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化け物バックパッカーと変異体ハンター、それと化け物ぬいぐるみ店の店主に化け物運び屋、あと商人、それぞれ初詣に行く。【6】
しおりを挟む山奥の神社の賽銭箱。
そこへ、銀色の小銭が1枚、シワだらけの指によって飛んできた。
小銭が落ちる音が聞こえてくると、
屋根から垂れているヒモを、黒い手がつかむ。
鈴の音が響き渡ると思うと、
パン パン
ふたつの手を合わせる音が重なった。
「……タビアゲハ、今年は何か願い事をしたのか?」
神社に向かって礼をした後、ひとりの老人……坂春は、隣に立っているタビアゲハにたずねる。
「ウウン。神様ニ聞イテモライタイ願イ事、ウマク見ツカラナカッタカラ。坂春サンハドンナ願イ事ヲシタノ?」
「それは個人秘密だ。まあ、何も願わなかったおまえなら、俺の顔を見て察しているだろうな」
後ろの石階段ではなく、横に向かい歩いて行く坂春の背中を見て、タビアゲハは口元に一差し指を当てて首をかしげる。
「ナンカ……ドコカデ同ジヨウナコトガアッタヨウナ……」
坂春は振り返り、手招きをした。
「タビアゲハ、早くこっちにこい」
「ア、ウン。スグニ行ク」
テーブルの上に設置された、“おみくじ”と書かれた小さな赤い自販機。
その前に立つ坂春の元に、タビアゲハが走ってきた。
「坂春サン、ソレッテ?」
赤い自販機を指さすタビアゲハに、坂春は財布を取り出し始める。
「おみくじだ。占いみたいなものでな、その日が……今日の場合はその年の運勢がどんなものなのか、書かれているんだ」
「ウンセイッテ……運ガイイノカ悪イノカッテコトデショ? 何ガ書イテアッタラ運ガイイノ?」
「大吉が1番だ。それにつづいて吉・中吉・小吉、1番最悪なのが凶だ。まあ、たとえ凶が出たとしても、不幸な年だと決まるわけじゃあないがな」
坂春は100円硬貨を自販機の投入口に入れた。
取り出し口に、折りたたまれた紙が落ちた。
別の神社のおみくじの自販機では、学生服の少年がおみくじの紙を開封していた。
「――おっしゃあ大吉ぃぃぃっ!! やっぱり初詣といったらおみくじだよな!」
「チョット静カニ喜ビナサイヨ! 凶ヲ引イタ人ガ聞イタラドウスルノ!?」
崖に立つ神社で、大森と晴海は黙っておみくじの内容を読んでいた。
「……晴海先輩、どうでした?」
「凶だったよお。その様子じゃあ、大森さんも同じみたいだねえ」
「はあ……なんか今年最初のおみくじが凶だったら、あまりいい1年には思えないですよね……」
「それを信じるなら、今頃あたしたちは崖を登り切れていないと思うんだけどねえ」
墓地の近くにある神社で、我輩はおみくじを引いた。
「末吉……隠し事に注意……なんだか、1年というより1日の運勢である」
教会の出口に設置された箱に、真理と兄は互いに手を入れた。
「教会でもおみくじはするのね」
「ああ、ただ、大吉とか凶とかは書いていないんだね」
「代わりに書かれたこの祈りの言葉が、大吉ってとこかしら」
山奥の神社で、坂春とタビアゲハは互いに顔を合わせていた。
「……ナニモ、書イテイナイネ」
「ああ、白いな。印刷ミスか、何かのイタズラか……」
「デモ、ナンダカイイコトアリソウ。大吉ヨリモ、イイコトガ」
「ああ、白紙のおみくじなんて、めったに引くことなんてないからな」
ゆっくりと星を周り、各地の彼らを見守ってきた太陽。
太陽にとってはいつも通りに星を回っているだけなのに、
1年最初だというだけで人々は盛り上がる。
太陽でなくてもいいのに、人々は盛り上がる。
もしも太陽に心があるのなら、
勝手に盛り上がる人々に嫌気が差しているのだろうか。
それとも、そんな人々に愛着が湧いているだろうか。
人々の手に渡ったおみくじたちが、そんなことを考えた……かもしれない。
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