私が幽霊になった理由

Hiiho

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わたしが幽霊になった日

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 ・・・・・・・・・・・・
 
 ・・・・・・・・・あれ?

 ・・・もしかして、生きてる?

 私はうっすら目を開けた。

 目の前は薄暗く、間近に壁の様な物がある。仰向けに寝ているらしく、顔のまわりは何かで囲まれているみたい。

 ・・・この香り、百合?どうやら花で囲まれているらしい。

 なんだか近くで 、男性が歌っているような声が聞こえる。

 これ、なんの壁なんだろう?

 目の前の壁に触ろうとした瞬間、あるはずの壁の感触がない。

 え?すり抜けてる!?

 壁に埋もれた様に見える自分の手を咄嗟に引っ込める。もう一度壁に触ろうとするが、やっぱりあるはずの感触は無く、壁の中に手が埋もれていく。

 どうして・・・

 私は重い体を起こし、壁に頭を押し付けてみた。

 やっぱり当たらない・・・え?

 急に視界が明るくなって、周りを見渡すと、なんだか見覚えのある場所。

 ここって・・・間違いない。祖父や祖母のお葬式で訪れた事がある、火葬場だ!

 さっき聞こえていた歌はお経だったんだ。

 あれ・・・翔平?そらと花、海斗もいる。なんで?着てるのは喪服・・・だよね?

 家族の周りには、私の両親と、弟夫婦、義理の両親と義姉夫婦と甥っ子、まだ独身の義妹が居て、みんな喪服を着ている。

 母は泣き崩れて、それを父が支えている。

 花が大声で泣いていて、それをそらが宥めてる。海斗は翔平に手を繋がれていて、不安そうに皆の顔をキョロキョロ見ていた。

 翔平は・・・私を見てる?

「それでは最期のお別れでございます」

 進行役らしき女性の声に従って、私が入っていた箱?が動き出し、焼却炉へと入っていった。

「しおりぃぃぃ」
「ママぁ、やだぁ」

 母と花が泣きながら私を呼んでいる。
 はい、と答えたいのに声が出ない。
 泣き叫ぶ花のそばに駆け寄って抱きしめようとしても、腕が花の体をすり抜けて、抱きしめる事ができない。

 このお葬式って、もしかして私の!?

 途端に冷静になって来た。自分の体を見ると、服は着ている。白いTシャツの上に、黒のパーカーを羽織っていて、細身のスウェットパンツに、スニーカー・・・
 事故の朝に着ていた服だ。

 やっぱり、私、死んじゃったの?
 という事は、今ここにいる私は、幽霊って事!?

 幽霊・・・ほんとにいたんだ・・・
 てゆーか、自分がなってんじゃん!

 そんな事を考えていると、家族たちがぞろぞろと外へ出ていく。

 あ、待って、私も行く。

 最期に部屋を出る翔平の後に続いた。

 別室に入ったみんなが、用意されていたお弁当を食べ始め、みんなそれぞれに私の話をしているみたい。

「明るい子だった」
「ちょっと抜けてたわよね」
「元気な嫁だったのに」
「うるさいやつだったよな」

 所々、悪口が入っているようにも思えるんですけど・・・まさか本人が聞いてるとは思ってないんだろうな。

 子供たちの傍まで行くと、海斗だけお弁当を食べているけど、そらと花は俯いたまま、お弁当には手をつけていない。

 育ち盛りなんだから、ちゃんと食べなきゃダメじゃない

 二人に声をかけるけど、反応がない。

 やっぱり、聞こえないか・・・

 「育ち盛りなんだから、ちゃんとお弁当食べろよ、ママがいたら、叱られるぞ」

 そらと花に、ちゃんとお弁当を食べるように促す翔平。

 そういうパパだって食べてないじゃん

 聞こえるわけないけど、私は翔平に言った。

「はぁ・・・」

 大きな溜息をついて、お弁当を食べ始める翔平。

 ごめん、死んじゃって。
 ごめん、迷惑かけて。
 ごめん、おじいちゃんおばあちゃんになるまで一緒にいるって約束、果たせなくて・・・

 「もういい」

 え?

 お弁当の蓋を閉じて、席を立つ翔平。

 私の言葉に答えたのかと思った・・・お弁当がもういらないって事ね。
 
 私はここにいるのに誰も気付かない・・・ほんとに幽霊なんだな、私・・・

 死んだら幽霊になっちゃうんだ・・・あのおじいさんはどうなってしまったんだろう。私と一緒に死んじゃったのかな?それとも奇跡的に生きてる?

 幽霊になってるなら、またどこかで会えるかもしれない。もし会えたら、謝りたい。私にもっと力があれば、助けてあげられたかもしれない。

 ごめんね、おじいさん。

 これからどうなっちゃうんだろ・・・家には帰れるのかな?

 不安だらけの幽霊生活が始まろうとしていた。




 



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