿カクシテイルケド、変異体ダヨナア? ナントナーク声ガオカシイトオモッタンダ」
「アナタモ……変異体ナノ……?」
「アア、モチロンダ」
それを聞いて、変異体の少女は胸を下ろす。
「ヨカッタ……コレガ人間ダッタラ、マタ脅カシテイタ……」
「ソウカ? アノジイサン、結構聞イテイタト思ウゼ?」
「坂春サンナラ、大丈夫」
「サカハル? アノジイサンノ名前カ?」
車の変異体の発言に少女は首をかしげたが、すぐに納得したようにうなずいた。
「モシカシテ、他人ダト思ッテル?」
「エ……知リ合イ!?」
変異体の少女は再びうなずいた。しかし、目が室内に付いていないのか、何も返答がないことに気づき、「ソウダヨ」と補足した。
「マジカ……テッキリ見ズ知ラズノ人間ヲ助ケタノカト……」
「“マジ”ッテ……ナニ?」
「本当……という意味だ」
車の後部座席の扉が開き、坂春が涼しい顔で車内をのぞいていた。そのまま目線を車の変異体に移し、丁寧にお辞儀をする。
「先ほどは助かった。改めて礼を言おう」
「アンタ……俺ガ怖クナイノカ!?」
一本道の道路を、赤い車が走る。
先ほどのような無茶苦茶なスピードではなく、一定の速度を保っている。
後部座席で、変異体の少女は窓の外の景色を眺めていたが、何かを思い出したかのように坂春を見た。
「坂春サン、コノ車……ジャナカッタ、コノ人ガ変異体ッテ気ヅイテイタノ?」
「いや、あの時は腹の痛みで精一杯だった。トイレの中でふと考えて初めて変異体だと気づいたんだ。まだ全自動シートベルト装着機なんて開発されていないからな」
「自動運転ニオシャベリ機能ヲ付ケタ車ナンテ、俺以外ニ存在シナイゼ」
車の変異体の口が、陽気にしゃべる。
「さっきから気になっていたんだが、おまえさんは普段もこうやって走り続けているのか?」
「マアナ。他ニスルコトナンテ、ナイカラナア」
「走ルノハ、好キナノ?」
「モチロンダ! 猛スピードデ走ルト、嫌ナコトモ退屈ナコトモ、コノゴ時世ダッテ忘レルコトガデキルンダゼ!!」
「さ……さすがにもう勘弁してくれ」
「大丈夫ダッテ!! アンタ達ト話シテイルト、ナゼカコノ速サデモ満足ナンダヨナア」
その言葉を皮切りに、3人の会話が盛り上がり始めた。
気づけば、空は再び夕焼け色に染まっていた。
「ソウイエバヨオ、アンタ達、旅シテイル格好ダケドヨオ、目的トカアンノ?」
車の変異体の問いに、坂春と変異体の少女は互いに顔を合わせてほほえんだ。
「この世界の価値を見るためだ」「コノ世界ノ全テヲ見ルタメ」
「ブッ!!」
突然、車の変異体の口が吹き出した。
「何がおかしい?」「何ガオカシイノ?」
「イヤアンタ達サア、息ピッタリニ言ッテイルンダケドサア、“全テ”ト“価値”ジャア大キサガ全然違ウダロ?」
笑い声を交えて話す車の口を、2人はまじめな目で見つめている。
「旅ノ目的ガ違ッタラ、一緒ニ旅スルノ、ダメ?」
「俺たちはただ、見に行くという共通点があるだけだ」
「エット……俺、癪ニ触ルコト、言ッタ?」
「いや、特に」「シャクッテナアニ?」
夕焼けの空は、少しずつ紺色に染まっていく。
「……ソレナラヨオ」
少しだけためて、口は言葉を放った。
「俺モ見ニ行ッテイイカ?」
車は、道路から外れた。
「お嬢さん、着いたようだぞ」
坂春の声に、変異体の少女の瞳が開く。
「アレ……私、マタ寝坊シチャッタ……?」
窓の外は暗闇で何も見えず、車内は天井に付けられたライトがほのかな光を出している。
「まだ夜中の12時だ。それにしても、あのスピードでよく眠れたな」
「ナンカ……ナレチャッテ」
「ナア早ク降リテクレヨ。ズット目ヲツブッテイルト、眠タクナッチマウ」
今にもあくびが出そうな車の口の言葉を聞いて、2人は車を降りた。
「これは……」「……!」
坂春は言葉が漏れるようにつぶやき、変異体の少女は何も言わずに口をふさぎ、息を漏らした。
山の頂上の高さから見る空には、星がより強い輝きを放って浮かんでいた。
「昨日ヨリモ……奇麗……」
「標高が高いから、光を吸収する大気が少ないんだ……だが……こんなにも奇麗だったのか……意味なんてないのにな……」
星を見上げる2人の側で、車のライトを隠すまぶたが開いた。光を灯さない2つのライトは、車の変異体の目とも捉えることが出来る。
車内の口が、口を開いていた。外の2人には聞こえない声で、自分に言い聞かせるように口を動かした。
「ヤッパリ、忘レルコトナンテ出来ナカッタンダ。ズット、1人ダッタ。星空ダッテ……今日ノヨウニ輝イテ見ルコトナンテ……ナカッタモンナ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる