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化け物バックパッカー、喫茶店で味わう。【後編】
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カランカラーン
喫茶店【化物】の扉が開き、ふたりの客が入店した。
「ん……ああ……客か……」
カウンターの席に座っていた男性はふたりの客を見ると立ち上がり、けだるそうな足取りでカウンターの向こう側に回った。他に店員がいないのを見ると、彼がここの店主なのだろう。
「なんだか落ち着いた雰囲気のあるお店だ」
ふたりの客のうちの老人……坂春は店内を見渡しながらつぶやいた。
それに合わせてもうひとり……タビアゲハも触覚を動かす。
店内は木製の壁に床、適度な長さの木製カウンター席と日曜大工で作ったようないくつかの座敷、それをほんのりと照らすオレンジ色の照明……
いわゆるクラシックタイプの内観だ。坂春の言うとおり、落ち着いた雰囲気がある。
ふたりがカウンター席に座ると、店主はおしぼりをふたつ、彼らの目の前に置いた。大柄な体格を持つその店主、その顔面の凶悪度は坂春といい勝負である。
「注文が決まったら……声をかけてくれ……」
メニュースタンドを指さすと、店主はカウンター席から少し距離をとった。
坂春はメニュースタンドを手にとって目を細め、しばらく無言でにらんでいた。この表情なら、店主に一歩リードしている。
「今日のおすすめは“ケチャップのきいたオムライス”か。でも朝からはちょっとキツいかもしれん……」
「……」
横からタビアゲハがのぞこうとしたとき、「よし」と坂春はうなずいた。すぐに引っ込むタビアゲハ。
「辛子マヨネーズのサンドイッチセットとアイスコーヒーを頼もうか」
まるで常連客のように人差し指をたてる。
「わかった……その隣の……おまえは……?」
「……」
タビアゲハは必要ないと答えるように横に首をふる。
「冷やかし……か……?」
「……!!」
先ほどよりも早いスピードで首をふる。
「なるほど……このおじいさんの……つれか……それなら……外で待ってても……いいんだぞ……?」
「……」
今度は首を振らなかった。
「すみません、こいつは……」
「変異体……なんだろう……?」
店主がほほえむと同時に、後ろから何かが現れた。
それはチョコレート色をした尻尾のようなもの。
先っぽはとがっており、まるで鋭利な槍のようだ。
「モシカシテ……アノトキカラワカッテタ?」
横に揺れる店主の尻尾を触覚で追いかけながら、タビアゲハがたずねる。
「あの時って……なんだ……?」
「朝ニ店ヲノゾイテイタンダケド……」
タビアゲハは後ろのガラス窓を指で指した。
店主の反応は首をかしげる程度だった。
「さあ……気づかなかった……私は……変異体が食事を必要としないとわかっていたから……おまえが変異体と……きづいた……」
グリリリュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「そんなことよりも、早く作ってくれないか? 餓死まではいかないが、このままでは居眠りしてしまうぞ」
ウトウトする坂春のマブタは、今にも落ちそうだった。
「ああ……わかった。最近は味も……あまり感じなくなっているが……こうして堂々と……尻尾技を披露できるな……」
そう店主が言った直後、尻尾はカウンターの下に下がった。
尻尾はすぐに現れ、後ろの棚になにかを置いた。
サンドイッチに使う、パンだ。
さらに尻尾はカウンターの下にある食材を取り出していく。
その間、店主の手はコーヒーメーカーを動かしていた。
変異体のような尻尾と人の手、それらが効率よく、見事な連携を魅せていく。
やがて、坂春の前にアイスコーヒーと辛子マヨネーズのかかった5切れのサンドイッチが並んだ。
「うむ、ようやく腹を落ち着かせることができる」
坂春は黒いアイスコーヒーをストローで数量ほど吸い上げた後、サンドイッチの1切れを手に取り、前歯で半分ぐらい食いちぎった。
頬を動かす坂春の横顔を、タビアゲハは表情を観察するように眺めていた。
まだ疑問が晴れていない様子で、店主は首をかしげながらタビアゲハを見た。
「さっきから……気になっていたのだが……なぜそうやって……じっと見ているんだ……?」
タビアゲハは店主の方を向き、ちょっとうつむいて頬を指でなでた。
「坂春サン、スゴクオイシソウニ食ベテイルナッテ思ッテ」
その隣の坂春は特に気にすることもなく、3切れ目に手を伸ばす。
「それに……どんな意味が……あるんだ……?」
質問を続ける店主。
「意味ハナイケド……ナンダカ、充実シテイルヨウニ感ジル」
「それは……どういう……」
タビアゲハは指をおろし、顔を上げた。
「……私、コノ姿ニナル前ノコトハ覚エテイナイ。ダケド、ナニカヲ見ルコトガ、スゴク幸セニ感ジテイタ。ダカラ、世界ヲ見テ回リタイッテ思ッタ。タブン」
「……」
4切れ目のサンドイッチを手に、坂春はタビアゲハを見つめた。
「サッキ公園デ、ハトガ私ノ前ヲ飛ンダ時ニ気ヅイタ。ナントナクダケド、自分ノ目ノ前デ起キタコト……自分ノ触覚デ感ジテ、驚イタ……ソノ感触ガ、スゴク暖カクテ、ズット大切ニシタイ……ソノ時ノ感情ハ、一瞬ダケ体ヲ流レテ一瞬デ消エルカラ」
「つ……つまり……どういうことだ……?」
店主は理解できないのか、首をかしげる。
「ダカラ……エット……ソノ……」
次の言葉を探しているのか、タビアゲハは髪をクルクルと指に巻き付けながら、触覚をあちこちと動かしている。
その隣で、坂春は「なあ」と話しかけてきた。
「俺の食べたサンドイッチは、どんな味がするんだ?」
「エ?」
「さっきまで見ていただろう? 俺がサンドイッチを食べているところを。もしかしたら、俺が感じている味を表情でわかっているかもって思ったんだ」
「……」
タビアゲハはまぶたを閉じ、しばらく首をひねった。
「スゴクオイシイ……ダケジャナクテ、ナニカガ惜シイミタイナ感ジ……舌ノ先ヲ少シ出シテイタカラ……辛イカ……苦イ?」
その言葉に、坂春はこっくりとうなずいた。正解のようだ。
「その通りだ。というわけでマスター……」
坂春は最後のひと切れであるサンドイッチをもって店主に見せた。
「この辛子マヨネーズのサンドイッチ、辛子マヨネーズが多くないか?」
「そうか……? すまないが……それが普通なんだ……こんどはメニューに注意書きを……書いておく……」
しばらくして、坂春は辛子マヨネーズ(かけすぎ)のサンドイッチを完食させることができた。
「コーヒーの方はなかなかうまかったな。ごちそうさん」
財布を取り出す坂春、席を立つタビアゲハ、ふたりの背中に背負っている黒いバックパックを、店主は見つめていた。
「どうかしたか?」
「あ……ああ……ちょっと気になってな……その……リュックサックが……」
「バックパックッテ言ウノ。コレ」
バックパックを背負い直して解説するタビアゲハに、店主は「そうか……」といい、せき払いをする。
「おまえたちは……その……旅をしているのか……?」
「まあ、そんなところだ」
坂春の言葉に、店主は少し考えるようにうつむき、すぐに顔を上げた。
「もしいいのなら……この話を……別の変異体に……話してもいいか?」
「……というと?」
「この店を開いたのは……私の尻尾がまだ……隠しきれるころだ……他の変異体は……どのように生きているのか……情報を交換する……場所を作りたかった……変異体の客は……おまえが始めて……だけどな……」
タビアゲハと坂春は互いに顔を合わせ、うなずいた。
「匿名にしてくれるなら、かまわんぞ」
「そうか……どんなのがいい……?」
「そうだな……俺はナイスミドルな色男で安定するが、タビアゲハは……」
坂春は目をつむり……ニヤリと頬を緩めた。
「化け物バックパッカー」
そう言い残し、坂春は出口の扉を開いた。
カランカラーン
タビアゲハは店主に向かって手をふった後、坂春の後を追いかけていった。
ビルの立ち並ぶ街の中、タビアゲハは坂春にたずねた。
「ネエオジイサン……バックパッカーッテ、ナニ?」
「あまり金をかけない旅行者のことをよくバックパッカーって言われるんだ」
「ソレジャア、ドウシテ私ハ化け物バックパッカーナノ?」
坂春は立ち止まり、ほくそ笑んだ。
「バックパッカーの目的は人それぞれだが……その中のひとつに、特に目的を持たず、さまざまな文化に触れ、現地の人と交流する……旅自体が目的だという話を聞いたことがある。タビアゲハの話を聞いていたら、そんなことが思い浮かんだだけだ」
喫茶店【化物】の扉が開き、ふたりの客が入店した。
「ん……ああ……客か……」
カウンターの席に座っていた男性はふたりの客を見ると立ち上がり、けだるそうな足取りでカウンターの向こう側に回った。他に店員がいないのを見ると、彼がここの店主なのだろう。
「なんだか落ち着いた雰囲気のあるお店だ」
ふたりの客のうちの老人……坂春は店内を見渡しながらつぶやいた。
それに合わせてもうひとり……タビアゲハも触覚を動かす。
店内は木製の壁に床、適度な長さの木製カウンター席と日曜大工で作ったようないくつかの座敷、それをほんのりと照らすオレンジ色の照明……
いわゆるクラシックタイプの内観だ。坂春の言うとおり、落ち着いた雰囲気がある。
ふたりがカウンター席に座ると、店主はおしぼりをふたつ、彼らの目の前に置いた。大柄な体格を持つその店主、その顔面の凶悪度は坂春といい勝負である。
「注文が決まったら……声をかけてくれ……」
メニュースタンドを指さすと、店主はカウンター席から少し距離をとった。
坂春はメニュースタンドを手にとって目を細め、しばらく無言でにらんでいた。この表情なら、店主に一歩リードしている。
「今日のおすすめは“ケチャップのきいたオムライス”か。でも朝からはちょっとキツいかもしれん……」
「……」
横からタビアゲハがのぞこうとしたとき、「よし」と坂春はうなずいた。すぐに引っ込むタビアゲハ。
「辛子マヨネーズのサンドイッチセットとアイスコーヒーを頼もうか」
まるで常連客のように人差し指をたてる。
「わかった……その隣の……おまえは……?」
「……」
タビアゲハは必要ないと答えるように横に首をふる。
「冷やかし……か……?」
「……!!」
先ほどよりも早いスピードで首をふる。
「なるほど……このおじいさんの……つれか……それなら……外で待ってても……いいんだぞ……?」
「……」
今度は首を振らなかった。
「すみません、こいつは……」
「変異体……なんだろう……?」
店主がほほえむと同時に、後ろから何かが現れた。
それはチョコレート色をした尻尾のようなもの。
先っぽはとがっており、まるで鋭利な槍のようだ。
「モシカシテ……アノトキカラワカッテタ?」
横に揺れる店主の尻尾を触覚で追いかけながら、タビアゲハがたずねる。
「あの時って……なんだ……?」
「朝ニ店ヲノゾイテイタンダケド……」
タビアゲハは後ろのガラス窓を指で指した。
店主の反応は首をかしげる程度だった。
「さあ……気づかなかった……私は……変異体が食事を必要としないとわかっていたから……おまえが変異体と……きづいた……」
グリリリュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「そんなことよりも、早く作ってくれないか? 餓死まではいかないが、このままでは居眠りしてしまうぞ」
ウトウトする坂春のマブタは、今にも落ちそうだった。
「ああ……わかった。最近は味も……あまり感じなくなっているが……こうして堂々と……尻尾技を披露できるな……」
そう店主が言った直後、尻尾はカウンターの下に下がった。
尻尾はすぐに現れ、後ろの棚になにかを置いた。
サンドイッチに使う、パンだ。
さらに尻尾はカウンターの下にある食材を取り出していく。
その間、店主の手はコーヒーメーカーを動かしていた。
変異体のような尻尾と人の手、それらが効率よく、見事な連携を魅せていく。
やがて、坂春の前にアイスコーヒーと辛子マヨネーズのかかった5切れのサンドイッチが並んだ。
「うむ、ようやく腹を落ち着かせることができる」
坂春は黒いアイスコーヒーをストローで数量ほど吸い上げた後、サンドイッチの1切れを手に取り、前歯で半分ぐらい食いちぎった。
頬を動かす坂春の横顔を、タビアゲハは表情を観察するように眺めていた。
まだ疑問が晴れていない様子で、店主は首をかしげながらタビアゲハを見た。
「さっきから……気になっていたのだが……なぜそうやって……じっと見ているんだ……?」
タビアゲハは店主の方を向き、ちょっとうつむいて頬を指でなでた。
「坂春サン、スゴクオイシソウニ食ベテイルナッテ思ッテ」
その隣の坂春は特に気にすることもなく、3切れ目に手を伸ばす。
「それに……どんな意味が……あるんだ……?」
質問を続ける店主。
「意味ハナイケド……ナンダカ、充実シテイルヨウニ感ジル」
「それは……どういう……」
タビアゲハは指をおろし、顔を上げた。
「……私、コノ姿ニナル前ノコトハ覚エテイナイ。ダケド、ナニカヲ見ルコトガ、スゴク幸セニ感ジテイタ。ダカラ、世界ヲ見テ回リタイッテ思ッタ。タブン」
「……」
4切れ目のサンドイッチを手に、坂春はタビアゲハを見つめた。
「サッキ公園デ、ハトガ私ノ前ヲ飛ンダ時ニ気ヅイタ。ナントナクダケド、自分ノ目ノ前デ起キタコト……自分ノ触覚デ感ジテ、驚イタ……ソノ感触ガ、スゴク暖カクテ、ズット大切ニシタイ……ソノ時ノ感情ハ、一瞬ダケ体ヲ流レテ一瞬デ消エルカラ」
「つ……つまり……どういうことだ……?」
店主は理解できないのか、首をかしげる。
「ダカラ……エット……ソノ……」
次の言葉を探しているのか、タビアゲハは髪をクルクルと指に巻き付けながら、触覚をあちこちと動かしている。
その隣で、坂春は「なあ」と話しかけてきた。
「俺の食べたサンドイッチは、どんな味がするんだ?」
「エ?」
「さっきまで見ていただろう? 俺がサンドイッチを食べているところを。もしかしたら、俺が感じている味を表情でわかっているかもって思ったんだ」
「……」
タビアゲハはまぶたを閉じ、しばらく首をひねった。
「スゴクオイシイ……ダケジャナクテ、ナニカガ惜シイミタイナ感ジ……舌ノ先ヲ少シ出シテイタカラ……辛イカ……苦イ?」
その言葉に、坂春はこっくりとうなずいた。正解のようだ。
「その通りだ。というわけでマスター……」
坂春は最後のひと切れであるサンドイッチをもって店主に見せた。
「この辛子マヨネーズのサンドイッチ、辛子マヨネーズが多くないか?」
「そうか……? すまないが……それが普通なんだ……こんどはメニューに注意書きを……書いておく……」
しばらくして、坂春は辛子マヨネーズ(かけすぎ)のサンドイッチを完食させることができた。
「コーヒーの方はなかなかうまかったな。ごちそうさん」
財布を取り出す坂春、席を立つタビアゲハ、ふたりの背中に背負っている黒いバックパックを、店主は見つめていた。
「どうかしたか?」
「あ……ああ……ちょっと気になってな……その……リュックサックが……」
「バックパックッテ言ウノ。コレ」
バックパックを背負い直して解説するタビアゲハに、店主は「そうか……」といい、せき払いをする。
「おまえたちは……その……旅をしているのか……?」
「まあ、そんなところだ」
坂春の言葉に、店主は少し考えるようにうつむき、すぐに顔を上げた。
「もしいいのなら……この話を……別の変異体に……話してもいいか?」
「……というと?」
「この店を開いたのは……私の尻尾がまだ……隠しきれるころだ……他の変異体は……どのように生きているのか……情報を交換する……場所を作りたかった……変異体の客は……おまえが始めて……だけどな……」
タビアゲハと坂春は互いに顔を合わせ、うなずいた。
「匿名にしてくれるなら、かまわんぞ」
「そうか……どんなのがいい……?」
「そうだな……俺はナイスミドルな色男で安定するが、タビアゲハは……」
坂春は目をつむり……ニヤリと頬を緩めた。
「化け物バックパッカー」
そう言い残し、坂春は出口の扉を開いた。
カランカラーン
タビアゲハは店主に向かって手をふった後、坂春の後を追いかけていった。
ビルの立ち並ぶ街の中、タビアゲハは坂春にたずねた。
「ネエオジイサン……バックパッカーッテ、ナニ?」
「あまり金をかけない旅行者のことをよくバックパッカーって言われるんだ」
「ソレジャア、ドウシテ私ハ化け物バックパッカーナノ?」
坂春は立ち止まり、ほくそ笑んだ。
「バックパッカーの目的は人それぞれだが……その中のひとつに、特に目的を持たず、さまざまな文化に触れ、現地の人と交流する……旅自体が目的だという話を聞いたことがある。タビアゲハの話を聞いていたら、そんなことが思い浮かんだだけだ」
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