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災い転じて 2
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女を抱けない体か。別にそうしてもらわなくても自分をゲイだと自覚してしまったし、もう二度と女じゃ勃たない自信もあるんだけど。
自分のマイノリティを否定したくて過去に関係を持った女性のひとりがまさか結城さんと付き合っていたなんて知らなかった。
道理で俺に対する敵意がダダ漏れだったワケだ。
結城さんの手がボトムスの履き口に掛かる。
これは・・・俺を犯そうとしてるってことだよな?
彼を好きな俺にとっては絶好のチャンスではある。
「中尾だけじゃなくお前も辞めさせてやろうかと思ったけど、たかがバイトのお前にダンスの高校生クラス任せるなんてオーナーが言うもんだからさぁ。俺だけ反対すんのもおかしいだろ?器ちっせえ男みたいで」
引き摺り下ろされたボトムスが片脚に残り、ベンチの上で股を大きく開かれる。
「顔は良くてもやっぱり男だよなぁ」
俺の股間を見て、結城さんは舌打ちをする。
「オラ、抵抗のひとつでもしてみせろよ女みたいに。勃たねぇだろーが」
抵抗・・・ ああそっか。この状況があまりにも現実味を帯びなくて、幾度となく妄想してきた事だからうっかりしてた。
普通の男だったら嫌がって然りのシチュエーションなんだから抵抗しねーと・・・
「ゆ・・・きさ・・・ やめ・・・」
どうしてだ。声が、上手く出せない。
頭が割れるように痛くて寒い。体が震えて動かない。
結城さんとのセックスを、今まで何度も想像してきた。望んでいた。どんなに酷くされてもいいと思っていた。
なのに今、こうされていることが不快で堪らなくて、アルコールが抜け切っていない体を思うように動かせない。
「怖くて声も出ねぇの? はっ、カワイイとこあんだな塩田にも」
怖い? そんなはずは・・・
普通の男が男の股間を見て勃起するはずも無く、結城さんは自分のモノを手で擦りコンドームを被せる。
期待なのか緊張なのかそれとも恐怖なのか、逆に無感情なのかもしれない自分がただ動けずにその行為を見ているだけ。
腰を掴まれて引き摺り寄せられ、俺の脚を抱えた結城さんの屹立が後ろに密着する。
濡れても慣らしてもいないそこへ強引に入ろうとする塊に、痛みで冷や汗が出る。
「う・・・ぐ・・・っ」
「力抜けよ。入んねーだろ」
片手で口を塞がれて、苦しくて腹に力を入れた瞬間に狭い入口を押し広げる異物感。
「ん゙──ッ・・・ん゙・・・」
ただただ痛い。コンドームが纏っっている少量のゼリーだけじゃ何の気休めにもならない。
抵抗はしない。俺はこれを望んでいたんだから。
けれど、自分が望んでいた現実はこんなものか、と硬いベンチの端を強く掴んだまま絶望した。
数回の抽挿を繰り返し、思ったより短時間で達した結城さんが自分の中から出て行く。
「クソ、キツすぎてこっちが持たねえっつーの。痛てぇ」
コンドームを抜き取り口を縛って、グシャグシャにティッシュで丸めてゴミ箱へ捨てる結城さん。
何の余韻も無い。達成感や嬉しさも無い。あるのは腹の底と尻に残った痛みだけだ。確かにこの人を好きだったはずなのに、犯された事実があるはずなのに・・・どうでもいいと思うほど俺は別のことを考えていた。
奏汰の顔が見たい。あのとぼけたアホ面を見て安心したい。
どうして、いつの間にこんなにも奏汰に惹かれてたんだ。気付くのが遅かった、気付きたくなかった。
奏汰を好きになれば、大切な人たちを不幸にするだけなのに。
二次会へは参加できそうにもなくて、そのまま帰ることにした。別れ際、結城さんは「男の嫉妬は醜いよな。ごめん」と言った。俺は「大丈夫です、俺こそすいません。お世話になりました」と返した。どちらも本心だったように思う。
早く家に帰りたくて奏汰が来てるかもしれないと思うと走ってでも向かいたかったけれど、一歩踏み出すごとに感じる重い痛みと、奏汰への気持ちに歯止めをかける理性が足取りを重くした。
帰宅してみれば予想に反して誰もいなくて、自分のベッドを眺め、よくこんなちっせぇとこにいつも男二人で寝れてるよな、と可笑しくなった。
冷静でいたかった。奏汰がいなくてよかったと思いたかった。無意識に込み上げる涙を流したくなかった。
なのに
「わっ!! 蓮くんおかえり~。送別会終わるの早かったね」
部屋の入口に背を向けて立つ俺の前方に回り込んで「びっくりした?」と緊張感の無い緩んだ顔で問いかけてくる奏汰。
どうして来るんだよ。当然のように毎回合鍵使いやがって・・・いつ返してくれるんだよ。
根暗のくせに変態のくせに、俺のことが好きだってウザイくせに。
なんで俺はこんなに好きになってんだよ。
「・・・俺、好きな人とセックスした」
「え、ええ!?」
「だから開発はマジでもういらねぇから」
「え、ちょちょおっ、蓮くん、ほほほほんとなの、そのせっせ、せっくすしししたの!?」
俯いているから表情はわからないけど、あたふたと動く奏汰の足が視界にあって、まるでコメディ映画の主人公のようなステップに吹き出してしまいそうになる。
動揺しすぎだろ。やめろよ笑わせんの。
「開発、いらないの? もう・・・」
「もともと結城さんとスムーズにヤレるようにって奏汰に頼んだんだから、もう終わりだろ。お前がここ何日か続けてケツ弄ってくれてたおかげでちゃんとチンコ入ったわ。ありがとな」
痛いけど多分切れたりとかはしてなさそうだし。
あ、でも処女より悪い反応しかできなかったし勃起すらできなかったな。
まあ二度とヤることも無いだろうし、結城さんが俺に突っ込んだのも ただの怨恨絡みなだけだし。
「つっ、付き合ったり、するの・・・?」
「するわけねーだろ。向こうは女大好きのどノーマルだぞ」
「じゃあなんでセックスできたの!? 嘘なんだろ!? また僕を遠ざけようとしてるだけじゃないの!?」
そうできたら良かったのかもしれない。
「ヤッたのはマジ。俺から誘った。バイト辞めてもう会えなくなるから最後に一回だけって縋ったんだよ」
「嘘だ嘘だ! どノーマルなのにそんな簡単に男とセックスできるわけないじゃないか! ・・・でも僕もオチたくらいだし、蓮くんやたら綺麗に見える時あるし普通の男でもちょっとした拍子にコロッと、って事も十分ありえるかも。優しいって言ってたし、そいつやっぱり蓮くんに最初から下心が・・・」
縋ったってのは嘘だけど、きっと結城さんも根っからの悪じゃない。元を正せば結城さんの彼女に手を出したのは俺で、誘ってきたのは彼女とはいえ自分の性癖を否定する為に利用したのも確かだし。
それに俺は彼とセックスしたかったのも事実。ああなったのはむしろ本望だった。
「蓮くんが・・・他の男と・・・うう~・・・」
奏汰まさか、泣いてるとか言わないよな?
どうすんだ俺、こんなに奏汰を傷付けて。開発係どころかもう顔も見たくないって言われるかもしれない。
焦りが、気付いてしまった奏汰への想いを加速させる。
「開発係はもう終わり。俺は・・・奏汰が」
懐いてきて可愛いと思ったし、向けられる好意に嫌悪感どころか本音は嬉しいと思った。
でも音々とおばちゃんに申し訳なくて、お前の気持ちに応えちゃいけないって思った。
体を拓かれて好きになったなんて軽率で単純過ぎて笑えない。
俺はお前と違って慎重派なんだ。色々考えあぐねて、周りの顔色伺って臆病なんだ。
でも、ごちゃごちゃ考えんのはもうやめた。
「開発、じゃなくて奏汰とセックスしたい。他の男とヤッた俺じゃもう嫌かもしんないけど」
奏汰が好きだから、当たって砕けてもいい。
何もしないでお前が離れて行くのは嫌だ。
「どの口が言ってるの・・・?」
顔を両手で挟まれて上を向かされ、恐る恐る目を開けると半泣きの奏汰が俺を睨む。
だよな。あんなに好きだって言ってくれてたのにスルーしてそれでも開発係やらせて、あげく他の男とセックスしてきたのに言えた事じゃないよな。
「ねえ! この口が言ったの!? 僕と、って!? 本気で!?」
「ごめ・・・」
「何なの蓮くん、いい加減にしろよ! 僕が今どんな気持ちかわかる!?」
怒ってる、俺のこと最低だって思ってる。わかってんだよそんなの。でも言わずにはいられなかったから。
「ごめんんんんぅ・・・?」
突然唇を柔らかい感触で塞がれて、俺は目を見開く。
短いリップ音を立てて、何度も繰り返しくっついては離れる奏汰の顔。
え、なに、何してんのこいつ。
「もう一回言ってよ! この可愛いくちで! 蓮くん下向いてて見えなかったから言った瞬間見れなかったから悔し過ぎる。ねえ早く言って!」
「は・・・・・・・・・?」
どんな気持ちか、ってなに、そういう事・・・?
俺に呆れたとか軽蔑してるとかじゃなくて?
自分のマイノリティを否定したくて過去に関係を持った女性のひとりがまさか結城さんと付き合っていたなんて知らなかった。
道理で俺に対する敵意がダダ漏れだったワケだ。
結城さんの手がボトムスの履き口に掛かる。
これは・・・俺を犯そうとしてるってことだよな?
彼を好きな俺にとっては絶好のチャンスではある。
「中尾だけじゃなくお前も辞めさせてやろうかと思ったけど、たかがバイトのお前にダンスの高校生クラス任せるなんてオーナーが言うもんだからさぁ。俺だけ反対すんのもおかしいだろ?器ちっせえ男みたいで」
引き摺り下ろされたボトムスが片脚に残り、ベンチの上で股を大きく開かれる。
「顔は良くてもやっぱり男だよなぁ」
俺の股間を見て、結城さんは舌打ちをする。
「オラ、抵抗のひとつでもしてみせろよ女みたいに。勃たねぇだろーが」
抵抗・・・ ああそっか。この状況があまりにも現実味を帯びなくて、幾度となく妄想してきた事だからうっかりしてた。
普通の男だったら嫌がって然りのシチュエーションなんだから抵抗しねーと・・・
「ゆ・・・きさ・・・ やめ・・・」
どうしてだ。声が、上手く出せない。
頭が割れるように痛くて寒い。体が震えて動かない。
結城さんとのセックスを、今まで何度も想像してきた。望んでいた。どんなに酷くされてもいいと思っていた。
なのに今、こうされていることが不快で堪らなくて、アルコールが抜け切っていない体を思うように動かせない。
「怖くて声も出ねぇの? はっ、カワイイとこあんだな塩田にも」
怖い? そんなはずは・・・
普通の男が男の股間を見て勃起するはずも無く、結城さんは自分のモノを手で擦りコンドームを被せる。
期待なのか緊張なのかそれとも恐怖なのか、逆に無感情なのかもしれない自分がただ動けずにその行為を見ているだけ。
腰を掴まれて引き摺り寄せられ、俺の脚を抱えた結城さんの屹立が後ろに密着する。
濡れても慣らしてもいないそこへ強引に入ろうとする塊に、痛みで冷や汗が出る。
「う・・・ぐ・・・っ」
「力抜けよ。入んねーだろ」
片手で口を塞がれて、苦しくて腹に力を入れた瞬間に狭い入口を押し広げる異物感。
「ん゙──ッ・・・ん゙・・・」
ただただ痛い。コンドームが纏っっている少量のゼリーだけじゃ何の気休めにもならない。
抵抗はしない。俺はこれを望んでいたんだから。
けれど、自分が望んでいた現実はこんなものか、と硬いベンチの端を強く掴んだまま絶望した。
数回の抽挿を繰り返し、思ったより短時間で達した結城さんが自分の中から出て行く。
「クソ、キツすぎてこっちが持たねえっつーの。痛てぇ」
コンドームを抜き取り口を縛って、グシャグシャにティッシュで丸めてゴミ箱へ捨てる結城さん。
何の余韻も無い。達成感や嬉しさも無い。あるのは腹の底と尻に残った痛みだけだ。確かにこの人を好きだったはずなのに、犯された事実があるはずなのに・・・どうでもいいと思うほど俺は別のことを考えていた。
奏汰の顔が見たい。あのとぼけたアホ面を見て安心したい。
どうして、いつの間にこんなにも奏汰に惹かれてたんだ。気付くのが遅かった、気付きたくなかった。
奏汰を好きになれば、大切な人たちを不幸にするだけなのに。
二次会へは参加できそうにもなくて、そのまま帰ることにした。別れ際、結城さんは「男の嫉妬は醜いよな。ごめん」と言った。俺は「大丈夫です、俺こそすいません。お世話になりました」と返した。どちらも本心だったように思う。
早く家に帰りたくて奏汰が来てるかもしれないと思うと走ってでも向かいたかったけれど、一歩踏み出すごとに感じる重い痛みと、奏汰への気持ちに歯止めをかける理性が足取りを重くした。
帰宅してみれば予想に反して誰もいなくて、自分のベッドを眺め、よくこんなちっせぇとこにいつも男二人で寝れてるよな、と可笑しくなった。
冷静でいたかった。奏汰がいなくてよかったと思いたかった。無意識に込み上げる涙を流したくなかった。
なのに
「わっ!! 蓮くんおかえり~。送別会終わるの早かったね」
部屋の入口に背を向けて立つ俺の前方に回り込んで「びっくりした?」と緊張感の無い緩んだ顔で問いかけてくる奏汰。
どうして来るんだよ。当然のように毎回合鍵使いやがって・・・いつ返してくれるんだよ。
根暗のくせに変態のくせに、俺のことが好きだってウザイくせに。
なんで俺はこんなに好きになってんだよ。
「・・・俺、好きな人とセックスした」
「え、ええ!?」
「だから開発はマジでもういらねぇから」
「え、ちょちょおっ、蓮くん、ほほほほんとなの、そのせっせ、せっくすしししたの!?」
俯いているから表情はわからないけど、あたふたと動く奏汰の足が視界にあって、まるでコメディ映画の主人公のようなステップに吹き出してしまいそうになる。
動揺しすぎだろ。やめろよ笑わせんの。
「開発、いらないの? もう・・・」
「もともと結城さんとスムーズにヤレるようにって奏汰に頼んだんだから、もう終わりだろ。お前がここ何日か続けてケツ弄ってくれてたおかげでちゃんとチンコ入ったわ。ありがとな」
痛いけど多分切れたりとかはしてなさそうだし。
あ、でも処女より悪い反応しかできなかったし勃起すらできなかったな。
まあ二度とヤることも無いだろうし、結城さんが俺に突っ込んだのも ただの怨恨絡みなだけだし。
「つっ、付き合ったり、するの・・・?」
「するわけねーだろ。向こうは女大好きのどノーマルだぞ」
「じゃあなんでセックスできたの!? 嘘なんだろ!? また僕を遠ざけようとしてるだけじゃないの!?」
そうできたら良かったのかもしれない。
「ヤッたのはマジ。俺から誘った。バイト辞めてもう会えなくなるから最後に一回だけって縋ったんだよ」
「嘘だ嘘だ! どノーマルなのにそんな簡単に男とセックスできるわけないじゃないか! ・・・でも僕もオチたくらいだし、蓮くんやたら綺麗に見える時あるし普通の男でもちょっとした拍子にコロッと、って事も十分ありえるかも。優しいって言ってたし、そいつやっぱり蓮くんに最初から下心が・・・」
縋ったってのは嘘だけど、きっと結城さんも根っからの悪じゃない。元を正せば結城さんの彼女に手を出したのは俺で、誘ってきたのは彼女とはいえ自分の性癖を否定する為に利用したのも確かだし。
それに俺は彼とセックスしたかったのも事実。ああなったのはむしろ本望だった。
「蓮くんが・・・他の男と・・・うう~・・・」
奏汰まさか、泣いてるとか言わないよな?
どうすんだ俺、こんなに奏汰を傷付けて。開発係どころかもう顔も見たくないって言われるかもしれない。
焦りが、気付いてしまった奏汰への想いを加速させる。
「開発係はもう終わり。俺は・・・奏汰が」
懐いてきて可愛いと思ったし、向けられる好意に嫌悪感どころか本音は嬉しいと思った。
でも音々とおばちゃんに申し訳なくて、お前の気持ちに応えちゃいけないって思った。
体を拓かれて好きになったなんて軽率で単純過ぎて笑えない。
俺はお前と違って慎重派なんだ。色々考えあぐねて、周りの顔色伺って臆病なんだ。
でも、ごちゃごちゃ考えんのはもうやめた。
「開発、じゃなくて奏汰とセックスしたい。他の男とヤッた俺じゃもう嫌かもしんないけど」
奏汰が好きだから、当たって砕けてもいい。
何もしないでお前が離れて行くのは嫌だ。
「どの口が言ってるの・・・?」
顔を両手で挟まれて上を向かされ、恐る恐る目を開けると半泣きの奏汰が俺を睨む。
だよな。あんなに好きだって言ってくれてたのにスルーしてそれでも開発係やらせて、あげく他の男とセックスしてきたのに言えた事じゃないよな。
「ねえ! この口が言ったの!? 僕と、って!? 本気で!?」
「ごめ・・・」
「何なの蓮くん、いい加減にしろよ! 僕が今どんな気持ちかわかる!?」
怒ってる、俺のこと最低だって思ってる。わかってんだよそんなの。でも言わずにはいられなかったから。
「ごめんんんんぅ・・・?」
突然唇を柔らかい感触で塞がれて、俺は目を見開く。
短いリップ音を立てて、何度も繰り返しくっついては離れる奏汰の顔。
え、なに、何してんのこいつ。
「もう一回言ってよ! この可愛いくちで! 蓮くん下向いてて見えなかったから言った瞬間見れなかったから悔し過ぎる。ねえ早く言って!」
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