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14狼族
しおりを挟むその頃の団長。
「シュッツといたあの犬が魔物?」
執務室にて、部下より報告を受けていた。
ウルフは魔物であり、間もなく王より処分が下るとのことだった。
(なぜバレたんだ?その事実は俺しか知らないはずだが……うーん……にしても、なにか引っかかるんだよな)
魔物の処分などよくある事で、普段ならば気にもとめないのだが、団長はウルフがどうしても魔物だとは思えず調べることにした。
そこで、王宮内にある、たくさんの書物が格納されている場所へと足を運んだ。
「おやおや、なぜ騎士団の団長様がこのような場所へ?」
「急に申し訳ありません。至急、調べ物がありまして」
書物室へと向かうと、そこには老人と青年がいた。
「自ら赴くとは珍しいですな?調べ物など、普通は部下に任せるようなものですが……貴方様のように偉い方が来られるのは何十年ぶりやら」
「私用でして。しかし……この書物の量は凄いですね……ハハ……」
部屋には本棚が設置されているのだが、そこには収まらず天井近くまで積まれた書物がたくさんあった。
それをみて団長は、自分が調べたいものを見つけるには何年かかるのかと意気消沈した。
「安心してくだされ。ズークン、手伝って差し上げなさい」
「はい。団長様、どうぞこちらへ」
老人と一緒にいた青年はズークンという名前らしい。
眼鏡をかけ、鋭い目つきで、いかにも本の虫といった真面目そうな青年だった。
本にしか興味がなさそうなところや、他を寄せつけない雰囲気が、シュッツに似ているかもしれないと団長は苦笑いを浮かべた。
団長がズークンに着いていくと、書物室の一角に部屋があり、そこへと案内された。
そこは、テーブルと椅子が置いてあるだけの質素な部屋だった。
「どうぞ、かけてください。今回はどのようなものをお探しですか?」
「うーん、なんて言えばいいのか。とりあえず狼について知りたいんだが……」
「狼、ですか?」
それを聞くと、ズークンは数ある中から狼について書かれている書物を何冊も準備した。
「まずはこの中から、団長様が欲しい情報があるかどうか探してみましょう」
「すごいな……こんな大量にある中からこんなに早く見つけてくるなんて……」
「いえ、お役に立てて光栄です。全て把握しておりますので、何でも聞いてください」
ペラペラと持ってきてもらった書物を見るが、ほとんどが動物の狼についてかかれていた。自分が『狼』について指定したのだから当然なのだが。
これではないと思いながらも一つ一つ確認していく。
「うーん、なんと言えばいいのだろうか」
団長自身も何をどう調べたらいいのか分からず、頭をかかえた。
「目的のものはなかったですか?」
「そうだな……狼が絶滅に至った経緯や絶滅前の人間との関わり……昔話でも伝説でもいいんだが。すまない、うまく頭でまとまらないんだ」
「なるほど。少々お待ちを」
その後もズークンに手伝ってもらいながら、団長は出来る限りの情報を集めた。
そんな中、ふと目に止まったものがあった。
「これは……『狼族』?魔族とは違うのか?」
「狼族と魔族は全くの別物ですよ。似て非なるものです。そして狼族はもう存在しません。動物の狼同様、絶滅したはずです。狼族は人型になれる狼で、昔は私たち人間とともに暮らしていました。人間では敵わない魔物を退治してくれて、人間から称えられていたんです。地方によっては神の使いとして祀られていますよ」
「そうなのか!?ありがとうズークン!」
団長はズークンの手をとりお礼を言った。
あまりの団長の勢いにズークンは驚いた様子だ。しかし、探し物が見つかり安堵し微笑んだ。
(ウルフは狼族だったんだ!魔力を感じられなかったのも説明がつく……が、絶滅してるんだよな?アイツは化石かなんかなのか?)
「ズークン、狼族はいつ頃まで存在していたんだ?」
「私の祖父が狼族と交流があったと話していたことがあったので、比較的最近まで存在していたと思います。」
(比較的最近?なのになんで俺は狼族を認識していなかったんだ?うーむ俺の勉強不足か……)
「そう言えば、団長様は覚えていますか?昔、子どもが魔物を飼っていたって話です」
「あー……(シュッツのことだな。)確か、(シュッツは狼と言っていたが一般的には)犬の魔物だったか?」
「はい。しかし、一部では犬ではなく狼族の狼だったのでは?との噂があるんですよ」
「そうなのか?でも、どちらにせよその時の狼は駆除されたんじゃないのか?」
「実は、その時の団長が独自の判断で逃がしたと言う人もいて……」
(それが本当であればその狼がウルフという可能性が高いか?だからシュッツにあんなに懐いているのか?)
「その時の団長は確か……」
「ジェイド様です。あの方が任務を遂行しなかったなんて有り得ないことだったらしく、当時は話題になっていたようですよ」
「……うん。話を聞いてみるか。ありがとうズークン、本当に助かったよ。こんなに大量に本があるのにキレイに管理されてるし、本当に本が好きなんだな」
「い、いえ……たいしたことでは……」
褒められたことがないのか、ズークンは顔を赤らめ恥ずかしそうに微笑んだ。
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