27 / 162
★変異体ハンター、ホテルのスピーカーにキレる。【2】
しおりを挟む
19:02
ホテルの最上階に位置する、30階。
その階すべてが、ひとつの部屋になっていた。
俗に言う、スイートルームである。
リビングは白を基準とした色合いと大きな窓ガラスで、客が来るのを待ちわびていながらも、その落ち着いた姿勢を保っている。
ポーン
やがて、エレベーターの扉が開いた。
「す……すっげえ……」
大森はそのリビングに圧倒されるようにため息をつく。その目は、まるで純粋な少年のように輝いていた。
「とりあえず、荷物を置くよう」
晴海はエレベーターを下りると、近くにあったテーブルにハンドバッグを置く。そしてハンドバッグを開けて中からスマホと充電器を取り出した。
そのハンドバッグには、拳銃のようなものや、青いムチのようなものも見えた。
「晴海先輩、机の引き出しにパンフレットがあったんですけど、読みます?」
ハンドバッグを閉じていた晴海に、大森は近くにあった机の引き出しから取り出したパンフレットをみせていた。
「後でいいよお、それよりも、あたしは他の部屋を調べているからあ」
そう言いながら晴海は机に付いていたコンセントに充電器を差し込み、スマホを置くと別の部屋に向かって歩いて行った。
ほんの少しだけ、静寂が続く。
リュックサックをハンドバッグの横に置いている大森は、ソファにもたれかかってパンフレットを熟読していた。
「へえ……ここの下にジムがあって、さらに下はプールがあるのか……」
「大森さんって、体を鍛えるのが好きだったよねえ。さっそく行ってきたらどおう?」
もう部屋の探索を終えたのか、戻ってきた晴海が話しかけてくる。
「少し体を休ませたら行ってきますよ。ところで晴海先輩、部屋はどんな感じでしたか?」
まだ読み切れていないのか、パンフレットから目を離さないまま答える。
「それがねえ……寝室のベッドの他に布団もあったんだよねえ……最初は大森さんがバスルームで寝る予定だったけど、これなら安心だねえ」
その言葉に、大森はパンフレットから晴海に目線を移した。
「……それって移動時の退屈を紛らわすための冗談じゃあなかったんですか!?」
晴海はそれに答えずに、リビングから見えるキッチンに向かって歩き始めた。
「夕食は確か、冷蔵庫に入れてくれているんですよねえ」
「は……はい、献立は聞き忘れていたんですけど、たしか5つ星のシェフが作ってくれているらしいですよ。なんでも、開業したらホテルの2階に移転してくるらしいですけど……」
晴海からの返事はなかった。
それどころか、数分たっても戻ってくる気配がない。
「晴海先輩……?」
大森はパンフレットを閉じて、キッチンに向かった。
キッチンでは、晴海が冷蔵庫を開けたまま、固まっている。
冷蔵庫は開けっ放し防止のブザーを鳴らしている。
ぴて……
ぴて……
晴海の足元に、水が滴り落ちる。
紛れもない、晴海の唾だ。
「ほーれんちょう……ほーれんちょう……」
晴海は冷蔵庫の中にあるものを見ながら、ぶつぶつとつぶやき、唾を落としていた。
冷蔵庫の中には、ほうれん草のおひたしがあった。
「ぜえ……ぜえ……」
エレベーターの中、大森はリュックサックを背負って息を切らしていた。
「あぶねえところだった……晴海先輩って、ほうれん草のことになると、狂った化け物のように凶暴になるんだった……」
19:30
静寂を保つスイートルームのダイニングルーム。
そのテーブルの上にあるのは、ほうれん草のおひたしだけだ。
イスに腰掛けている晴海の手は、祈る時の形を作っていた。
祈る相手は、おそらくほうれん草に携わったすべての存在であろう。
「……いただきます」
静かに顔を上げ、晴海は箸を手に取った……
どこからか穏やかな音楽が鳴り始めた。
その音楽は、晴海の横の壁にあるスピーカーから流れていた。
ドガアッ!!
「……」
晴海の表情が無表情のまま、青ざめた。
晴海の足が、奥に食い込んだスピーカーとヒビの割れた壁から恐る恐る離れていく。
それでも、スピーカーは音を出し続けていた。雑音ではあるが。
その近くに、赤いボタンとマイクと思われる小さな穴が空いていた。
晴海は赤いボタンを押しながら、マイクに叫ぶ。
「音楽、消してくれませんかあ? あたしはほうれん草を食べるときは、静かじゃないとダメなんですよう」
雑音はすぐに消えた。
19:45
最上階から2階下りたところには、プールとなっている。
ファミリー向けのような変わった形のものではなく、長さ50mほどのプールが用意されているだけだった。
その大きさから推測するに、スイートルーム専用のプールなのだろうか。
「うっっっひょおおおお!!! 貸し切りだあああ!!!」
そのプールに向かって、水着姿の大森が走ってくる。そして、大きく跳躍し、プールの中へとダイブした。
※よいこの子供たち、大人たち、もしかしたらいるかもしれない変異体の方々は決してマネしないように。
大森は平泳ぎ、クロール、背泳ぎ、バタフライとさまざまな泳ぎを15分ほど行った後、プールの隅にある側壁に手を置いた。
「なんかひとりではしゃいでも……張り合いがないな…….ん?」
その手の近くに、赤いボタンとマイク、そしてスピーカーがあった。
「そういえば、ここのホテル、スマートスピーカーを搭載しているんだよな……この赤いボタンを押せばいいのか?」
大森は赤いボタンを押しながら、
「ひとりで泳いでいると退屈だ。何か面白い機能とかないのか?」
と、マイクにたずねた。
「逆流モードハイカガデショウカ?」
スピーカーから、奇妙な声が聞こえてきた。
「逆流モード? なんだかよくわからんが、とりあえず頼むぜ」
大森が言った瞬間、水の流れが突然代わり、体が倒れそうになる。
その流れは、大森のいる場所へと、押すように動いていた。
「逆流ってこういうことか! おっしゃ! 燃えてきたぜえ!!」
大森は滝を登るがごとく、バタフライを始めた。
水の底には、大きなドアノブのようなものがあったが、彼が気づくことはなかった。
20:30
ポーン
「ふう……いい汗かいたぜ……」
エレベーターに乗ってスイートルームのリビングに帰ってきた大森。彼の頭には銭湯よろしくタオルを巻いていた。
「湯加減はどうでしたかあ?」
晴海はソファーにもたれかかりながらたずねる。
「はい、ここの風呂って肩こりにちょうどよくて……って、俺が行ったのは大浴場じゃなくて、プールですよ!」
「それじゃあ、楽しめたあ?」
「がっつりですよ! 晴海先輩の方は美味しくいただけました?」
「がっつり……だよねえ……ただ、少しだけおせっかいなところが……」
晴海は苦い顔をしながらキッチンのある部屋を向いた。
「おせっかい……スマートスピーカーのことですか?」
「……ううん、なんでもないよう」
プルルルルル
その時、大森のスマホが着信音を鳴らした。
「電話、なってますよう」
「オーナーからか? 晴海先輩が出るとたぶん気分を悪くしそうですから、俺がでますね」
大森はスマホを手に取り、タッチすると耳に押し当てた。
「もしもし」
『ああ、大森さまでいらっしゃいますか?』
「はい、そうですけど」
『いかがでしょうか? 当ホテルのスイートルームは』
その声に大森は頬を緩めた。まるでその言葉を待っていたかのように。
「もう大満足ですよ! 特にあのスマートスピーカー! プールで使ったんですけど、あの逆流モードが……」
『……は?』
オーナーの困惑するような一文字に、大森は眉をひそめる。
「えっと……ほら、ここのホテルの売りである、全ての部屋に搭載しているスマートスピーカーのことですよ。ボタンを押してしゃべるやつ……」
「……? あ、ああ……そのことなんですが……でもおかしいな……」
「?」
「言い忘れていたのですが、まだスマートスピーカーは搭載されていないんですよ。従業員の失踪が起きたのが、テスト段階だったので……第一元から、ボタンをつける予定はなかったんですが」
「……」
大森は黙っていたが、そんなはずはないと表情に書かれている。
自分は確かに、あのスピーカーとボタンを見かけた。そしてボタンを押し、話しかけ、実際に声が聞こえてきたのだ。
怒りという感情ではなく、ただただ不思議がる表情が、そう語っているようだった。
「大森さん、まだ後ろを振り向かないでねえ……まずは例のゴーグルを装着してえ……」
横から話しかける晴海の言葉に、大森は何かに察したように目を見開いた。
そのまま振り返らずに、胸ポケットからゴーグルようなものを取り出し、かけた。
『本来ならばファミレスで伝えるべきでしたが、内容を忘れていまして……大森さん? 聞こえてますか?』
「あ……ああ、すみません、後でいいですか?」
大森は受話器を置き、テーブルからリュックサックを手に取った。
振り返った先には、2mほどの影が立っていた。
ホテルの最上階に位置する、30階。
その階すべてが、ひとつの部屋になっていた。
俗に言う、スイートルームである。
リビングは白を基準とした色合いと大きな窓ガラスで、客が来るのを待ちわびていながらも、その落ち着いた姿勢を保っている。
ポーン
やがて、エレベーターの扉が開いた。
「す……すっげえ……」
大森はそのリビングに圧倒されるようにため息をつく。その目は、まるで純粋な少年のように輝いていた。
「とりあえず、荷物を置くよう」
晴海はエレベーターを下りると、近くにあったテーブルにハンドバッグを置く。そしてハンドバッグを開けて中からスマホと充電器を取り出した。
そのハンドバッグには、拳銃のようなものや、青いムチのようなものも見えた。
「晴海先輩、机の引き出しにパンフレットがあったんですけど、読みます?」
ハンドバッグを閉じていた晴海に、大森は近くにあった机の引き出しから取り出したパンフレットをみせていた。
「後でいいよお、それよりも、あたしは他の部屋を調べているからあ」
そう言いながら晴海は机に付いていたコンセントに充電器を差し込み、スマホを置くと別の部屋に向かって歩いて行った。
ほんの少しだけ、静寂が続く。
リュックサックをハンドバッグの横に置いている大森は、ソファにもたれかかってパンフレットを熟読していた。
「へえ……ここの下にジムがあって、さらに下はプールがあるのか……」
「大森さんって、体を鍛えるのが好きだったよねえ。さっそく行ってきたらどおう?」
もう部屋の探索を終えたのか、戻ってきた晴海が話しかけてくる。
「少し体を休ませたら行ってきますよ。ところで晴海先輩、部屋はどんな感じでしたか?」
まだ読み切れていないのか、パンフレットから目を離さないまま答える。
「それがねえ……寝室のベッドの他に布団もあったんだよねえ……最初は大森さんがバスルームで寝る予定だったけど、これなら安心だねえ」
その言葉に、大森はパンフレットから晴海に目線を移した。
「……それって移動時の退屈を紛らわすための冗談じゃあなかったんですか!?」
晴海はそれに答えずに、リビングから見えるキッチンに向かって歩き始めた。
「夕食は確か、冷蔵庫に入れてくれているんですよねえ」
「は……はい、献立は聞き忘れていたんですけど、たしか5つ星のシェフが作ってくれているらしいですよ。なんでも、開業したらホテルの2階に移転してくるらしいですけど……」
晴海からの返事はなかった。
それどころか、数分たっても戻ってくる気配がない。
「晴海先輩……?」
大森はパンフレットを閉じて、キッチンに向かった。
キッチンでは、晴海が冷蔵庫を開けたまま、固まっている。
冷蔵庫は開けっ放し防止のブザーを鳴らしている。
ぴて……
ぴて……
晴海の足元に、水が滴り落ちる。
紛れもない、晴海の唾だ。
「ほーれんちょう……ほーれんちょう……」
晴海は冷蔵庫の中にあるものを見ながら、ぶつぶつとつぶやき、唾を落としていた。
冷蔵庫の中には、ほうれん草のおひたしがあった。
「ぜえ……ぜえ……」
エレベーターの中、大森はリュックサックを背負って息を切らしていた。
「あぶねえところだった……晴海先輩って、ほうれん草のことになると、狂った化け物のように凶暴になるんだった……」
19:30
静寂を保つスイートルームのダイニングルーム。
そのテーブルの上にあるのは、ほうれん草のおひたしだけだ。
イスに腰掛けている晴海の手は、祈る時の形を作っていた。
祈る相手は、おそらくほうれん草に携わったすべての存在であろう。
「……いただきます」
静かに顔を上げ、晴海は箸を手に取った……
どこからか穏やかな音楽が鳴り始めた。
その音楽は、晴海の横の壁にあるスピーカーから流れていた。
ドガアッ!!
「……」
晴海の表情が無表情のまま、青ざめた。
晴海の足が、奥に食い込んだスピーカーとヒビの割れた壁から恐る恐る離れていく。
それでも、スピーカーは音を出し続けていた。雑音ではあるが。
その近くに、赤いボタンとマイクと思われる小さな穴が空いていた。
晴海は赤いボタンを押しながら、マイクに叫ぶ。
「音楽、消してくれませんかあ? あたしはほうれん草を食べるときは、静かじゃないとダメなんですよう」
雑音はすぐに消えた。
19:45
最上階から2階下りたところには、プールとなっている。
ファミリー向けのような変わった形のものではなく、長さ50mほどのプールが用意されているだけだった。
その大きさから推測するに、スイートルーム専用のプールなのだろうか。
「うっっっひょおおおお!!! 貸し切りだあああ!!!」
そのプールに向かって、水着姿の大森が走ってくる。そして、大きく跳躍し、プールの中へとダイブした。
※よいこの子供たち、大人たち、もしかしたらいるかもしれない変異体の方々は決してマネしないように。
大森は平泳ぎ、クロール、背泳ぎ、バタフライとさまざまな泳ぎを15分ほど行った後、プールの隅にある側壁に手を置いた。
「なんかひとりではしゃいでも……張り合いがないな…….ん?」
その手の近くに、赤いボタンとマイク、そしてスピーカーがあった。
「そういえば、ここのホテル、スマートスピーカーを搭載しているんだよな……この赤いボタンを押せばいいのか?」
大森は赤いボタンを押しながら、
「ひとりで泳いでいると退屈だ。何か面白い機能とかないのか?」
と、マイクにたずねた。
「逆流モードハイカガデショウカ?」
スピーカーから、奇妙な声が聞こえてきた。
「逆流モード? なんだかよくわからんが、とりあえず頼むぜ」
大森が言った瞬間、水の流れが突然代わり、体が倒れそうになる。
その流れは、大森のいる場所へと、押すように動いていた。
「逆流ってこういうことか! おっしゃ! 燃えてきたぜえ!!」
大森は滝を登るがごとく、バタフライを始めた。
水の底には、大きなドアノブのようなものがあったが、彼が気づくことはなかった。
20:30
ポーン
「ふう……いい汗かいたぜ……」
エレベーターに乗ってスイートルームのリビングに帰ってきた大森。彼の頭には銭湯よろしくタオルを巻いていた。
「湯加減はどうでしたかあ?」
晴海はソファーにもたれかかりながらたずねる。
「はい、ここの風呂って肩こりにちょうどよくて……って、俺が行ったのは大浴場じゃなくて、プールですよ!」
「それじゃあ、楽しめたあ?」
「がっつりですよ! 晴海先輩の方は美味しくいただけました?」
「がっつり……だよねえ……ただ、少しだけおせっかいなところが……」
晴海は苦い顔をしながらキッチンのある部屋を向いた。
「おせっかい……スマートスピーカーのことですか?」
「……ううん、なんでもないよう」
プルルルルル
その時、大森のスマホが着信音を鳴らした。
「電話、なってますよう」
「オーナーからか? 晴海先輩が出るとたぶん気分を悪くしそうですから、俺がでますね」
大森はスマホを手に取り、タッチすると耳に押し当てた。
「もしもし」
『ああ、大森さまでいらっしゃいますか?』
「はい、そうですけど」
『いかがでしょうか? 当ホテルのスイートルームは』
その声に大森は頬を緩めた。まるでその言葉を待っていたかのように。
「もう大満足ですよ! 特にあのスマートスピーカー! プールで使ったんですけど、あの逆流モードが……」
『……は?』
オーナーの困惑するような一文字に、大森は眉をひそめる。
「えっと……ほら、ここのホテルの売りである、全ての部屋に搭載しているスマートスピーカーのことですよ。ボタンを押してしゃべるやつ……」
「……? あ、ああ……そのことなんですが……でもおかしいな……」
「?」
「言い忘れていたのですが、まだスマートスピーカーは搭載されていないんですよ。従業員の失踪が起きたのが、テスト段階だったので……第一元から、ボタンをつける予定はなかったんですが」
「……」
大森は黙っていたが、そんなはずはないと表情に書かれている。
自分は確かに、あのスピーカーとボタンを見かけた。そしてボタンを押し、話しかけ、実際に声が聞こえてきたのだ。
怒りという感情ではなく、ただただ不思議がる表情が、そう語っているようだった。
「大森さん、まだ後ろを振り向かないでねえ……まずは例のゴーグルを装着してえ……」
横から話しかける晴海の言葉に、大森は何かに察したように目を見開いた。
そのまま振り返らずに、胸ポケットからゴーグルようなものを取り出し、かけた。
『本来ならばファミレスで伝えるべきでしたが、内容を忘れていまして……大森さん? 聞こえてますか?』
「あ……ああ、すみません、後でいいですか?」
大森は受話器を置き、テーブルからリュックサックを手に取った。
振り返った先には、2mほどの影が立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる