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化け物バックパッカーと変異体ハンター、それと化け物ぬいぐるみ店の店主に化け物運び屋、あと商人、それぞれ初詣に行く。【3】
しおりを挟む「晴海先輩、待ってくださいよ……」
岩場に足をかけて、太めの男性は息を切らしながら声をかける。
その男性の格好、男性はショートヘアーにキャップ、横に広がった体形に合う青いパーカーに装着されたハーネス、ジーパンにクライミングシューズ。その背中には大きなリュックサックが背負われていた。
その体格は、ある意味素晴らしい。
「大森さん、弱音吐いていると落ちるよう」
その上で岩場の出っ張りに手をかけるこの女性、この状況に似合わないロングヘアーに、赤色のデニムジャケットに装着したハーネス、ロングパンツにクライミングシューズ。
そのスタイルは、まさに素晴らしい。
「でもこんなことをする必要、あるんですかね」
「大森さん、言っていたよねえ。どうせだったら普通じゃない初詣に行きたいってえ」
「確かに言いましたよ。だけど、まさか正月早々、ロッククライミングをやらされるとは思いませんよ!?」
ふたりは、岩の壁を上っていた。
その後ろは、海だ。
「去年、ロッククライミングをやっていなかったのが心残りだって騒いでいましたよねえ。よかったじゃないですかあ」
晴海と呼ばれた女性は、余裕そうな表情で腕を伸ばす。
「いきなりすぎて心の準備ができていませんよ! それに、晴海先輩は確か初めてですよね!? ガイドなしで余裕そうにしか見えませんが!?」
「うん。思ったよりも簡単だよねえ。室内でやるポルダリングってやつ、あっちはあまりにも簡単すぎてやり応えがなかったから、こっちの方が多少は楽しめるけどお……おっと」
その腕は、頂上の崖をつかんでいた。晴美は全身の体を使って、上りあがった。
「それにしても、普通に通れる坂道があるのに、どうしてこんな険しい道を残しているんですかね?」
あとから登ってきた、大森と呼ばれていた男性は地面に尻をつけ、崖の反対側に見える坂道を見る。
「こっちで登りたい人がいるから、残っているんだよお」
晴美は大森の背負っているリュックサックの中からペットボトルを取り出す。大森はその手をつかもうとして手を伸ばして、ひっこめた。
「あ、それ俺の……って思っていたんですけど、晴美先輩のやつを俺が預かっていたんでした」
「口はまだ付けてないから、別に大森さんが飲んだっていいけどお」
「いえ、俺は自分のを飲みますよ」
ふたりはペットボトルを手に取り、中に入っていた液体を口の中に入れる。
「……それじゃあ、そろそろ初詣にしますかねえ」
ペットボトルのふたを閉じて、晴海は立ち上がる。
「俺、全然願い事考えていないっすよ。考える暇なんてなかったんですからね」
「別に来るまでに考えていなくても、今考えればいいんですよう」
歩き出す晴海に、大森は「あ、そっか」と納得したようにつぶやいた。
崖の頂上に立つ神社の前で、晴海は海を見つめた。
「ここに神社を建てるのも、海を見ながら参拝したいって人がいるからだろうねえ」
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